相続
相続税は誰でもかかるわけじゃない!「基礎控除3,000万円+600万円×人数」の計算方法を徹底解説

相続と聞くと「多額の税金がかかるのでは」と心配される方は少なくありません。しかし実は、相続税が課税されるのは約8%、つまり約92%の方は相続税を支払う必要がありません。その理由は、相続税法第15条に定められた「基礎控除額」という非課税枠が設けられているためです。基礎控除額を超えない限り、相続税の申告も納税も不要となります。
この記事では、相続税の基礎控除の仕組みから具体的な計算方法、申告が必要かどうかの判断ポイントまで、わかりやすく解説します。
相続税の基礎控除とは?約92%の人は相続税が非課税

相続税の基礎控除とは、遺産総額から一定額を差し引くことができる非課税枠のことです。相続税法第15条により、すべての相続に適用される控除で、遺産総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、申告も不要となります。
平成27年(2015年)の税制改正前は基礎控除額が「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」でしたが、改正後は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられました。これにより、相続税が課税される割合は約4%から約8%に増加しました。それでも、約92%の方には相続税が課税されていません。
出典:相続税はいくらから?基礎控除とは?相続税の基本を確認!|政府広報オンライン
基礎控除額の計算式

基礎控除額は、以下の計算式で算出されます。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
法定相続人が多いほど、基礎控除額も大きくなる仕組みです。例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となります。遺産総額が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。
出典:相続税のあらまし|国税庁
法定相続人の数え方(重要!)

基礎控除額を正しく計算するためには、法定相続人の数を正しく数えることが重要となります。以下のポイントに注意しましょう。
配偶者は必ず法定相続人
被相続人(亡くなった方)の配偶者は、どのような場合でも必ず法定相続人となります。配偶者以外の親族には、民法で定められた相続順位があり、順位の高い人から法定相続人となります。
・第1順位:子(子が既に亡くなっている場合は孫など直系卑属)
・第2順位:直系尊属(父母、父母が既に亡くなっている場合は祖父母)
・第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は甥・姪)
相続放棄をした人も人数に含める
民法上、相続放棄をした人は「初めから相続人ではなかったもの」とみなされます。しかし、相続税法上の基礎控除額を計算する際は、相続放棄をした人も法定相続人の数に含めます。
例えば、配偶者と子2人の合計3人が法定相続人で、子1人が相続放棄をした場合でも、基礎控除額の計算では法定相続人は3人として計算します。
養子の数には制限がある
養子縁組をすると法定相続人の数が増え、基礎控除額も増加します。しかし、税負担を不当に減少させることを防ぐため、基礎控除額の計算に算入できる養子の数には制限があります。
・被相続人に実子がいる場合:養子は1人まで
・被相続人に実子がいない場合:養子は2人まで
ただし、以下のような養子は実子とみなされ、この制限の対象外となります。
・配偶者の実子で被相続人の養子となった者(いわゆる連れ子)
・代襲相続人であり、かつ被相続人の養子となっている者
具体的な計算例

基礎控除額がいくらになるか、家族構成別に具体例を見てみましょう。
例1:配偶者と子2人の場合
法定相続人:配偶者1人+子2人=合計3人
基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
遺産総額が4,800万円以下であれば、相続税の申告・納税は不要となります。
例2:配偶者と親の場合
子がいない場合、第2順位の直系尊属が法定相続人になります。
法定相続人:配偶者1人+親(父または母)1人=合計2人
基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
例3:配偶者と兄弟姉妹3人の場合
子も直系尊属もいない場合、第3順位の兄弟姉妹が法定相続人になります。
法定相続人:配偶者1人+兄弟姉妹3人=合計4人
基礎控除額:3,000万円+600万円×4人=5,400万円
例4:子1人のみの場合
配偶者がいない場合でも、計算方法は同じです。
法定相続人:子1人
基礎控除額:3,000万円+600万円×1人=3,600万円
相続税がかかるケース、かからないケースの具体例

遺産総額と基礎控除額を比較して、相続税がかかるかどうか判断します。
ケース1:遺産総額5,000万円、配偶者と子2人(法定相続人3人)
基礎控除額:4,800万円
判定:5,000万円 > 4,800万円 → 相続税あり
課税遺産総額は200万円(5,000万円-4,800万円)となり、この金額に対して相続税が課税されます。
ケース2:遺産総額4,000万円、配偶者と子2人(法定相続人3人)
基礎控除額:4,800万円
判定:4,000万円 < 4,800万円 → 相続税なし
基礎控除額の範囲内なので、相続税はかからず、申告も不要です。
ケース3:遺産総額8,000万円、配偶者と子3人(法定相続人4人)
基礎控除額:3,000万円+600万円×4人=5,400万円
判定:8,000万円 > 5,400万円 → 相続税あり
課税遺産総額は2,600万円(8,000万円-5,400万円)となります。
相続税の申告義務の有無を判断する

遺産総額が基礎控除額を超えるかどうかを判断するためには、相続財産を正確に把握することが重要です。相続財産には、預貯金や不動産だけでなく、以下のようなものも含まれます。
・有価証券(株式、投資信託など)
・生命保険金(非課税枠を超える部分)
・死亡退職金(非課税枠を超える部分)
・自動車、貴金属、美術品など
・相続開始前7年以内の暦年課税に係る贈与財産(2024年1月1日以降の贈与)
一方で、以下のものは遺産総額から差し引くことができます。
・借金などの債務
・葬式費用
国税庁の「申告要否判定コーナー」を活用する

相続税の申告が必要かどうか不安な場合は、国税庁ホームページの「相続税の申告要否判定コーナー」を活用すると便利です。
法定相続人の数や相続財産の金額などを入力することで、相続税の申告の要否をおおよそ判定できます。土地の評価方法なども簡単に教えてくれるため、自宅不動産と預貯金、有価証券だけといったシンプルなケースであれば十分対応可能です。
ただし、以下のような複雑なケースでは、税理士に相談することをおすすめします。
・土地の評価が複雑(3つ以上の道路に接している場合など)
・遺産総額が100億円以上
・相続開始が平成26年12月31日以前
基礎控除を超えても特例で税金がゼロになるケースもある

遺産総額が基礎控除額を超えていても、特例を適用することで相続税がゼロになる場合があります。代表的なものは以下の2つです。
配偶者の税額軽減(配偶者控除)
配偶者が相続した財産については、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで相続税が非課税となる特例があります。
ただし、この特例を適用する場合は、相続税額がゼロであっても申告が必要となります。
小規模宅地等の特例
被相続人が居住していた土地や事業用の土地について、一定の要件を満たす場合、評価額を最大80%減額できる特例です。
この特例を適用した結果、課税遺産総額が基礎控除額以下になれば相続税はゼロになりますが、特例を適用するには申告が必要となります。
遺産総額の計算で注意すべきポイント

名義預金に注意
子や孫の名義で作られた預金口座でも、実質的に被相続人が管理していた場合は「名義預金」として相続財産に含める必要があります。
名義が誰であるかではなく、「その財産を築いたのは誰か」が重要なポイントです。
生前贈与加算
相続開始前の一定期間内(2024年1月1日以降の贈与は7年以内、それ以前の贈与は3年以内)に暦年課税で贈与を受けた財産は、相続財産に加算して計算する必要があります。
ただし、日々の生活費や教育費、社会通念上常識的な範囲内のお年玉程度であれば加算対象にはなりません。
基礎控除額の早見表
法定相続人の数ごとの基礎控除額は以下の通りです。
・法定相続人1人:3,600万円
・法定相続人2人:4,200万円
・法定相続人3人:4,800万円
・法定相続人4人:5,400万円
・法定相続人5人:6,000万円
まとめ:基礎控除額を正しく理解して相続税の要否を判断しよう
相続税の基礎控除について、以下のポイントを押さえておきましょう。
・基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数
・遺産総額が基礎控除額以下であれば、相続税はかからず申告も不要
・相続放棄をした人も法定相続人の数に含める
・養子の数には制限がある(実子がいる場合は1人、いない場合は2人まで)
・約92%の方は基礎控除額の範囲内で相続税は非課税
・国税庁の「申告要否判定コーナー」で簡易判定が可能
・配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用する場合は、相続税額がゼロでも申告が必要
・名義預金や生前贈与加算など、見落としがちな相続財産に注意
相続税は「お金持ちだけの税金」というイメージがありますが、不動産を所有している場合などは基礎控除額を超える可能性もあります。相続が発生したら、まずは遺産総額を把握し、基礎控除額と比較することから始めましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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