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iDeCoとNISAの税制優遇は重複する?節税効果の最大化戦略

「iDeCoもNISAも税金がお得って聞くけど、同じ税金が二重に安くなるの?」
「それぞれの制度のメリットを最大限に活かすには、どう使い分ければいいの?」
iDeCo(個人型確定拠出年金)とNISA(少額投資非課税制度)は、どちらも老後資金をはじめとする資産形成に役立つ、国が用意した税制優遇制度です。非課税の恩恵が受けられる点で共通していますが、その税制優遇の仕組みや範囲は異なります。
この記事では、iDeCoとNISAの税制優遇が重複しないことを明確にした上で、それぞれの制度のメリットを組み合わせて節税効果を最大化する戦略を解説します。iDeCoの掛金控除とNISAの運用益非課税の賢い「二重取り」の考え方、そしてあなたの所得水準に応じた最適な配分まで、税金面から見た賢い資産形成術を提案します。
iDeCoとNISAの税制優遇は「重複しない」!それぞれの役割を理解する

まず結論から言うと、iDeCoとNISAの税制優遇は、同じ種類の税金に対して重複して適用されることはありません。 それぞれが異なる段階で、異なる種類の税金に対して優遇措置を提供しているため、お互いのメリットを補完し合う関係にあると理解しましょう。
それぞれの税制優遇の役割を再確認します。
iDeCoの税制優遇:3つの段階で広範囲に優遇
iDeCoは、老後資金準備に特化しているため、「掛金拠出時」「運用時」「受け取り時」の3段階すべてで税制優遇が受けられます。
1.掛金拠出時: 拠出した掛金が全額所得控除となり、所得税・住民税が軽減されます。これがiDeCo最大のメリットで、現役時代の手取りを直接増やす効果があります。
2.運用時: 運用中に得た利益(売却益、配当金、利息など)が非課税になります。
3.受け取り時: 老齢給付金を受け取る際にも、一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除が適用され、税負担が軽減されます。
iDeCoは「入口から出口まで」手厚い優遇が特徴です。
NISAの税制優遇:運用益が「非課税」に特化
NISAは、幅広い国民の資産形成を後押しするための制度で、「運用時」に非課税優遇が受けられます。
1.掛金拠出時: NISAの投資額は、所得控除の対象にはなりません。
2.運用時: 運用中に得た利益が非課税になります。これがNISAの最大のメリットです。新NISAでは非課税期間が無期限となり、非課税保有限度額1,800万円まで利用できます。
3.受け取り時: 非課税で得た運用益については、受け取り時に税金はかかりません(すでに非課税のため)。iDeCoのような受け取り時の税制優遇(所得控除や年金控除)はありません。
NISAは「運用益が非課税になること」に特化しており、資金を比較的柔軟に引き出せる点が特徴です。
掛金控除と運用益非課税の「二重取り」の考え方
iDeCoとNISAは異なる税制優遇を持つため、これらを併用することで、それぞれのメリットを「二重取り」し、節税効果を最大化することができます。
この「二重取り」とは、具体的に以下の組み合わせを指します。
1.iDeCoの「掛金所得控除」: これにより、現役時代の所得税・住民税が軽減されます。
・iDeCoの「運用益非課税」: iDeCo口座内で運用して得た利益に税金がかかりません。
・NISAの「運用益非課税」: NISA口座内で運用して得た利益に税金がかかりません。
つまり、iDeCoは「掛金による節税」と「運用益の非課税」の両方を、NISAは「運用益の非課税」を享受できます。この異なるタイプの節税メリットを組み合わせることで、現役時代の税金も減らしつつ、将来の運用益も非課税にするという、非常に効率的な資産形成が可能になるのです。
【シミュレーション例】
年収500万円の会社員(所得税率10%)が、
・iDeCoに月2万円(年間24万円)拠出 ⇒ 年間約4.8万円の節税(所得税2.4万円+住民税2.4万円)
・NISAにつみたて投資枠で月10万円(年間120万円)投資
・この場合、iDeCoの掛金で税金が安くなり、さらにiDeCoとNISA両方の運用益が非課税になるため、税制優遇が最大限に活かされています。
所得水準に応じた最適な配分戦略

iDeCoとNISAの併用は、あなたの所得水準によって最適な配分戦略が異なります。
所得税を支払っている方(会社員、公務員、自営業者など)
基本戦略: iDeCoの掛金を優先的に最大限活用することを検討しましょう。
・iDeCoの掛金控除は、年収が高く、所得税率が高い人ほど節税効果が大きくなります。まずはご自身のiDeCo掛金上限額(月0.5万円~6.8万円)まで拠出することを検討しましょう。
・iDeCoの掛金上限に達したら、次にNISAの年間投資枠(360万円)を最大限活用して、非課税での資産形成を進めます。
・理由: iDeCoの掛金控除は、運用成果にかかわらず「確実」な節税メリットがあるため、優先順位が高いと考えられます。
所得税を支払っていない方(専業主婦・夫など)
基本戦略: NISAを優先的に活用することを検討しましょう。
・専業主婦(夫)の方の場合、ご自身は所得税を支払っていないため、iDeCoの掛金控除のメリットを直接受けることはできません。
・この場合、NISAの「運用益非課税」メリットを最大限に活用し、増えた資産を柔軟に使えるNISAを優先するのが合理的です。
・もちろん、iDeCoも運用益非課税メリットはありますが、資金拘束があるため、NISAで柔軟な資産を確保しつつ、余裕があればiDeCoも検討する、といった配分が考えられます。
どちらのメリットも享受したい方(両方併用)
基本戦略: iDeCoの掛金上限まで拠出し、その上でNISAの年間投資枠を最大限活用するのが最も効率的です。
・iDeCoで現役時代の節税効果を享受しつつ、NISAで老後資金以外の柔軟な資金形成を行うことで、「攻守兼ね備えた」ポートフォリオを築けます。
・特に、2025年度税制改正で会社員のiDeCo掛金上限が月6.2万円に大幅に引き上げられる予定であり、NISAの年間360万円と併用することで、非課税で拠出・運用できる金額が大きく広がります。
まとめ:iDeCoとNISAの「非課税」を賢く組み合わせて最大効果を!
iDeCoとNISAの税制優遇は重複するものではなく、それぞれ異なる段階で、異なる種類の税金に対してメリットを提供しています。これらを理解し、賢く組み合わせることが、税制メリットを最大限に活かす戦略です。
- iDeCo: 掛金控除で現役時代の税金を確実に減らす。運用益も非課税。老後資金の「確実な確保」。
- NISA: 運用益が非課税。資金の柔軟性が高く、様々なライフイベントに対応。
あなたの所得水準やライフプランに合わせて、iDeCoの掛金控除とNISAの運用益非課税の「二重取り」を最大限に活かしましょう。この戦略的な組み合わせが、あなたの資産形成を力強く後押しし、豊かな未来へと導いてくれるはずです。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています