自動車保険
離婚後の自動車保険手続きの注意点|名義・等級変更と保険料を抑えるコツ

離婚後は生活環境が大きく変わるだけでなく、自動車保険の契約内容にも影響が及びます。名義や等級をそのままにしておくと、事故時に補償を受けられないケースや、意図せず保険料が高くなるリスクもあります。本記事では、離婚後に必要な自動車保険手続きと、保険料を抑えるためのポイントを解説します。
離婚後の自動車保険手続きが必要な理由

離婚は、自動車保険の契約内容に大きな影響を与えます。夫婦間で保険を共同で利用していた場合、名義や運転者の範囲を適切に変更しないと、万一の事故時に補償を受けられないリスクがあります。
たとえば、契約者が元配偶者のままで保険料を支払い続けていると、事故発生時に「契約者と使用者が異なる」という理由で保険金が受け取れない可能性があります。また、夫婦限定特約が残っていると、離婚後にその条件から外れた相手が運転しても補償されないといった不具合も生じます。離婚後のライフスタイルに即した契約へ見直すことが欠かせません。
離婚で検討すべき3つの手続き

離婚で検討すべき手続きは、主に以下の3つです。
・手続き1:契約者の変更
契約者名義を夫婦のどちらかに変更します。車検証の名義人や実際の使用者に合わせることが原則です。名義が一致していないと、契約の有効性に疑義が生じる恐れがあります。
・手続き2:等級の引継ぎ
高い等級を、離婚後も引き続き利用できる場合があります。原則として、車を実際に使用する本人が等級を引き継げますが、引継ぎには保険会社の承認や証明書類(車検証や離婚を証明できる戸籍謄本など)が必要となるケースもあります。
なお等級の引継ぎを希望する場合は、離婚成立前に名義変更をしておくことが重要です。別居の段階であれば「同居の親族」として扱われるため引継ぎが可能ですが、離婚手続きが完了し戸籍から抜けてしまうと、家族間の引継ぎとして認められず等級を失ってしまいます。このタイミングを誤ると新規契約扱いとなり、保険料が大幅に上がるので注意しましょう。
・手続き3:運転者の範囲の変更
夫婦限定の補償から、本人限定や家族限定などに変更します。不要な範囲を削ることで、保険料を抑えられる可能性があります。特に一人暮らしになった場合には本人限定が有効です。
離婚で保険料が変わるケースと安くするコツ

離婚に伴い、保険料が変わることがあります。
・保険料が上がるケース:
高い等級の引継ぎができず、新規契約になる場合など。保険会社によっては引継ぎ条件が異なるため、早めに確認することが大切です。
・保険料が安くなるケース:
運転者の範囲を限定する、車両保険の補償条件を見直すなど。たとえば「夫婦限定」から「本人限定」に変えることで保険料が軽減されることがあります。また、車両保険を「時価評価額」に合わせて見直すことでもコストダウンが可能です。
さらに、離婚を機に保険会社を見直すのも有効です。保険料や補償内容は会社ごとに異なるため、複数社を比較検討することで無理なく負担を減らせます。
離婚後の自動車保険に関するよくある質問

ここでは、離婚後に自動車保険を見直す際によく寄せられる疑問に回答します。
Q1:離婚後に自動車の名義変更と保険の契約者変更は同時にしないといけませんか?
A:必ず同時である必要はありませんが、車検証の名義と保険の契約者が一致していないと、事故時に補償が受けられないリスクがあります。そのため、できるだけ同時に行うことをおすすめします。
Q2:等級の引継ぎは必ず認められるのですか?
A:すべてのケースで認められるわけではありません。原則として、実際に車を使用している本人に限り、条件を満たせば引き継げます。ただし離婚成立後は引継ぎが認められないため、別居中の段階で早めに名義変更をしておくことが大切です。
Q3:離婚後に保険料が高くなるのはどんなときですか?
A:高い等級を引き継げず新規契約になった場合や、夫婦限定特約を解除して運転者の範囲を広げた場合に、保険料が上がることがあります。逆に、運転者を本人限定にすると、保険料を抑えられることがあります。
Q4:離婚後に別居しても、元配偶者を運転者に含められますか?
A:離婚後に元配偶者を補償対象に含めることは一般的にはできません。自動車保険は「同居の親族」や「配偶者」を条件にしていることが多いため、別居した元配偶者は対象外となります。必要に応じて運転者の範囲を正しく見直してください。
Q5:離婚後に子どもが運転する場合はどうすればよいですか?
A:運転者限定特約には一般的に「本人限定」「夫婦限定」「家族限定」「限定なし」の4種類があります。「家族限定」では契約者本人や配偶者だけでなく、同居の親族や別居の未婚の子も対象に含まれます。したがって、離婚後にお子さんが運転する場合は「家族限定」を選択するのが一般的です。
Q6:離婚後に自動車保険を見直す最適なタイミングはいつですか?
A:離婚成立後、車検証の名義変更が完了した段階で速やかに見直すことをおすすめします。契約更新時を待たずとも、随時変更が可能です。放置すると補償が受けられないリスクがあるため、早めの対応が安心です。
Q7:離婚して車を持たなくなった場合、自動車保険はどうなりますか?
A:車を手放した場合は、自動車保険も解約が必要です。解約手続きをすると、未経過分の保険料が返還される場合があります。また、将来再び車を購入する際には「中断証明書」を発行しておくと、以前の等級を引き継げる可能性があります。なお、この中断証明書は7等級以上であることが発行条件です。6等級以下、特に事故歴がある「デメリット等級」の場合は対象外となるため注意してください。
Q8:離婚後に新しい車を購入する場合、等級は引き継げますか?
A:現在の車を手放して新しい車を購入する場合でも、本人が契約を継続するなら等級を引き継げます。ただし、名義変更や契約条件の変更を適切に行うことが前提です。
Q9:離婚後に自動車保険の見積もりを取り直すべきですか?
A:はい。離婚によって運転者の範囲や使用目的が変わるため、複数社から見積もりを取り直すことをおすすめします。同じ等級でも保険会社によって保険料が異なるため、比較することで無理なくコストを抑えられます。
Q10:離婚後に手続きを忘れたまま事故を起こしたらどうなりますか?
A:契約内容が実態と異なっていると、保険金が支払われない可能性があります。特に「契約者と車の使用者が一致していない」「限定条件が誤っている」場合はリスクが高いため、離婚後は速やかに手続きしましょう。
まとめ|手続きを怠るリスクと確認すべきポイント
離婚後は、自動車保険の手続きを速やかに行いましょう。手続きを怠ると、事故時に補償を受けられず、大きな経済的負担につながる可能性があります。
特に確認すべきポイントは、契約者の名義変更、等級の引継ぎ、運転者範囲の見直しです。さらに、等級引継ぎは「離婚成立前に行うこと」、中断証明書は「7等級以上で発行可能」という条件を忘れないようにしましょう。これらを正しく行うことで、安心して新しい生活をスタートさせられるとともに、余計な保険料負担を避けることができます。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。