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2026年以降の金融メディアに求められる「信頼の深度」とは

情報があふれる時代において、金融メディアの価値は「情報量」から「信頼性」へと明確にシフトしています。Googleの検索品質評価ガイドラインが2025年に改訂され、YMYL(Your Money or Your Life)領域のコンテンツに対する評価基準がさらに厳格化されました。
読者は「何が書いてあるか」だけでなく「誰が書いたか」「どのような根拠に基づいているか」を重視するようになっており、金融メディア運営者には従来とは異なる「信頼構築」のアプローチが求められています。
なぜ今、金融メディアの信頼性が問われるのか

金融情報は人々の資産形成や生活設計に直結するため、情報の正確性と発信者の信頼性が他の分野以上に重要視されます。検索エンジンの評価基準も、この社会的要請を反映して進化を続けています。
GoogleのE-E-A-T強化とYMYL領域の厳格化
Googleは検索品質評価ガイドラインにおいて、E-E-A-T(Experience:経験、Expertise:専門性、Authoritativeness:権威性、Trustworthiness:信頼性)という評価基準を示しています。中でも「信頼性」は最も重要な要素として位置づけられています。
Google検索セントラルの公式ドキュメントでは、「人の健康や安全、経済的安定、社会の福利厚生に大きく影響する可能性のあるトピックについては、E-E-A-Tが優れたコンテンツを特に重視する」と明記されています。金融情報はまさにこのYMYL(Your Money or Your Life)領域に該当し、他のジャンルよりも厳しい評価基準が適用されます。
出典:Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」
2025年9月のガイドライン改訂が示す方向性
2025年9月11日に行われたGoogle検索品質評価ガイドラインの改訂では、YMYLの定義がさらに明確化されました。この改訂により、金融に関するコンテンツが高品質と評価されるためには、公式で権威ある情報源から発信されるか、直接裏付けられていることが必要とされています。
特に注目すべき点として、AI Overview(AIによる要約)も品質評価の対象となることが示されました。これは、AIが生成した金融情報についても、従来のコンテンツと同様の信頼性基準が適用されることを意味しています。
消費者の情報源選択における変化
総務省が実施している「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、「世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得る」ために最も利用するメディアとして、全年代ではテレビが51.6%と最も高い結果となっています。一方、「いち早く世の中のできごとや動きを知る」ためにはインターネットが54.4%と最も利用されており、速報性と信頼性で異なるメディアが選択される傾向が見られます。
出典:総務省「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
信頼性構築の新たな基準

金融メディアが読者から選ばれるためには、単なる情報提供を超えた「信頼の深度」を示す必要があります。ここでは、2026年以降に求められる信頼性構築の具体的な要件を整理します。
「誰が書いたか」の明確化
Googleの公式ドキュメントでは、コンテンツの著者が誰であるかを明確にすることがE-E-A-Tのコンセプトに沿った行動であると述べられています。具体的には以下の点が重要とされています。
・コンテンツの著者が誰であるかの明示
・ページの適切な場所へのバイライン記載
・著者や関係者についての詳細情報へのリンク
・バックグラウンドや専門分野に関する情報の提供
金融メディアにおいては、執筆者や監修者がどのような資格や経験を持っているのかを明示することで、読者に対して情報の信頼性を担保できます。
情報の出典と根拠の透明性
金融庁が2024年4月に設立した金融経済教育推進機構(J-FLEC)では、金融リテラシー向上のための教育活動において「情報の入手先や契約の相手方である業者が信頼できるかどうかの確認の習慣化」を重要項目として挙げています。これは消費者側に求められる行動ですが、メディア側にとっては、信頼できる情報源を明示することの重要性を示唆しています。
コンテンツ作成プロセスの開示
Googleは「どのように(コンテンツが作成されたか)」を明らかにすることの重要性を強調しています。特にAI生成を含む自動化を使用している場合は、その使用方法や理由を説明することが推奨されています。
金融情報においては、データの取得時期、参照した公的資料、専門家による監修の有無などを明示することで、読者がコンテンツの品質を判断するための材料を提供できます。
メディア運営者が取り組むべき信頼構築戦略

2026年以降の金融メディアには、一過性の情報発信ではなく、継続的な信頼構築が求められます。ここでは、メディア運営者が実践すべき具体的な戦略を示します。
専門家との長期的パートナーシップ
金融庁のYMYLに対する考え方を踏まえると、金融情報であれば資格保有者による執筆や監修が求められる傾向は今後も続くと考えられます。単発の記事監修ではなく、専門家との継続的な協力関係を構築することで、メディア全体の信頼性を高めることが可能になります。
専門家との長期的パートナーシップには以下のメリットがあります。
・一貫した品質基準の維持
・専門家の知見に基づく情報更新の迅速化
・読者からの質問や問い合わせへの対応力向上
・メディアブランドへの専門性の付与
公的機関の一次情報を活用した情報発信
金融メディアが信頼性を担保するためには、公的機関が発信する一次情報を積極的に活用することが有効です。金融庁、厚生労働省、日本年金機構などの政府機関や、金融経済教育推進機構(J-FLEC)のような認可法人が公開している情報は、エビデンスとして信頼性が高いと評価されます。
2025事務年度金融行政方針では、「若者から高齢者まで全世代の国民が金融リテラシーを向上させながら、ライフプランに沿った資産形成を行っていくための支援を、更に充実する」との方針が示されています。この政策動向を踏まえた情報発信は、読者にとっても価値が高いといえます。
情報の継続的な更新と正確性の維持
金融制度は頻繁に改正されるため、過去に公開したコンテンツの正確性を維持するには定期的な見直しが欠かせません。Googleの検索品質評価ガイドラインでも、YMYLコンテンツは信頼性を保つために頻繁に見直しを行うことが推奨されています。
特に以下の情報については、制度改正のタイミングで速やかな更新が求められます。
・税制や社会保険料率の変更
・NISA・iDeCoなどの資産形成制度の改正
・年金制度や介護保険制度の改正
・住宅ローン減税などの優遇制度の変更
信頼を資産に変えるメディア構築の視点

金融メディアにおける「信頼」は、一朝一夕で構築できるものではありません。しかし、いったん確立された信頼は、メディアにとって最も価値のある資産となります。
読者との継続的な関係構築
ユーロモニターインターナショナルの2024年消費者調査によると、消費者の43%が生成AIを信頼できる情報源であると考えている一方、情報過多の現代において消費者は「労力を最小限に抑えながら自分が必要とする商品を探したい」というニーズを持っています。
金融メディアにおいても、読者が必要な情報に効率的にアクセスできる環境を整えることが、信頼構築の一要素となります。複雑な金融制度を分かりやすく解説し、読者の意思決定を支援する姿勢が求められています。
透明性と誠実さの徹底
Googleの公式ドキュメントでは、「なぜ(コンテンツが作成されたか)」という点について、「主として人々の役に立つコンテンツを作成すること」が答えであるべきだと述べられています。検索エンジンでの掲載順位を引き上げることを主な目的とした場合、Googleのシステムによって高く評価されるための方法に即していないとされています。
金融メディアにおいては、読者の資産形成や生活設計に貢献するという目的意識を明確にし、その姿勢を一貫して示すことが信頼構築につながります。
業界全体での信頼性向上への貢献
金融庁が設立した金融経済教育推進機構(J-FLEC)は、「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」に基づき、官民一体で金融経済教育を推進することを目的としています。金融メディアも、この官民連携の一翼を担うことで、業界全体の信頼性向上に貢献できる立場にあります。
信頼性の高い金融メディアが増えることは、読者の金融リテラシー向上にも寄与し、ひいては健全な金融市場の発展に貢献することになります。
まとめ
2026年以降の金融メディアに求められる「信頼の深度」とは、表面的な情報の正確性だけでなく、発信者の専門性、情報源の透明性、継続的な品質維持への取り組みを含む総合的な概念です。
GoogleのE-E-A-T評価基準の強化やYMYL領域への厳格な対応は、金融メディアにとって課題であると同時に、差別化の機会でもあります。読者が「誰が書いたか」で情報を選ぶ時代において、専門家との長期的なパートナーシップを構築し、公的機関の一次情報に基づいた信頼性の高いコンテンツを継続的に発信することが、メディアの価値を高める道筋となります。
信頼は時間をかけて築くものであり、一度失えば回復は困難です。金融メディア運営者は、短期的な成果を追うのではなく、読者との長期的な信頼関係の構築を最優先事項として位置づけることが求められています。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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