FP資格取得のためのポイント
贈与税非課税制度の活用法!いくら贈与を受けられるか計算してみましょう

ファイナンシャル・プランナー(FP)として、住宅購入資金の計算は必須スキルです。特に、直系尊属(父母や祖父母)からの贈与を検討する顧客に対し、住宅取得等資金の贈与税非課税制度を活用して、いくらまで贈与を受けられるかを計算する能力が求められます。なお、この制度は直系尊属からの贈与にのみ適用されるため、配偶者の両親からの贈与は対象外となる点にご注意ください。単に金額を算出するだけでなく、制度の要件と照らし合わせ、適切なアドバイスを提供することがFPの役割です。
贈与で受け取れる金額を計算する3つのステップ
贈与で受け取れる金額を導き出すには、以下の3つのステップで総資金から自己資金を差し引くという考え方が基本となります。
・ステップ1: 住宅購入に必要な「総資金」を計算する
物件価格に、諸費用(不動産取得税、仲介手数料など)を加えた合計額を算出します。
・ステップ2: 自分で用意できる「自己資金」を計算する
預貯金や借り入れ可能な住宅ローンを合計して、自己資金を算出します。
・ステップ3: 総資金から自己資金を差し引いて「贈与額」を導き出す
必要な総資金から、自分で用意できる資金を引いた残りが、贈与を受けるべき金額となります。
具体的な計算例と正確な数値
以下の条件を基に、贈与で受け取れる金額を正確に計算してみましょう。
・物件価格: マンション4,000万円
・諸費用: 4,000万円 × 10%
・預貯金: 500万円(頭金として利用)
・借入条件:
・年収(税込み)550万円の20%以内
・金利年1.5%、返済期間35年、ボーナス返済なし
・計算ルール: 計算過程で端数がでるときは10万円未満を切り捨て
計算の実行
ステップ1:住宅購入に必要な総資金を計算する
まず、物件価格と諸費用を合計して、住宅購入に必要な総資金を算出します。
・諸費用:4,000万円 × 10% = 400万円
・総資金:4,000万円 + 400万円 = 4,400万円
必要な総資金は、4,400万円となります。
ステップ2:自分で用意できる自己資金を計算する
次に、預貯金と住宅ローンの借入可能額を合計して、自分で用意できる資金を算出します。
・預貯金: 500万円
・借入可能額: 年収550万円の20%を年間返済額とします。
・年間返済額:550万円 × 20% = 110万円
借入可能額は、「100万円あたりの返済月額」から算出します。このケースでは、100万円あたりの返済月額は3,061円とします。
・借入可能額 = (年間返済額 ÷ 12ヶ月) ÷ (100万円あたりの返済月額 ÷ 100万円)
・借入可能額 = (110万円 ÷ 12ヶ月) ÷ (3,061円 ÷ 100万円) = 2,994.65...万円
ここで、10万円未満を切り捨てるルールを適用します。
・2,994.65...万円 → 2,990万円
自己資金の合計は、預貯金と借入可能額を足し合わせます。
・自己資金合計:500万円 + 2,990万円 = 3,490万円
ステップ3:総資金から自己資金を差し引いて贈与額を導き出す
最後に、必要な総資金から自己資金の合計額を引いて、贈与で受け取れる金額を計算します。
・贈与額:4,400万円(総資金) − 3,490万円(自己資金合計) = 910万円
このケースでは、910万円が、不足している資金となります。
FPとして必須!贈与税非課税制度の要件チェック
計算で導き出した910万円が、実際に贈与税非課税制度の範囲内に収まるかどうかを検証します。この制度には、住宅の種類によって非課税限度額が異なります。
・省エネ等住宅: 1,000万円
・一般住宅: 500万円
今回の計算結果である910万円は、住宅が省エネ等住宅の要件を満たす場合、非課税限度額の1,000万円以下であるため、全額を非課税で受け取ることが可能です。しかし、一般住宅の場合は500万円を超えるため、超えた部分(910万円 - 500万円 = 410万円)に贈与税が課税されます。
その他の重要要件
FPとして、顧客に伝えるべき要件はこれだけではありません。以下の要件も満たす必要があります。
・受贈者の年齢: 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること。
・所得制限: 合計所得金額が2,000万円以下であること。
・居住期限: 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅の引き渡しを受け、居住すること。
申告義務について
住宅取得等資金贈与の非課税制度が適用されて贈与税が0円になる場合でも、申告は必須です。申告をしなければ、非課税の適用を受けることができません。贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、必要書類を添付して税務署への申告を行ってください。
さらなる節税効果:相続時精算課税制度との併用
住宅取得等資金贈与の非課税制度は、相続時精算課税制度と併用することが可能です。例えば、今回のケースで一般住宅の場合、非課税枠500万円を超えた410万円に対して相続時精算課税を選択することで、現在の贈与税負担を軽減できます。
ただし、相続時精算課税を選択すると、それ以降の暦年贈与の基礎控除110万円を利用できなくなるため、顧客の長期的な資産移転計画を考慮して慎重に検討する必要があります。FPとしては、顧客の状況に応じて最適な選択肢を提案することが重要です。
これらの要件をすべて満たし、正しく申告することで初めて制度の恩恵を受けられます。今回のケースでは、住宅が省エネ等住宅であるか否かが、顧客の資金計画に大きな影響を与える重要なポイントとなります。
FPとして、顧客の状況を正確に把握し、最適な資金計画を提案できるように、贈与税非課税制度の知識を深めておきましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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