自動車保険
車両保険で補償されないケースとは?免責事由の確認と家計を守るリスク対策

「車両保険に入っているから安心」──そう思って契約したものの、いざ事故が起きたときに「このケースは補償の対象外です」と告げられるのは避けたい事態でしょう。車両保険には、約款で定められた「免責事由」があり、すべての車の損害が補償されるわけではありません。損保会社のサイトでは免責事由の一覧は確認できますが、「対象外の損害に家計全体でどう備えるか」という視点は抜け落ちがちです。この記事では、免責事由を整理したうえで、エコノミー型と一般型の補償の違いや、地震特約の活用判断、車両保険そのものの要否まで含めた対処法を取り上げます。
車両保険の免責事由一覧|補償されない損害の種類と理由

免責事由とは、保険会社が保険金支払いの責任を負わない事項として約款に規定されているものです。地震・噴火・津波、故意、法令違反、戦争・テロ、タイヤの単独損害、経年劣化による故障などが該当します。日本損害保険協会も「契約者などの故意による場合や戦争による被害」を代表例として挙げています。免責事由が設けられている主な理由は、契約者間の公平性を保つことと、民間保険では対応しきれない大規模リスクを除外することの2点に集約されるでしょう。
以下、主な免責事由を整理します。
地震・噴火・津波による損害
車両保険は台風や洪水には対応しますが、地震・噴火・津波による損害は補償の対象外です。これは一般型・エコノミー型を問わず共通しており、地震による建物倒壊で車が押しつぶされた場合や、津波で車が流された場合も保険金は支払われません。民間の保険会社が引き受けられるリスクの範囲を超えるためであり、この点は火災保険における地震リスクの扱い(地震保険は政府が再保険を引き受ける仕組み)と共通しています。
故意による損害
運転者が意図的に車を壊した場合や、保険金目当てで事故を起こした場合は免責となります。故意の事故に保険金を支払えば不正請求を助長しかねず、保険制度そのものの健全性が損なわれるためです。保険金詐欺は刑法上の詐欺罪に問われる可能性もあります。
飲酒運転・無免許運転など法令違反による損害
酒気帯び運転や無免許運転など、重大な法令違反を伴う事故では、運転者自身の車両損害に対する保険金は支払われません。一方、被害者救済の観点から、対人賠償保険・対物賠償保険は法令違反の有無にかかわらず被害者に支払われる仕組みが維持されています。つまり、法令違反をした本人だけが車両保険の補償を失い、被害者への賠償は確保されるという構造です。
戦争・テロ・核燃料物質による損害
戦争、外国の武力行使、内乱、テロ行為、核燃料物質に起因する損害も免責となります。発生頻度の予測が困難で損害規模も想定できないため、民間の保険制度では引き受けられないリスクとして位置づけられています。
タイヤの単独損害・経年劣化や故障
タイヤのパンクなど、タイヤに単独で生じた損害は車両保険の対象外です。タイヤは消耗品であり、経年劣化によるものか事故によるものかの判断が難しいことが主な理由とされています。ただし、事故や火災によって車両本体と同時にタイヤが損傷した場合は補償されることがあるため、事故の状況によって判断が分かれる点は覚えておきたいところでしょう。
また、バッテリー上がりやエンジンの故障など、経年劣化や機械的な故障による損害も車両保険では補償されません。車両保険はあくまで「偶然な事故」による損害を補償する保険であり、車の老朽化や部品の消耗に起因するトラブルはそもそも補償の対象外となっています。
エコノミー型で「補償されない」範囲と一般型との違い|型選びの判断基準

免責事由とは別に、車両保険の「型」の選択によって補償されない範囲が変わる点も見落としがちです。エコノミー型は一般型より保険料が安い反面、自損事故や当て逃げなど対象外となる事故が広がります。車両保険には「一般型(ワイドカバー型)」と「エコノミー型(限定カバー型)」があり、エコノミー型では一般型なら補償される事故でも対象外になるケースがあるのです。
一般的に、エコノミー型で補償されない主な事故は次のとおりです(保険会社によって異なる場合があります)。
・電柱やガードレールへの衝突など単独事故(自損事故)
・相手が特定できない当て逃げ(三井住友海上など一部の保険会社ではエコノミー型でも補償対象)
・自転車や動物との接触事故
・転覆・転落
損害保険料率算出機構「自動車保険の概況(2024年度)」の事故類型別支払統計によると、車両保険の保険金支払件数のうち「自動車」対「物」の事故が全体の約28%を占めています。この「物」には電柱やガードレールなどが含まれ、エコノミー型では補償対象外となる事故が少なくないことを示しています。
では、エコノミー型と一般型のどちらを選ぶべきか。損保会社のサイトでは「一般型がおすすめ」と紹介されることが多いですが、家計の状況によってはエコノミー型で十分なケースもあるでしょう。判断のポイントは次の3点に整理できます。
・車のローンが残っているかどうか:ローン残債がある場合、自損事故で車が全損しても修理費が自己負担になり、ローンとの二重負担が生じる。この場合は一般型のほうが安全
・運転頻度と運転環境:狭い道路での車庫入れが多い、運転に不慣れといった条件では自損事故のリスクが高いため、一般型の検討余地がある
・浮いた保険料を他の補償に回せるか:エコノミー型と一般型の保険料差額は年間数万円に達することもある。その差額で弁護士費用特約や人身傷害保険の補償額を上げるほうが家計全体のリスク対策として合理的な場合もある
地震特約は必要か|火災保険の地震保険との関係で判断する

地震・噴火・津波は車両保険の免責事由ですが、多くの保険会社では「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」が用意されています。この特約は地震や津波で車が全損になった場合に一時金が支払われるもので、一般的な補償額は50万円程度(車両保険金額が50万円未満の場合はその金額)ですが、車の再購入費をまかなえる補償ではありません。
ここで重要なのは、この特約は「車の再購入費用を補う保険」ではなく、「当面の交通手段確保や生活支援」を目的としている点です。全損時にしか支払われず、修理可能な部分的損傷は対象外になります。
家計全体で地震リスクに備える際は、以下のように整理すると判断しやすくなるでしょう。
・住まいの地震リスク:住宅の地震保険は政府の再保険制度に支えられた公的な仕組みであり、建物・家財の損害を補償する。車の地震特約よりも住宅の地震保険の優先度が高い
・車の利用状況:車がないと日常生活に支障が出る地域では、地震特約の50万円でもレンタカー代や代替交通費の足しになる可能性がある
・特約の保険料負担:地震特約の保険料は年間数百円〜数千円程度の場合が多い。負担が小さければ「保険の保険」として付帯しておく選択肢もある
地震リスクへの備えは「車」だけで考えず、住宅の地震保険、預貯金、自治体の被災者生活再建支援制度を含めた全体像で判断することが欠かせません。
出典:金融庁|公的保険について ~民間保険加入の検討にあたって~
「補償されない」リスクに家計全体でどう備えるか|車両保険の要否を含めた判断

免責事由や型の違いを把握したうえで、そもそも車両保険を付帯するかどうか自体を再検討することも有効です。損保会社の立場では「車両保険に加入しましょう」という方向になりますが、車の時価と預貯金の関係から「車両保険を外して保険料を他の補償に振り向ける」ことが合理的なケースもあります。
車の時価と預貯金の関係で車両保険の要否を判断する
車両保険で支払われる保険金の上限は、契約時に設定した「車両保険金額」であり、車の時価額をもとに決定されるものです。年数が経って時価が下がると、車両保険金額も下がり、支払われる保険金は減っていきます。
判断のポイントは次のとおりです。
・車の時価が低く、預貯金で修理費や買い替え費を吸収できる場合:車両保険の保険料負担と得られる補償のバランスが悪くなる。車両保険を外して対人・対物賠償の無制限を維持し、弁護士費用特約を付帯するほうが合理的な場合がある
・新車やローン残債がある場合:全損時の経済的ダメージが大きいため、車両保険の付帯を優先すべき
・車が生活の必需品である場合:特に公共交通機関が限られる地域では、事故後に代替車両を確保するまでの期間も含めてリスクを考える必要がある
免責金額の設定と等級ダウンのバランスを考える
車両保険を付帯する場合、免責金額(自己負担額)の設定も重要な判断材料です。免責金額を高く設定するほど保険料は安くなる一方で、事故時の自己負担は増えるため、バランスの見極めが求められます。
もう一つ見落としがちなのが、車両保険を使うと翌年以降の等級が下がり、保険料が上がる点です。3等級ダウン事故に該当する場合、翌年以降3年間にわたって「事故有係数」が適用され、保険料負担が増加します。そのため、修理費が少額の場合は車両保険を使わず自己負担で修理したほうが、長期的な保険料の総額では有利になることもあるでしょう。
免責金額を「5-10万円」や「10-10万円」に設定し、「10万円程度の修理なら自己負担、それを超える損害で車両保険を使う」という運用ルールをあらかじめ決めておくと、等級ダウンのリスクと保険料負担のバランスが取りやすくなります。
まとめ|車両保険の免責事由を理解し、保険料の使い方を最適化する
車両保険には「補償されない損害」が明確に存在するという点は見逃せません。地震・噴火・津波、故意、法令違反、戦争・テロ、タイヤの単独損害や経年劣化による故障がその代表例であり、さらにエコノミー型を選択した場合は自損事故や当て逃げも対象外になる可能性があります。
損保会社のサイトではこうした免責事由の一覧は確認できますが、「補償されないリスクにどう備えるか」「車両保険の保険料を他の補償に回すほうが合理的ではないか」という視点は、家計全体を見渡して初めて判断できるものです。
ポイントを整理すると、次の3点に集約されるでしょう。
・免責事由は保険の仕組み上の限界であり、別の備えが必要:地震リスクには住宅の地震保険や預貯金、自治体支援制度を含めた全体像で備える
・エコノミー型か一般型かは、ローン残債・運転環境・保険料の振り向け先で判断する:一概に「一般型がおすすめ」とは言い切れない
・車の時価が低い場合は「車両保険を外す」選択も含めて、対人・対物賠償や弁護士費用特約など優先すべき補償を見極める
自動車保険の限られた保険料をどこに配分するかは、車の価値、家族構成、預貯金の状況、地域の交通事情によって一人ひとり異なります。免責事由の内容を正しく理解したうえで、保険料の使い方を最適化することが、家計全体のリスク管理につながるでしょう。
参考情報
・日本損害保険協会|損害保険Q&A 免責とは
・日本損害保険協会|飲酒運転事故における補償範囲
・損害保険料率算出機構|自動車保険の概況
・金融庁|公的保険について ~民間保険加入の検討にあたって~
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



