FP資格取得のためのポイント
FP資格講座:購入可能な物件価格の計算方法を学ぶ

なぜ物件価格の計算が重要なのか?
住宅は人生で最も大きな買い物の一つです。物件の価格は、自己資金(頭金)と借入金(住宅ローン)の合計で決まります。無理なローンを組むと、将来の生活を圧迫し、家計破綻のリスクを高めてしまいます。FPとして、顧客の年収や貯蓄状況、ライフプランを総合的に考慮し、「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」から物件価格を算出するスキルが必要です。
購入可能額を計算する3つのステップ
購入可能な物件価格を計算するには、以下の3つのステップを踏みます。
ステップ1:無理なく返せる「年間返済額」を算出する
まず、手取り収入から、生活費や教育費、老後資金などの貯蓄を差し引いて、住宅ローンに充てられる金額を算出します。この金額を「返済余力」と呼びます。
住宅ローンの返済負担を測る指標として、「返済比率」または「返済負担率」があります。
・理想の返済比率: 手取り年収に対する返済比率は、無理のない範囲として20〜25%程度が目安です。
・金融機関の審査基準: 金融機関は一般的に、額面(税込み)年収の30〜35%を審査基準の目安としています。
FPとしては、この両方の視点から顧客の状況を判断し、理想的な返済比率から年間返済額を計算することが大切です。
ステップ2:年間返済額から「借入可能額」を算出する
ステップ1で算出した「年間返済額」を基に、住宅ローンの借入可能額を計算します。ここで使用するのが、FP学習で不可欠な資本回収係数です。資本回収係数は、借入額から毎年の返済額を算出する際に使う係数で、この計算ではその逆数を応用します。
・計算式:借入可能額 = 年間返済額 ÷ 資本回収係数
例:年間返済額120万円、金利1.8%、返済期間35年の場合、資本回収係数を0.03876とします。
120万円 ÷ 0.03876 = 約3,096万円
「借り入れ額100万円あたり」で計算する方法
FP試験では、問題文に「借り入れ額100万円あたりの返済月額」が示されるケースもよくあります。この場合、ステップ2の借入可能額は以下の方法で簡単に算出できます。
計算例:年間返済額120万円、借り入れ額100万円あたりの返済月額3,213円の場合
1. まず、借り入れ額100万円あたりの年間返済額を計算します。
・3,213円 × 12ヶ月 = 38,556円
2. 次に、年間返済額を100万円あたりの年間返済額で割ります。
・120万円 ÷ 3.8556万円 = 31.12…
3. この計算結果と、資本回収係数から求めた値に合わせ、借入可能額を算出します。
・31.12… × 100万円 = 約3,096万円
この方法を使えば、資本回収係数を知らなくても、手軽に借入可能額を計算できます。
ステップ3:借入可能額と自己資金から「購入可能額」を算出する
最後に、ステップ2で計算した借入可能額に、頭金や諸費用を差し引いた自己資金を足し合わせることで、物件の購入可能額が算出できます。
・計算式:購入可能額 = 借入可能額 + 自己資金(頭金)
例:借入可能額3,096万円、自己資金(頭金)600万円の場合
3,096万円 + 600万円 = 3,696万円
FPとしてのアドバイス:注意すべきポイント
物件価格を計算する際は、以下の点も考慮に入れる必要があります。
・住宅ローン以外の費用: 不動産取得税や登記費用、仲介手数料などの諸費用(物件価格の6〜10%が目安)は、自己資金から支払うのが一般的です。これらを考慮に入れた上で、無理のない自己資金を確保することが重要です。
・変動金利のリスク: 低金利の変動金利を選ぶ場合、将来の金利上昇リスクを考慮した返済計画を立てる必要があります。金利が2〜3%上昇しても返済可能か、シミュレーションを行いましょう。
・ライフプランとの連携: 住宅購入後も、子どもの教育費や自身の老後資金など、将来のライフイベントに必要な資金を確保しておくことが大切です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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