FP資格取得のためのポイント
FP資格講座:FPとして知るべき中退共の仕組みと退職金

ファイナンシャル・プランナー(FP)の学習において、退職金制度は顧客のライフプランニングに直結する重要なテーマです。特に、中小企業の退職金制度として広く利用されている「中小企業退職金共済制度(中退共)」は、その仕組みとメリットを理解しておく必要があります。
ここでは、FP試験でも問われる中退共のポイントを解説します。
中小企業退職金共済(中退共)とは?
中退共は、中小企業単独では退職金制度を設けることが難しい場合に、国が支援する公的な制度です。事業主が掛金を払い込むことで、従業員の退職後の生活を保障することを目的としています。
この制度では、事業主が独立行政法人勤労者退職金共済機構と退職金共済契約を結びます。毎月の掛金は事業主が金融機関に納付し、従業員が退職したときは、機構から退職金が直接支払われる仕組みとなっています。
中退共の主な特徴とメリット
事業主側のメリット
・国の支援:
中退共には国の助成金制度があり、初めて中退共に加入する事業主には、加入後4か月目から1年間、掛金の2分の1(上限5,000円)が助成されます。
・掛金の損金算入:
支払った掛金は、全額が「損金」(個人事業主※の場合は必要経費)として計上でき、税法上のメリットがあります。
※個人事業主自身は加入できません。家族従業員(配偶者を含む)は、従業員としての実態があり、事業主との間に使用従属関係が認められる場合は加入できます。ただし、事業主と生計を一にする同居の親族については、使用従属関係等の確認のための書類提出が必要です。
・管理の簡素化:
掛金は金融機関を通じて納付するだけで、退職金の計算や管理は中退共が行うため、事業主の事務負担が軽減されます。
従業員側のメリット
・持ち運びが可能:
転職先の企業も中退共に加入している場合、前の会社で積み立てた退職金をそのまま引き継ぐことができます。
・安心・確実な運用:
国が運営する制度のため、将来的に確実に退職金を受け取れる安心感があります。
中退共の掛金と退職金の計算
掛金
・掛金は、月額5,000円から30,000円までの16種類があります。短時間労働者(パートタイマー等)の場合は、特例として2,000円、3,000円、4,000円の掛金月額も選択可能です。
・掛金の全額を事業主が負担します。
退職金
退職金は、支払った掛金と運用利回りに応じて計算されます。この退職金は、基本退職金と付加退職金の2本立てで、両方を合算したものが支払われます。ただし、付加退職金は、運用状況等によっては支払われないこともあるため注意が必要です。
・過去勤務期間の通算:
初めて中退共に加入する事業主に限り、従業員の勤続期間に応じた退職金が支給できるよう、加入前の勤務期間分についても掛金の納付ができます。
FPとして知っておくべき注意点
・掛金は原則として従業員負担が禁止:
掛金は事業主が全額負担することが原則です。従業員に負担させることはできません。
・掛金の変更・脱退:
・従業員の同意が得られず掛金納付の継続が困難であるため共済契約を解除したい場合は、厚生労働大臣の認定申請が必要になります。
・掛金月額の増額はいつでも可能ですが、減額は従業員の同意または厚生労働大臣の認定が必要となります。
・勤続年数による支給額:
勤続年数が1年未満で退職した場合、退職金は支給されません。また、1年以上2年未満で退職した場合、掛金相当額を下回る退職金が支給されることがあります。
まとめ:中退共の知識はFPの必須スキル
中退共は、中小企業における退職金制度の基盤として、多くの企業で利用されています。FPとして、この制度の仕組み、メリット、そして注意点を正確に理解し、中小企業の経営者や従業員に対して適切なアドバイスができるようになることが重要です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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