公的年金制度
障害年金とは?障害基礎年金・障害厚生年金の申請要件と手続きのポイント

病気やケガで日常生活や仕事に支障が出たとき、生活を支える公的な年金として「障害年金」があります。しかし、申請要件や手続きが複雑なことから、受給を諦めてしまう方も少なくありません。障害年金は、眼や耳、手足などの障害だけでなく、がんや糖尿病、精神疾患なども対象となる場合があり、現役世代の所得保障として重要な役割を担っています。この記事では、障害年金の種類や申請要件、手続きの流れについて解説します。
もしもに備える「障害年金」は誰でも受け取る可能性がある

障害年金とは、病気やケガによって障害の状態になったとき、生活を支えるために支給される公的年金制度のひとつです。老齢年金と異なり、現役世代でも受給できる点が特徴といえます。
障害年金の対象となる「障害の状態」は、視覚障害や聴覚障害、肢体不自由などの外部障害だけではありません。長期療養が必要ながんや糖尿病、心疾患、呼吸器疾患などの内部疾患、統合失調症やうつ病などの精神障害も含まれます。厚生労働省の資料によると、新規裁定件数では精神障害・知的障害が全体の約7割を占めており、障害年金受給者の中で大きな割合となっています。また、厚生労働省の「令和元年 障害年金受給者実態調査」によると、障害年金を受給している方の34%が就労していることからも、幅広い方が受給対象となり得ることがわかります。
出典:厚生労働省「障害年金制度」(第5回社会保障審議会年金部会資料)
障害者手帳を持っていない方でも、一定の要件を満たせば障害年金を受給できる可能性があることも覚えておきましょう。
障害年金は2種類:障害基礎年金と障害厚生年金

障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、障害の原因となった病気やケガで初めて医師の診療を受けた日(初診日)に加入していた年金制度によって、受給できる年金の種類が決まります。
障害基礎年金
障害基礎年金は、初診日に国民年金に加入していた方が対象となります。具体的には、自営業者、無職の方、学生、厚生年金保険に加入している配偶者に扶養されていた方(第3号被保険者)などが該当します。また、20歳前に初診日がある方や、60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいる期間に初診日がある方も障害基礎年金の対象です。
障害基礎年金には1級と2級があり、3級は設けられていません。そのため、障害の程度が3級相当と判定された場合、障害基礎年金は支給されないことになります。
障害厚生年金
障害厚生年金は、初診日に厚生年金保険に加入していた会社員や公務員などが対象となります。障害厚生年金には1級から3級まであり、障害基礎年金より幅広い障害の程度をカバーしています。
障害厚生年金の1級・2級に該当する方は、障害基礎年金もあわせて受給できる仕組みとなっています。厚生年金の被保険者は、国民年金の第2号被保険者でもあるためです。また、3級より軽い障害が残った場合には、一時金として「障害手当金」が支給されることがあります。
障害基礎年金の受給要件

障害基礎年金を受給するためには、「初診日要件」「保険料納付要件」「障害状態該当要件」の3つの要件をすべて満たす必要があります。
初診日要件
障害の原因となった病気やケガの初診日が、次のいずれかの期間にあることが求められます。
・国民年金の被保険者期間
・20歳前の期間
・60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいる期間(年金制度に加入していない期間)
初診日が65歳以上の方は、原則として障害年金の対象外となります。また、老齢基礎年金を繰上げ受給した方は、繰上げ時点で65歳に達したとみなされるため、繰上げ以降に初診日があっても障害年金の対象になりません。
保険料納付要件
初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしている必要があります。
・3分の2要件:初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること
・直近1年要件(特例):初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと(令和8年3月31日までの特例措置)
20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある方については、保険料納付要件は問われません。ただし、この場合は本人の所得による支給制限があります。扶養親族等がいない場合、前年の所得が376万1,000円を超えると年金額の2分の1が支給停止となり、479万4,000円を超えると全額が支給停止となります(令和7年10月分から適用)。
障害状態該当要件
障害認定日(初診日から1年6か月を経過した日、またはその期間内に症状が固定した日)において、障害の程度が障害等級表に定める1級または2級に該当している必要があります。障害認定日に該当しなくても、その後症状が悪化して1級または2級に該当するようになった場合は、65歳になるまでの間に請求すれば「事後重症請求」として受給できます。
出典:厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第12 障害年金」
障害厚生年金の受給要件

障害厚生年金の受給要件も、基本的な構造は障害基礎年金と同様ですが、いくつかの違いがあります。
初診日と厚生年金加入期間
障害の原因となった病気やケガの初診日が、厚生年金保険の被保険者期間中にあることが必要です。会社員や公務員として働いている期間が該当します。
保険料納付要件
障害基礎年金と同じく、3分の2要件または直近1年要件のいずれかを満たす必要があります。
障害状態該当要件
障害認定日において、障害の程度が障害等級表に定める1級から3級のいずれかに該当していることが求められます。障害基礎年金と異なり、3級でも受給可能な点が特徴です。
なお、障害厚生年金の年金額は、厚生年金に加入していた期間や標準報酬額によって計算される「報酬比例の年金額」が基礎となります。加入期間が300か月(25年)未満の場合は、300か月とみなして計算される最低保障の仕組みがあります。
障害等級の考え方:1級、2級、3級の基準

障害年金の等級は、障害の程度によって1級から3級(障害厚生年金の場合)に分かれています。等級の判定は、厚生労働省が定める「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて行われます。
1級の基準
身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状によって、日常生活の用を弁ずることが不能な程度の状態です。他人の介助を受けなければ、ほとんど自分の身の回りのことができず、活動の範囲が病院ではベッド周辺、家庭では室内に限られるような状態が該当します。
2級の基準
身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状によって、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度の状態です。必ずしも他人の助けを借りる必要はないものの、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度が目安となります。
3級の基準(障害厚生年金のみ)
労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の状態です。日常生活にはほとんど支障がないものの、労働については制限がある場合が該当します。3級は障害厚生年金にのみ存在し、障害基礎年金にはありません。
なお、障害年金の等級は、身体障害者手帳の等級とは異なる基準で判定されます。手帳の等級と年金の等級が一致するとは限らない点に注意が必要です。
国民年金・厚生年金で異なる等級の適用

障害基礎年金と障害厚生年金では、適用される等級に違いがあり、受給できる年金額も異なります。
障害基礎年金の年金額(令和7年度)
・1級:1,039,625円(年額)+子の加算
・2級:831,700円(年額)+子の加算
子の加算額は、18歳到達年度末までの子(または20歳未満で障害等級1級・2級の子)がいる場合に加算されます。
・1人目・2人目の子:各239,300円(年額)
・3人目以降の子:各79,800円(年額)
障害厚生年金の年金額(令和7年度)
・1級:報酬比例の年金額×1.25+配偶者加給年金額+障害基礎年金1級
・2級:報酬比例の年金額+配偶者加給年金額+障害基礎年金2級
・3級:報酬比例の年金額(最低保障額623,800円)
65歳未満の配偶者がいる場合の配偶者加給年金額は239,300円(年額)です。障害厚生年金の1級・2級を受給する方は、障害基礎年金もあわせて受給できるため、合計の受給額は障害基礎年金のみの方より多くなります。
また、3級に該当しない軽度の障害が残った場合には、障害手当金(一時金)として最低保障額1,247,600円が支給される場合があります。
障害年金を受け取るための重要ポイント:「初診日」の確定

障害年金の申請において、最も重要なポイントのひとつが「初診日」の確定です。初診日とは、障害の原因となった病気やケガで初めて医師の診療を受けた日を指します。
初診日が重要な理由
初診日は、次の点を決定する基準となるため、障害年金の申請において極めて重要な意味を持ちます。
・受給できる年金の種類(障害基礎年金か障害厚生年金か)
・保険料納付要件を確認する期間
・障害認定日(初診日から1年6か月後)の算定
初診日に国民年金に加入していた場合は障害基礎年金、厚生年金保険に加入していた場合は障害厚生年金の対象となります。この違いによって、受給できる等級の範囲や年金額が大きく変わってきます。
初診日証明の重要性と注意点
初診日を証明するためには、初診の医療機関で「受診状況等証明書」を取得する必要があります。ただし、医師法によりカルテの保存期間は最後の受診から5年間と定められているため、長期間経過している場合はカルテが廃棄されていることがあります。
初診日の証明が取れない場合は、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を提出し、当時の診察券、お薬手帳、健康保険の給付記録など、初診日を推定できる資料を添付して証明を試みることになります。また、第三者による証明(第三者証明)を活用できる場合もあります。
同一の傷病で転院を繰り返している場合、最初に診療を受けた医療機関の日が初診日となります。過去の通院歴を正確に把握しておくことが大切です。
障害年金申請手続きの流れと必要書類

障害年金を受給するためには、書類を揃えて請求手続きを行う必要があります。審査は書類のみで行われ、訪問調査などは原則としてありません。
申請手続きの基本的な流れ
1. 年金事務所または市区町村役場で事前相談を行い、初診日の確認と必要書類を確認する
2. 初診日を証明する書類(受診状況等証明書)を初診の医療機関で取得する
3. 医師に診断書の作成を依頼する
4. 病歴・就労状況等申立書を作成する
5. 年金請求書とともに必要書類を提出する
6. 日本年金機構による審査(約3か月程度)
7. 審査結果の通知、年金証書の送付
診断書について
診断書は、障害の状態を医学的に証明する書類であり、審査において最も重視されます。障害の種類によって様式が異なり、「眼の障害用」「聴覚・鼻腔機能・平衡機能・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用」「肢体の障害用」「精神の障害用」「呼吸器疾患の障害用」「循環器疾患の障害用」「腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用」「血液・造血器・その他の障害用」などがあります。
複数の障害がある場合は、それぞれに対応した診断書が必要となることがあります。
診断書の内容は審査結果を左右するため、日常生活での困りごとを医師に正確に伝えることが重要です。医師は多忙なため、短い診察時間だけでは日常生活の困難さを把握しきれないことがあります。受診時には、日常生活で困っていること(家事、入浴、外出、金銭管理など)を箇条書きにしたメモを持参し、医師に渡すなどの工夫をすると、実態を反映した診断書の作成につながりやすくなります。
病歴・就労状況等申立書について
病歴・就労状況等申立書は、請求者本人またはご家族が作成する書類です。発病から現在までの受診状況、治療経過、日常生活や就労の状況などを時系列で記載します。
診断書の内容を補足し、審査担当者に障害の状態をより詳しく伝えることができる唯一の書類となります。診断書との整合性を確認しながら作成することが重要です。様式は年金事務所の窓口で入手できるほか、日本年金機構のホームページからダウンロードすることもできます。
どこで申請する?(年金事務所、市区町村役場)
申請窓口は、初診日に加入していた年金制度と被保険者の種別によって異なります。
・年金事務所または街角の年金相談センター:初診日に厚生年金保険に加入していた方、国民年金第3号被保険者期間中に初診日がある方
・市区町村役場の国民年金窓口:初診日に国民年金(第1号被保険者)に加入していた方、20歳前または60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間)に初診日がある方
初診日が共済組合加入期間にある方は、各共済組合が窓口となります。
障害年金申請で陥りやすい落とし穴と回避策

障害年金の申請では、いくつかの点で躓きやすいポイントがあります。事前に把握しておくことで、スムーズな申請につなげましょう。
初診日の特定ができない
長期間の療養を経ている場合、最初に受診した医療機関がわからなくなっていたり、カルテが廃棄されていたりするケースは少なくありません。お薬手帳や診察券、領収書、健康診断の記録など、初診日を推定できる資料は日頃から保管しておくことをおすすめします。
初診の医療機関でカルテが残っていない場合でも、2番目以降の医療機関の紹介状や診療情報提供書に初診日の記載があれば、それを証拠として活用できる場合があります。
保険料の未納期間がある
保険料納付要件を満たしていないと、障害年金を受給できません。将来の障害年金受給の可能性を確保するためにも、保険料の支払いが難しい場合は「免除」や「猶予」の手続きを行い、未納状態を避けることが大切です。免除期間は納付要件の計算に含まれますが、単なる未納は含まれません。
診断書と病歴・就労状況等申立書の整合性
診断書と病歴・就労状況等申立書の内容に矛盾があると、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。診断書を受け取ったら、記載内容を確認し、申立書と齟齬がないよう調整しましょう。日常生活での困りごとを医師に正確に伝えることも、適切な診断書作成のために重要です。
事後重症請求のタイムリミット
障害認定日に等級に該当しなくても、その後症状が悪化した場合は「事後重症請求」ができます。ただし、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があるため、年齢制限に注意が必要です。
申請を諦めてしまう
手続きの複雑さから申請を断念してしまう方もいますが、年金事務所や街角の年金相談センターでは無料で相談を受け付けています。また、社会保険労務士に依頼して手続きを代行してもらうことも選択肢のひとつです。
まとめ:諦めずに!障害年金は生活を支える力になる
障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事に支障が出た方の生活を支える重要な制度です。視覚障害や肢体不自由だけでなく、がんや糖尿病、精神疾患なども対象となり得るため、該当する可能性があれば一度確認してみる価値があります。
申請にあたっては、初診日の特定、保険料納付要件の確認、障害の程度の認定という3つの要件を満たす必要があります。手続きは複雑に感じられるかもしれませんが、年金事務所や市区町村役場の窓口で相談しながら進めることで、必要な書類や手順を把握できます。
令和7年度の障害基礎年金は1級で約104万円、2級で約83万円(年額)が支給されます。子の加算や配偶者加給年金などを含めると、さらに受給額が増える可能性もあります。障害厚生年金であれば3級でも受給でき、障害基礎年金より幅広い保障を受けられます。
障害年金の存在を知らなかった、手続きが難しそうだからと諦めていた方も、まずは年金事務所やねんきんダイヤル(0570-05-1165)に相談してみてはいかがでしょうか。障害年金は、生活を支えるための正当な権利であり、必要な方に届くべき制度です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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