税金(一般的な内容)
青色申告と白色申告の違いとは?控除額・記帳方法・届出・節税効果をわかりやすく解説

個人事業主やフリーランスが確定申告を行う際、「青色申告」と「白色申告」の2つの方法があり、国税庁によると青色申告では最大65万円の特別控除が受けられるのに対し、白色申告にはこのような控除制度がありません。2014年以降は白色申告でも記帳が義務化されたため、帳簿作成の手間は以前ほど変わらなくなっています。青色申告には特別控除のほか、家族への給与を全額経費にできる「青色事業専従者給与」や赤字を3年間繰り越せる「純損失の繰越控除」など、複数の税制優遇が用意されていますが、事前に届出書の提出が必要です。この記事では、青色申告と白色申告の違いを比較しながら、それぞれの仕組みと選び方のポイントを解説します。
青色申告と白色申告の基本的な違い

青色申告と白色申告は、いずれも所得税の確定申告における申告方法ですが、税制上の優遇措置や帳簿の記帳方法に違いがあります。ここでは制度の全体像を整理しましょう。
青色申告とは:税制優遇を受けられる申告方法
青色申告は、国税庁No.2070によると、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人に対して、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる制度です。青色申告をすることができるのは、不動産所得、事業所得、山林所得のある人に限られます。
青色申告を選択するには、原則としてその年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。新規開業の場合は、開業日から2か月以内が提出期限となっています。なお、申請書を提出した年の12月31日までに税務署から却下の通知がなければ、承認されたものとみなされます。
白色申告とは:届出不要で行える基本的な申告方法
白色申告は、青色申告の承認を受けていない人が行う確定申告の方法で、事前の届出は不要です。かつては記帳義務も一部の事業者に限定されていましたが、2014年1月以降は事業所得、不動産所得、山林所得のある人すべてに記帳と帳簿等の保存が義務化されました。
白色申告には青色申告のような特別控除制度がなく、家族への給与の経費算入にも制限がある一方、会計処理は単式簿記(簡易な記帳)で問題ありません。確定申告の際には「確定申告書」と「収支内訳書」を提出します。
出典:国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」
青色申告特別控除:最大65万円を所得から差し引ける

青色申告の代表的なメリットが「青色申告特別控除」で、控除額は記帳方法と申告方法によって65万円・55万円・10万円の3段階に分かれています。
65万円控除の要件
最大の65万円控除を受けるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること
・取引を正規の簿記の原則(複式簿記)により記帳していること
・その記帳に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して、期限内(翌年3月15日まで)に提出すること
・e-Tax(電子申告)による申告、または優良な電子帳簿保存を行っていること
つまり、複式簿記で記帳して決算書を添付するだけでは55万円控除にとどまり、65万円控除を受けるにはe-Taxでの申告か電子帳簿保存が追加で必要になります。
55万円控除と10万円控除
55万円控除は、複式簿記による記帳と貸借対照表・損益計算書の添付はしているものの、e-Taxによる申告も電子帳簿保存も行っていない場合に適用されます。令和元年分以前は65万円控除だった区分が、令和2年分以降に55万円へ引き下げられた経緯があります。
10万円控除は、簡易簿記による記帳でも適用を受けられる控除で、複式簿記の知識がなくても利用でき、山林所得のある方も対象に含まれます。
青色申告特別控除の節税効果を具体例で確認

青色申告特別控除を受けた場合の節税効果は、適用される所得税率によって異なります。ここでは事業所得400万円のケースを例に、白色申告との差を確認してみましょう。
事業所得400万円の場合の比較
所得控除(社会保険料控除・基礎控除など)を120万円と仮定した場合の計算は以下のようになります。
・白色申告の場合:課税所得=400万円−120万円=280万円 → 所得税額は約18万2,500円(復興特別所得税含まず)
・青色申告65万円控除の場合:課税所得=400万円−65万円−120万円=215万円 → 所得税額は約11万7,500円
この例では所得税だけで年間約6万5,000円の差が生まれます。住民税(税率一律10%)の差額6万5,000円を加えると、合計で年間約13万円の節税効果となります。さらに、課税所得が下がることで国民健康保険料の算定基礎も減少するため、実際の家計へのメリットはより大きくなるでしょう。
家族への給与の取扱い:専従者給与と専従者控除

個人事業主が生計を同じくする配偶者や親族に給与を支払った場合、原則として必要経費に算入することはできません。しかし、青色申告と白色申告それぞれに特別な取扱いが設けられています。
青色事業専従者給与:支払った給与を全額経費にできる
青色申告者は、生計を一にする配偶者やその他の親族(15歳以上)が事業に専ら従事している場合、支払った給与のうち相当と認められる金額を全額必要経費にできます。上限額の定めはなく、労務の対価として妥当であれば認められる仕組みです。
ただし、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しておく必要があり、届出書に記載した金額の範囲内かつ記載された支給方法で支払わなければなりません。提出期限は、適用を受けたい年の3月15日(新規開業等は2か月以内)となっています。
白色申告の事業専従者控除:配偶者は最大86万円
白色申告の場合は、実際に支払った給与額にかかわらず、事業専従者控除として配偶者は最高86万円、15歳以上のその他の親族は最高50万円が定額で控除されます。青色申告のように実額を経費にすることはできません。
たとえば、配偶者に月額20万円(年間240万円)の給与を支払っていたとしても、白色申告では86万円しか経費にできないのに対し、青色申告であれば240万円全額を経費にすることが可能です。この差は年間154万円もの必要経費の差となり、所得税率20%の場合で約30万8,000円の節税効果の差が生じます。
出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
赤字の繰越し:純損失の繰越控除と繰戻し還付

事業で赤字が出た場合の取扱いも、青色申告と白色申告で違いがあります。
青色申告なら赤字を3年間繰り越せる
青色申告者は、事業で生じた赤字(純損失)をその年の他の所得と損益通算してもなお控除しきれない場合、翌年以降3年間にわたって繰り越すことが可能です。たとえば、開業初年度に150万円の赤字が出た場合、翌年以降の黒字から順次差し引くことで、翌年以降の所得税を減らせます。
さらに、前年も青色申告をしていた場合は、損失額を前年に繰り戻して前年分の所得税の還付を受ける「繰戻し還付」を選ぶこともできます。
白色申告では原則として繰越しできない
白色申告の場合、赤字が出ても翌年以降に繰り越すことは原則としてできません。ただし、変動所得の損失と被災事業用資産の損失に限り、繰越控除が認められるケースがあります。開業時や設備投資の年に赤字が生じやすい業種では、青色申告を選択しておくメリットが特に大きいと言えるでしょう。
少額減価償却資産の特例:30万円未満の経費計上

事業に使用するパソコンや備品などの固定資産を購入した場合、通常は耐用年数に応じた減価償却が必要ですが、青色申告には特例措置が設けられています。
青色申告なら30万円未満を一括経費にできる
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例により、青色申告の個人事業主は取得価額30万円未満の固定資産を購入した年に全額必要経費に計上できます。年間の合計額は300万円が上限です。
白色申告の場合は、10万円以上の固定資産は原則として減価償却が必要となります。20万円未満の資産については「一括償却資産」として3年で均等償却する方法はありますが、全額即時経費にすることはできません。売上が多い年に設備投資を行うことで利益を圧縮できるため、事業の成長期において青色申告の方が資金繰り面でも有利に働く場面があるでしょう。
記帳方法と帳簿保存の比較

2014年以降は白色申告でも記帳が義務化されたため、「帳簿をつけなくていいから白色の方が楽」とは言えなくなりました。ここでは両者の記帳方法と帳簿保存期間の違いを確認します。
青色申告の記帳と帳簿保存
青色申告の原則は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成できるような正規の簿記(複式簿記)による記帳です。ただし、10万円控除であれば簡易な帳簿(現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など)でも認められます。
帳簿の保存期間は原則7年間で、請求書・領収書などの書類は5年間の保存が求められます。確定申告の際には「青色申告決算書(損益計算書+貸借対照表)」を提出します。
白色申告の記帳と帳簿保存
白色申告は単式簿記(簡易な記帳)で足り、収入金額や必要経費に関する事項を日々の取引ごとに記帳すれば要件を満たします。複式簿記の知識は不要で、日付、相手先、金額などを記録する形式で問題ありません。
帳簿保存期間は、法定帳簿(収入・経費の帳簿)が7年間、任意帳簿やその他の書類は5年間となっています。確定申告書には「収支内訳書」を添付して提出します。
帳簿不備には加算税の加重措置がある
令和5年分の確定申告以降、帳簿の作成・保存がされていなかったことや記載が不十分であったことが税務調査で把握された場合、通常の加算税(過少申告加算税・無申告加算税)に5%または10%が加重される措置が導入されています。この措置は青色・白色を問わず適用されるため、いずれの申告方法でも適切な記帳と帳簿保存は欠かせません。
青色申告承認申請書の提出期限と届出書一覧

青色申告に切り替えるためには、事前の届出が必要です。ここでは提出が必要な書類と期限を整理します。
青色申告承認申請書の提出期限
青色申告を希望する場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を以下の期限までに所轄税務署へ提出します。
・既に事業を行っている場合:適用を受けたい年の3月15日まで
・新規開業の場合:開業日から2か月以内
・相続により事業を承継した場合:相続開始を知った日の時期に応じて期限が異なる
たとえば、2027年分の確定申告から青色申告を始めたい場合は、2027年3月15日までに申請書を提出する必要があります。提出後、12月31日までに税務署から却下の連絡がなければ自動的に承認されたことになります。
青色申告で必要な主な届出書
青色申告を最大限活用するためには、以下の届出書を必要に応じて提出します。
・所得税の青色申告承認申請書:青色申告を開始する際に必須
・青色事業専従者給与に関する届出書:家族への給与を経費にする場合
・個人事業の開業届出書:新規開業時(青色申告とセットで提出するのが一般的)
どちらを選ぶべきか?判断のポイント

青色申告と白色申告のどちらが適しているかは、事業の規模や帳簿作成の体制によって判断が変わります。
青色申告が向いているケース
以下のいずれかに該当する場合は、青色申告を選択することで節税メリットを得やすくなります。
・事業所得(または不動産所得)がある個人事業主やフリーランス
・家族に事業を手伝ってもらい、給与を経費にしたい場合
・開業初期で赤字が見込まれ、損失の繰越控除を活用したい場合
・年間の売上・経費の規模がある程度あり、65万円の控除効果が見込める場合
・会計ソフトを導入して複式簿記に対応できる場合
近年はクラウド会計ソフトの普及により、簿記の知識が少なくても複式簿記による記帳が可能になっています。領収書のスキャンや銀行口座との自動連携機能を使えば、日々の記帳作業の負担は以前と比べてかなり軽減されているでしょう。
白色申告のままでよいケース
以下の場合は、あえて白色申告のままにしておくことも選択肢の一つです。
・副業で雑所得に該当し、そもそも青色申告の対象外である場合
・事業規模が小さく、65万円控除の恩恵よりも事務負担の軽さを優先したい場合
・開業間もない段階で、まずは事業を軌道に乗せることに集中したい場合
ただし、前述の通り白色申告でも記帳と帳簿保存は義務であるため、帳簿をつけるなら青色申告10万円控除を選択した方が少なくとも10万円分の控除は受けられることになります。事業所得に該当する収入がある場合は、特段の事情がない限り青色申告を検討する価値は高いと言えるでしょう。
まとめ:記帳義務化で青色申告のハードルは下がっている
青色申告と白色申告の選択は、個人事業主の税負担に直結する重要な判断です。2014年の記帳義務化により白色申告の「手軽さ」のメリットは薄れており、事業所得がある場合は青色申告を積極的に検討すべき環境になっています。
特に、最大65万円の特別控除に加え、専従者給与の全額経費算入、純損失の3年間繰越控除、30万円未満の少額減価償却資産の即時経費計上など、青色申告には複数の税制優遇が用意されています。これらの制度を組み合わせることで、所得税・住民税の軽減だけでなく、国民健康保険料の負担軽減にもつながるでしょう。
一方、青色申告を始めるには「青色申告承認申請書」の期限内提出が必須です。既に白色申告で事業を行っている場合は、翌年分から青色申告に切り替えたい年の3月15日までに申請書を提出しましょう。事前に会計ソフトの導入や記帳方法の確認を行い、無理のない範囲で青色申告への移行を検討してみてはいかがでしょうか。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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