FP資格取得のためのポイント
FP資格講座:譲渡所得の計算方法を徹底解説!相続・贈与財産の取得費

ファイナンシャル・プランナー(FP)の学習において、株式や不動産だけでなく、ゴルフ会員権や美術品などの「資産」を売却した際に発生する譲渡所得は重要なテーマです。特に、相続や贈与で取得した財産を譲渡した場合、その税務計算には特別なルールがあります。
ここでは、譲渡所得の基本的な計算方法と、FP試験でも頻出のポイントを解説します。
総合課税の譲渡所得の基本ルール
土地建物や株式等以外の資産を売ったときの譲渡所得は、給与所得や事業所得などの所得と合わせて総合課税の対象となります。
譲渡所得とは、資産を譲渡することで得られる所得のことです。まずは、総合課税の譲渡所得の計算式を確認しましょう。
・譲渡所得の金額 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額
・譲渡価額:資産を売却して得た金額です。
・取得費:資産の購入代金や購入手数料などの金額です。
・譲渡費用:仲介手数料や印紙税など、売却にかかった費用です。
・特別控除額:総合課税の譲渡所得に対して、最高50万円が控除されます。
・取得費と取得日の引き継ぎ:
相続や遺贈、贈与で取得した財産を譲渡した場合、その財産の取得費および取得日は、亡くなった方や贈与者のものを引き継ぎます。
譲渡所得の計算における所有期間の判定
譲渡所得は、売却した資産の所有期間によって、税金の計算方法が異なります。総合課税の所有期間は、「取得した日」から「譲渡した日」までで判定します。
・所有期間が5年超の場合:
長期譲渡所得となり、譲渡所得の金額の2分の1が総合課税の対象となります。
・所有期間が5年以下の場合:
短期譲渡所得となり、譲渡所得の全額が総合課税の対象となります。
【事例で学ぶ】譲渡所得の計算方法
以下の事例を基に、譲渡所得の計算をしてみましょう。
※この事例では、絵画と骨とう品どちらも所有期間が5年超の「長期譲渡所得」とします。
・絵画:
売却年月:2025年5月
譲渡価額:300万円
譲渡費用:4万円
購入価額:200万円
・骨とう品:
売却年月:2025年6月
譲渡価額:200万円
譲渡費用:1万円
取得日:2020年7月に父から相続(限定承認ではない)
父の取得価額:150万円
計算の実行
1. 絵画の譲渡所得を計算
この事例では、絵画、骨とう品いずれも所有期間が5年を超えるため、長期譲渡所得となります。
・長期譲渡所得金額 = 300万円 − (200万円 + 4万円) = 96万円
2. 骨とう品の譲渡所得を計算
骨とう品は相続で取得したため、父の取得日を引き継ぎ、所有期間は5年を超えます。これも長期譲渡所得となります。
・取得費も父の取得価額(150万円)を引き継ぎます。
・長期譲渡所得金額 = 200万円 − (150万円 + 1万円) = 49万円
3. 総所得金額に含めるべき金額を計算
譲渡所得の合計額(96万円 + 49万円 = 145万円)から、特別控除額50万円を差し引きます。
特別控除は、複数の譲渡益がある場合、短期譲渡所得から優先して控除します。この事例では、譲渡所得はすべて長期であるため、長期譲渡所得から控除します。
・譲渡所得の合計額:145万円
・特別控除適用後の譲渡所得合計額:145万円 − 50万円 = 95万円
総合課税の対象となる譲渡所得は、長期譲渡所得の金額の2分の1が課税対象となります。
・総所得金額に含めるべき金額: 95万円 × 1/2 = 47万5,000円
まとめ
譲渡所得の計算では、相続や贈与で取得した財産の「取得日」と「取得費」を正確に引き継ぐことが、税額に大きな影響を与えます。FPとして、お客様の税負担を軽減するための適切なアドバイスができるよう、これらのルールを理解しておきましょう。
参考:No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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