税金(一般的な内容)
贈与税とは?基礎控除110万円・税率・暦年課税と相続時精算課税の違いをわかりやすく解説

贈与税は、個人から財産を受け取った場合にかかる税金で、国税庁によると年間110万円の基礎控除が設けられており、1年間に受け取った財産の合計が110万円以下であれば贈与税はかかりません。課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、2024年の税制改正では、暦年課税の生前贈与加算期間が3年から7年に延長され、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が新設されるなど、制度が見直されています。税率は10%から最大55%の累進課税で、贈与者と受贈者の関係によって「一般税率」と「特例税率」に分かれます。この記事では、贈与税の基本的な仕組みから計算方法、2つの課税方式の違い、各種非課税特例まで解説します。
贈与税の基本的な仕組み

贈与税は個人間の財産移転に課税される国税で、課税方法や控除額を正しく理解することが節税の第一歩になります。ここでは制度の基本構造を確認しましょう。
贈与税とは何か
贈与税は、個人から財産を無償で受け取った(贈与を受けた)場合に、受け取った側(受贈者)が納める税金です。現金や預貯金に限らず、不動産、株式、保険金など経済的価値のあるものすべてが課税対象になります。
注意が必要なのは、法人から財産を受け取った場合は贈与税ではなく所得税の課税対象になる点です。また、本人が保険料を負担していない生命保険金を受け取った場合も、贈与を受けたものとみなされて贈与税がかかることがあります。
贈与税の基礎控除は年間110万円
贈与税には年間110万円の基礎控除が設けられています。1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかからず申告も不要です。
この110万円は「受け取った側」を基準に計算される点がポイントで、複数の人から贈与を受けた場合はその合計額で判定されます。たとえば、父から80万円、祖父から50万円の贈与を受けた場合、合計130万円となり基礎控除を超えるため、差額の20万円に対して贈与税が課税されることになります。
贈与税の申告と納付
年間の贈与額が基礎控除の110万円を超えた場合、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に申告と納税を行う必要があります。所得税の確定申告と同じ時期ですが、贈与税は別の申告書で手続きを行います。
納税は原則として金銭で一括納付しますが、贈与税額が10万円を超え、期限までに金銭で納付することが困難な場合には延納制度を利用できます。
贈与税の税率と計算方法

贈与税の税率は10%から55%の累進課税で、贈与者と受贈者の関係によって「一般税率」と「特例税率」の2種類に分かれます。
一般税率と特例税率の違い
特例税率は、父母や祖父母といった直系尊属から、その年の1月1日時点で18歳以上の子や孫に対して贈与が行われた場合に適用される税率です。一般税率よりも税率が低く設定されており、同じ金額の贈与でも税負担が軽くなります。
一般税率は、特例税率に該当しないすべての贈与に適用されます。たとえば、兄弟姉妹間や夫婦間の贈与、親から18歳未満の子への贈与などが該当します。
贈与税の速算表(特例税率)
直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与に適用される特例税率の速算表は以下の通りです(基礎控除後の課税価格)。
・200万円以下:税率10%、控除額0円
・400万円以下:税率15%、控除額10万円
・600万円以下:税率20%、控除額30万円
・1,000万円以下:税率30%、控除額90万円
・1,500万円以下:税率40%、控除額190万円
・3,000万円以下:税率45%、控除額265万円
・4,500万円以下:税率50%、控除額415万円
・4,500万円超:税率55%、控除額640万円
贈与税の速算表(一般税率)
特例税率に該当しない贈与に適用される一般税率の速算表は以下の通りです(基礎控除後の課税価格)。
・200万円以下:税率10%、控除額0円
・300万円以下:税率15%、控除額10万円
・400万円以下:税率20%、控除額25万円
・600万円以下:税率30%、控除額65万円
・1,000万円以下:税率40%、控除額125万円
・1,500万円以下:税率45%、控除額175万円
・3,000万円以下:税率50%、控除額250万円
・3,000万円超:税率55%、控除額400万円
出典:国税庁 No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
計算例:親から500万円の贈与を受けた場合
父親から18歳以上の子が500万円の贈与を受けた場合、特例税率を適用して計算すると以下のようになります。
・基礎控除後の課税価格:500万円 − 110万円 = 390万円
・贈与税額:390万円 × 15% − 10万円 = 48万5,000円
一方、同じ500万円でも兄弟間の贈与(一般税率)の場合は、390万円 × 20% − 25万円 = 53万円となり、贈与者と受贈者の関係によって4万5,000円の差が生まれます。
暦年課税と相続時精算課税の違い

贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、どちらを選ぶかによって税負担や将来の相続税に影響が出ます。
暦年課税の仕組み
暦年課税は贈与税の原則的な課税方式で、1年間に受け取った贈与額から基礎控除110万円を差し引いた金額に課税される仕組みです。特別な届出は不要で、誰からの贈与にも適用されます。
ただし、2024年1月1日以降の贈与から、相続が発生した場合に、相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算されるルールに変更されました。従来は3年以内でしたが、段階的に7年に延長されています。延長された4年間分については、合計100万円まで加算の対象外とされています。
相続時精算課税の仕組み
相続時精算課税は、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与について選択できる課税方式です。選択すると、贈与者ごとに累計2,500万円まで贈与税がかからず、2,500万円を超えた部分に一律20%の税率が適用されます。
2024年1月1日以降の贈与からは、年間110万円の基礎控除が新たに設けられ、この基礎控除の範囲内の贈与は申告不要で、相続時の加算対象にもなりません。一方、暦年課税では110万円以下の贈与でも相続開始前7年以内であれば加算対象になるため、この点は相続時精算課税の方が有利になります。
ただし、一度相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税に戻すことができないため、慎重な判断が求められるでしょう。
暦年課税と相続時精算課税の使い分け
暦年課税は基礎控除110万円の範囲で長期間にわたって少額ずつ贈与する場合に適しており、贈与者の年齢や受贈者の数に制限がないのがメリットです。一方で、相続開始前7年以内の贈与が加算される点には注意が必要でしょう。
相続時精算課税は、まとまった金額を一度に贈与したい場合や、贈与者が高齢で早めに財産を移転したい場合に向いています。2024年の改正で年間110万円の基礎控除が加わったことで、以前より使い勝手が向上しました。
どちらが有利かは、贈与額や贈与者の年齢、将来の相続財産の見込みによって異なるため、両方の課税方式でシミュレーションしたうえで判断することが重要です。
贈与税がかからない主な非課税特例

贈与税には、目的を限定した非課税特例がいくつか設けられています。基礎控除110万円とは別枠で利用できるため、うまく活用すれば節税効果が得られます。
住宅取得等資金の贈与の非課税
父母や祖父母などの直系尊属から、住宅の新築・取得・増改築のための資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の住宅で500万円まで贈与税が非課税になります。
この特例は令和8年(2026年)12月31日までの贈与が対象で、受贈者の合計所得金額が2,000万円以下であることなどの要件があります。暦年課税の基礎控除110万円と併用すれば、省エネ等住宅の場合は最大1,110万円まで非課税で贈与を受けることが可能です。
出典:国税庁 No.4508「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
教育資金の一括贈与の非課税
直系尊属が30歳未満の子や孫に対して教育資金を一括で贈与した場合、金融機関に専用口座を開設し一定の手続きを行うことで、受贈者1人あたり最大1,500万円まで贈与税が非課税になる制度があります。
この制度は令和8年(2026年)3月31日までの適用期限が設けられていますが、利用実績の低迷や教育無償化政策の拡充を背景に、延長されず終了する見通しが報じられています。利用を検討している場合は、期限内に計画的な対応が必要です。
夫婦間の居住用不動産の贈与の配偶者控除
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用の不動産またはその購入資金を贈与した場合、基礎控除110万円に加えて最大2,000万円まで控除できる制度です。同じ配偶者からの贈与は1回限りの適用で、贈与を受けた翌年3月15日までにその不動産に居住する必要があります。
贈与税と相続税の関係

贈与税は相続税を補完する役割を持つ税金であり、生前に財産を移転することで相続税を回避する行為を防ぐ目的で課税されています。
生前贈与加算の仕組み
暦年課税で贈与を受けた財産のうち、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されて相続税の課税対象になります。この「7年」は2024年以降に段階的に延長されるもので、2030年の相続までは移行期間として加算期間が3年から順次延びていきます。
つまり、相続直前の贈与は節税効果が薄れるため、贈与による相続対策は早い段階から計画的に行うことが重要です。
相続時精算課税を選択した場合の相続税
相続時精算課税で贈与を受けた財産は、贈与者が亡くなった際に相続財産に合算されて相続税が計算されます。ただし、2024年以降に適用される年間110万円の基礎控除の範囲内の贈与については、相続財産への加算対象外となる点が改正前と異なります。
なお、相続時精算課税で納めた贈与税がある場合は、相続税額から控除されるため、二重課税にはなりません。
贈与税の負担を軽減するための基本的な考え方

贈与税の負担を抑えるためには、制度の仕組みを正しく理解したうえで、計画的に活用することが求められます。
毎年の基礎控除を活用した贈与
暦年課税の基礎控除110万円を毎年活用すれば、10年間で1人あたり1,100万円を無税で贈与できます。贈与先が複数いればさらに効果は大きくなりますが、毎年同額を同時期に贈与する約束をしてしまうと「定期金の権利の贈与」とみなされる可能性がある点には注意が必要です。
国税庁のタックスアンサーでも、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが贈与者との間で約束されている場合には、約束をした年に定期金に関する権利の贈与を受けたものとして課税される可能性が示されています。毎年、その都度贈与契約を結ぶことが実務上の対策になるでしょう。
目的別の非課税特例を組み合わせる
住宅取得資金の非課税特例(最大1,000万円)と暦年課税の基礎控除(110万円)は併用できるため、最大1,110万円まで非課税で贈与を受けることが可能です。さらに、相続時精算課税を選択すれば2,500万円の特別控除も利用できます。
ただし、複数の制度を組み合わせる場合は適用要件が複雑になるため、贈与前に要件を十分確認し、必要に応じて税務の専門家に相談することをお勧めします。
暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かはケースバイケース
2024年の改正で相続時精算課税に年間110万円の基礎控除が設けられたことで、これまで暦年課税一択だった贈与の考え方が変わりつつあります。特に、贈与者が高齢で相続開始前7年以内の暦年贈与が加算対象になるリスクが高い場合、相続時精算課税の基礎控除を活用した方が有利になるケースがあるでしょう。
一方で、相続時精算課税は撤回不可であること、贈与財産が相続時に合算されること、贈与者の年齢制限(60歳以上)があることなどの制約もあります。どちらを選ぶべきかは相続財産の規模や家族構成によって異なるため、将来の相続税額を含めたシミュレーションが欠かせません。
まとめ:贈与税の基本を押さえて計画的な財産移転を
贈与税は年間110万円の基礎控除があり、暦年課税と相続時精算課税の2つの課税方式が選べます。税率は10%から55%の累進課税で、直系尊属からの贈与には優遇された特例税率が適用されます。
2024年の税制改正で生前贈与加算期間が7年に延長された一方、相続時精算課税に年間110万円の基礎控除が新設されるなど、贈与を取り巻く制度は変化しています。住宅取得資金や教育資金の非課税特例には適用期限が設けられているものも多いため、制度の最新情報を確認しながら、ライフプラン全体を見据えた計画的な財産移転を検討することが大切です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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