自動車保険
車両保険で補償されないケースとは?地震・飲酒運転など注意点を徹底解説

自動車保険に加入するとき、多くの方が「万が一の事故に備えて車両保険も付けておこう」と考えます。確かに車両保険は強い味方ですが、実はどんな場合でも補償されるわけではありません。知らずに加入してしまうと「保険が使えないなんて…」と後悔することもあります。
この記事では、車両保険で補償されないケースを整理し、注意すべきポイントをわかりやすく解説します。あらかじめ知っておくことで、万が一のトラブル時にも安心して対応できるでしょう。
車両保険で補償されない主なケース

ここでは、一般的に車両保険で補償の対象外となるケースを具体的に紹介します。知らずに保険を過信してしまうことを防ぐためにも、確認しておきましょう。
地震・噴火・津波による損害
車両保険は自然災害に広く対応していますが、例外があります。地震・噴火・津波による損害は対象外とされており、これは多くの保険会社で共通です。
例えば、地震で倒壊した建物の下敷きになった場合や津波で車が流された場合でも、車両保険では補償を受けられません。
ただし、こうした大規模災害に備える方法の一つとして、多くの保険会社では「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」が提供されています。これは地震や津波などで車が全損になった場合に、定額の一時金が支払われる特約です。
一般的な補償額の水準は、車の車両保険金額とは関係なく 5万円〜50万円程度 に設定されており、「全損」と判断された場合にのみ支払われます。つまり「部分的な損傷」や「修理可能な被害」では対象外となる点に注意が必要です。
この特約はあくまで「当面の生活支援」的な役割であり、地震保険のように建物や家財を対象とするものとは目的が異なります。あわせて地震保険や自治体の支援制度なども確認し、包括的にリスク管理を行うことが望ましいでしょう。
故意による損害
運転者が意図的に車を壊した場合や、自作自演で事故を起こした場合は補償されません。これは保険制度の根幹に関わる部分であり、当然のルールです。
「保険金目当ての事故」などは不正行為にあたり、場合によっては詐欺罪に問われる可能性もあるため注意が必要です。
無免許運転や飲酒運転による損害
無免許運転や酒気帯び運転など、法令違反を伴う運転による事故は車両保険の対象外となります。
たとえ車両保険に加入していても、重大な違反行為をした場合には自己責任となり、車の修理費用は補償されません。
一方で、被害者救済の観点から、自賠責保険や対人賠償保険については免責されず、被害者には保険金が支払われます。つまり、加害者本人は車両損害の補償を受けられなくても、被害者保護のための仕組みは維持されている点を理解しておくことが重要です。
戦争やテロ行為による損害
国際的な紛争やテロによって車が損害を受けても、車両保険では補償されません。これは想定外の大規模リスクであるため、保険の仕組みとしてカバーできない範囲に含まれています。
タイヤや消耗品の単独損害
タイヤのパンクや摩耗など、消耗品が単独で損傷した場合は車両保険の対象外となります。ただし、事故や火災によって同時に損害を受けた場合には補償対象となることがあります。
車の維持管理に関わる部分は、利用者が日常的に負担すべき範囲として扱われているのです。
ケーススタディ:飲酒運転による事故の実例

ここで、実際に起こりうるケースを見てみましょう。
Aさんが飲酒運転をした結果、ガードレールに衝突し自分の車を大破させてしまいました。この場合、車両保険からの補償は一切受けられません。修理費用は全額自己負担となり、さらに道路管理者への損害賠償責任も負います。
一方、もしこの事故で歩行者をはねてしまった場合には、自賠責保険や対人賠償保険から被害者に対して補償が行われます。つまり、加害者は「自分の車の修理費用を受け取れない」という大きな不利益を受ける一方で、被害者保護の仕組みは維持されるのです。
この例からもわかるように、法令違反による運転は経済的にも社会的にも極めて大きなリスクを伴います。
補償されないケースを踏まえたリスク対策

車両保険の補償範囲を正しく理解することで、自分に必要な備えを検討できます。補償されないケースに備える方法をいくつか紹介します。
自然災害リスクへの備え
地震や津波による車両被害は保険対象外ですが、「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」を付けることで最低限の補償を確保できます。
ただし、支払われるのは全損時のみで、補償額も一時金として5万円〜50万円程度と限定的です。そのため「車の再購入費用をすべて賄えるものではない」という前提で活用する必要があります。
さらに、生活基盤に関しては地震保険や各種の公的支援制度を利用できます。
特に自宅や事業用資産を守る観点で、包括的にリスクを管理することが重要です。
安全運転とリスク回避
飲酒運転や無免許運転は論外ですが、普段から安全運転を徹底することが最も確実なリスク対策です。
また、定期的な車両点検やメンテナンスを怠らないことも、消耗品の損害を未然に防ぐ手段となります。
保険内容の定期的な見直し
車両保険の契約内容は保険会社やプランによって異なります。年に一度は補償範囲を確認し、自分のライフスタイルや車の利用状況に合っているかを点検しましょう。
例えば、地方に住んでいて自然災害リスクが高い場合には、車両保険以外のリスクヘッジも検討することをおすすめします。
まとめ:車両保険の限界を理解して賢く備える
車両保険は、事故や火災など幅広いリスクをカバーできる心強い保険です。しかし「すべてを補償してくれる万能な保険」ではなく、補償されないケースが存在します。
地震や津波、故意による損害、法令違反による事故などは対象外であり、こうしたリスクには別の備えが必要です。
特約や公的制度を活用しつつ、保険の仕組みを正しく理解することで、いざという時にも慌てず対応できる安心を手に入れましょう。
そして、飲酒運転のケーススタディからも明らかなように、ルール違反をすれば「自分の補償は失うが、被害者には保険金が支払われる」という構造になっています。安全運転を徹底することが最大のリスク回避策であることを忘れないようにしましょう。
チェックリスト:車両保険で補償されない代表例
以下のケースは車両保険では補償されません。契約前の確認や日常の注意点としてご活用ください。
・地震・噴火・津波による損害(ただし特約で一時金補償あり)
・故意による損害(自作自演や保険金目当ての破壊など)
・無免許運転や飲酒運転による損害(※被害者救済は維持)
・戦争やテロ行為による損害
・タイヤやバッテリーなど消耗品の単独損傷
参考情報
・金融庁|損害保険を契約する際に知っておきたい手続きや補償内容について
https://www.fsa.go.jp/ordinary/insurance.html
→ 自動車保険を含む損害保険全般の仕組みや保険金の請求手続きを分かりやすく解説しています。
・国土交通省|自賠責保険制度(強制保険)と被害者保護制度について
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/jibai/insurance.html
→ 自賠責保険の制度概要、加入方法、被害者に対する保護制度(政府保障など)について詳細に解説されています。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。