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iDeCoの運用指図者とは?現役世代が知っておくべきこと

「転職した時に、運用指図者になったらどうなるの?」
iDeCo(個人型確定拠出年金)で老後資金を準備する際、「加入者」と「運用指図者」という、似ているようで異なる二つの言葉があります。この違いを正しく理解していないと、転職や退職時に思わぬ不利益を被る可能性があります。特に、掛金拠出が止まる運用指図者という立場になると、iDeCoの最大のメリットを享受できなくなるため注意が必要です。
この記事では、「運用指図者」と「加入者」の違いを明確に解説します。そして、運用指図者になった場合の運用方法や、転職・退職時における運用指図者への移行について、現役世代が知っておくべきことを網羅的にご紹介します。
iDeCoにおける「運用指図者」と「加入者」の違い

iDeCoの加入者は、主に2つの立場に分かれます。
・加入者: iDeCoの口座を開設し、毎月掛金を拠出している人。
・運用指図者: iDeCoの口座に資産があるものの、掛金を拠出していない人。
それぞれの立場は、iDeCoの資産形成に大きく影響します。
加入者のメリット(掛金の所得控除)
iDeCoの「加入者」は、毎月掛金を拠出しているため、その掛金が全額所得控除になります。これにより、所得税と住民税が軽減されるという、iDeCo最大の税制メリットを享受できます。
運用指図者のデメリット(掛金控除の停止)
一方、「運用指図者」は、掛金を拠出しないため、この所得控除のメリットは受けられません。
運用指図者になった場合の運用方法と注意点

運用指図者になっても、iDeCoの資産がなくなるわけではありません。運用は継続されます。
運用指図者になった場合の運用方法
・運用は継続: 運用指図者になっても、それまでに積み立てた資産は、iDeCo口座内であなたが選択した運用商品で運用され続けます。運用益は引き続き非課税です。
・運用商品の変更(スイッチング):
加入者と同様に、運用指図者も運用商品の変更(スイッチング)が可能です。市場の変動や、ご自身のリスク許容度の変化に合わせて、運用商品を入れ替えることができます。
・掛金の再開:
運用指図者になった後でも、掛金の拠出を再開することが可能です。手続きは、運営管理機関(金融機関)に所定の書類を提出することで行えます。
運用指図者になった場合の注意点
・掛金控除のメリットなし: 運用指図者である期間は、掛金を拠出しないため、所得控除による節税メリットは得られません。
・手数料負担: 掛金を拠出していなくても、口座管理手数料(月額171円〜、金融機関によって異なる)は継続して発生します。資産が増えないのに手数料だけが引かれるため、資産が目減りするリスクがあります。
・自動移換リスク:
企業型DCの加入者資格を喪失した後、6ヶ月以内に移換手続きを行わずに運用指図者になると、「自動移換」という状態になり、資産が現金化されて運用が停止し、手数料負担が増えるというリスクがあります。
転職・退職時における運用指図者への移行

転職や退職は、iDeCoの加入者区分が変わり、運用指図者となるきっかけとなることが多々あります。
転職先の制度による移行
・転職先に企業型DCがない場合:
会社員(第2号被保険者)から、転職先に企業年金がない会社員になる場合、iDeCoに引き続き加入できますが、手続きが必要です。
・転職先に企業型DCがある場合:
転職先の企業型DCに加入する場合は、iDeCoの資産を企業型DCに移換します。
退職後の働き方による移行
・会社員を辞めて自営業者になる場合:
自営業者(第1号被保険者)としてiDeCoに加入し、掛金を拠出し続けることができます。
・専業主婦(夫)になる場合:
第3号被保険者としてiDeCoに加入し、掛金を拠出し続けることができます。
・退職し、無職になる場合:
無職の方は、iDeCoの加入者資格を失う場合があります。その場合、運用指図者として運用を継続します。
【重要】
転職・退職の際には、ご自身の新しい状況に合わせて、iDeCoの「加入者資格変更届」などの書類を速やかに提出することが大切です。手続きを怠ると、自動移換のリスクにさらされる可能性があります。
まとめ:iDeCo運用は「加入者」として継続が基本
iDeCoで老後資金を効率的に準備するには、「加入者」として掛金の拠出を継続することが最も重要です。運用指図者は、やむを得ない事情で掛金拠出ができない場合の立場であり、所得控除のメリットがないため、できるだけ避けたい状態と言えます。
・加入者と運用指図者の違いを理解し、「掛金拠出」がiDeCoの最大の税制メリットであることを認識しましょう。
・転職・退職時には、速やかに手続きを行い、掛金拠出を続けることで、iDeCoの恩恵を最大限に享受できます。
iDeCoを賢く活用し、あなたの老後資金を確実に増やしていきましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。