FP資格取得のためのポイント
FP資格講座:不動産取得時の贈与税非課税制度の要件と注意点

ファイナンシャル・プランナー(FP)として、住宅購入資金の計算は必須スキルです。特に、直系尊属(父母や祖父母)からの贈与を検討する顧客に対し、住宅取得等資金の贈与税非課税制度を活用して、いくらまで贈与を受けられるかを計算する能力が求められます。
なお、この制度は直系尊属からの贈与にのみ適用されるため、配偶者の両親からの贈与は対象外となる点にご注意ください。単に金額を算出するだけでなく、制度の要件と照らし合わせ、適切なアドバイスを提供することがFPの役割です。
贈与で受け取れる金額を計算する3つのステップ
贈与で受け取れる金額を導き出すには、以下の3つのステップで総資金から自己資金を差し引くという考え方が基本となります。
・ステップ1: 住宅購入に必要な「総資金」を計算する
物件価格に、諸費用(不動産取得税、仲介手数料など)を加えた合計額を算出します。
・ステップ2: 自分で用意できる「自己資金」を計算する
預貯金や借り入れ可能な住宅ローンを合計して、自己資金を算出します。
・ステップ3: 総資金から自己資金を差し引いて「贈与額」を導き出す
必要な総資金から、自分で用意できる資金を引いた残りが、贈与を受けるべき金額となります。
FPとして必須!贈与税非課税制度の要件チェック
この制度では、住宅の種類によって非課税限度額が異なります。
・省エネ等住宅: 1,000万円
・一般住宅: 500万円
FPとして、計算で導き出した金額が、これらの非課税限度額の範囲内に収まるかどうかの検証が必要です。もし非課税限度額を超える場合は、超えた部分に贈与税が課税されます。
その他の重要要件
FPとして、顧客に伝えるべき要件はこれだけではありません。以下の要件も満たす必要があります。
・制度の適用期限:
この制度は、令和8年(2026年)12月31日までの期限付きの特例です。
・受贈者の年齢:
贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること。
・所得制限:
合計所得金額が2,000万円以下であること。ただし、床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅の場合は、所得制限が1,000万円以下となります。
・居住期限:
贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅の引き渡しを受け、居住すること。
・省エネ等住宅の要件:
令和6年度税制改正で、新築住宅の省エネ性能要件が、ZEH水準(断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上)に変更されています。
申告義務について
住宅取得等資金贈与の非課税制度が適用されて贈与税が0円になる場合でも、申告は必須です。申告をしなければ、非課税の適用を受けることができません。贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、必要書類を添付して税務署への申告を行ってください。
さらなる節税効果:相続時精算課税制度との併用
住宅取得等資金贈与の非課税制度は、相続時精算課税制度と併用することが可能です。
ただし、相続時精算課税を選択すると、それ以降の暦年贈与の基礎控除110万円を利用できなくなるため、顧客の長期的な資産移転計画を考慮して慎重に検討する必要があります。FPとしては、顧客の状況に応じて最適な選択肢を提案することが重要です。
これらの要件をすべて満たし、正しく申告することで初めて制度の恩恵を受けられます。顧客の資金計画に大きな影響を与える重要なポイントとなるため、FPとして、常に最新の知識をもって顧客のライフプランに寄り添いましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
金子賢司へのライティング・監修依頼はこちらから。ポートフォリオもご確認ください。