相続
相続税の申告手続き完全ガイド!必要書類・期限・ペナルティ・税理士の選び方まで解説

相続税の申告と納税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。国税庁「令和5年分相続税の申告事績の概要」によると、相続税の課税割合は9.9%と過去最高を記録しており、相続税は一部の資産家だけの問題ではなくなりつつあります。申告期限を過ぎると無申告加算税や延滞税といったペナルティが発生し、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が適用できなくなるリスクもあるでしょう。この記事では、相続税申告の流れや必要書類、期限に間に合わない場合の対処法、税理士の選び方まで解説します。
相続税の申告が必要な人・不要な人の判断基準

相続税の申告は、遺産の課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合に必要となります。
相続税の基礎控除額は、以下の計算式で求められます。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
例えば、配偶者と子ども2人が法定相続人の場合、基礎控除額は「3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円」となり、遺産の課税価格がこの金額以下であれば申告も納税も不要です。
一方、注意しなければならないのが「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を適用して相続税がゼロになるケースでしょう。これらの特例を使って結果的に納税額がゼロになる場合でも、特例の適用を受けるためには期限内に申告書を提出しなければなりません。
相続税の申告期限は「10か月以内」

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内と定められています。
例えば、1月6日に被相続人が亡くなった場合、その年の11月6日が申告期限となります。期限日が土曜日・日曜日・祝日に当たる場合は、その翌日が期限です。
「10か月」は長いようで短い
10か月という期間は余裕があるように感じるかもしれませんが、実際にはやるべきことが多く、時間的に厳しくなるケースが少なくありません。相続発生後に必要な主な手続きの流れは以下のとおりです。
・死亡届の提出(7日以内)
・年金・保険の届出
・相続人の確定(戸籍の収集)
・相続財産の調査と評価
・相続放棄の判断(3か月以内)
・準確定申告(4か月以内)
・遺産分割協議
・相続税の申告・納付(10か月以内)
特に戸籍の収集には1~2か月、遺産分割協議も合意に至るまで数か月かかることがあるため、四十九日の法要が終わったら速やかに準備を始めるのが望ましいでしょう。
相続税の申告書の提出先と提出方法

相続税の申告書は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に提出します。
提出先は「相続人の住所地」ではなく「被相続人の住所地」を管轄する税務署である点に注意が必要です。例えば、被相続人が大阪に住んでいて相続人が東京に住んでいる場合、申告書は大阪の税務署に提出することになります。
提出方法は3つ
申告書の提出方法には、以下の3つの選択肢があります。
・e-Tax(電子申告):パソコンからインターネット経由で提出できる方法。国税庁によると、令和5年度のe-Tax利用率は37.1%まで上昇しています
・郵送:税務署宛に郵便または信書便で送付する方法。消印日が提出日として扱われます
・税務署窓口への持参:平日8時30分~17時の受付時間内に直接提出する方法。閉庁日は時間外収受箱への投函も可能
相続税の申告に必要な書類

相続税の申告では、申告書のほかに複数の添付書類が求められます。
必要書類は「全員に共通する書類」と「財産の種類に応じた書類」の2つに分けて整理するとわかりやすくなります。
全員に共通して必要な書類
・相続税の申告書(第1表~第15表):国税庁のホームページからダウンロードするか、最寄りの税務署で入手可能
・被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの連続したもの):2024年3月以降は広域交付制度により最寄りの役所で請求できるようになりました
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員のマイナンバー確認書類の写し
・遺産分割協議書の写し(遺言書がない場合)と相続人全員の印鑑証明書(原本)
・遺言書の写し(遺言書がある場合)
財産の種類に応じて必要な書類
・預貯金:金融機関の残高証明書(相続開始日時点のもの)
・不動産:固定資産税評価証明書、登記事項証明書(全部事項証明書)
・有価証券:証券会社の残高証明書
・生命保険:保険金の支払通知書
・債務・葬式費用:借入金の残高証明書、葬儀費用の領収書など
なお、平成30年(2018年)以降、税務署への提出書類は大半がコピーで問題ありません。原本の提出が必要なのは印鑑証明書のみとされています。書類の収集には1~1.5か月程度かかることが多いため、早めに取りかかることをおすすめします。
相続税の納付方法と注意点

相続税の納付期限は、申告期限と同じく被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
主な納付方法は以下のとおりとなっています。
・金融機関・税務署窓口での現金納付:納付書を添えて窓口で支払う方法
・e-Tax(電子納税):インターネットバンキング等を利用した納付
・クレジットカード納付:専用のWebサイトから手続き可能。ただし決済手数料が別途発生します
・コンビニ納付:QRコードを利用して納付可能(30万円以下の場合)
相続税は原則として現金で一括納付しなければなりません。しかし、一括での納付が難しい場合には「延納」(分割払い)や「物納」(相続財産での納付)といった特別な制度も用意されています。いずれも申告期限までに税務署への申請と許可が必要です。
申告期限を過ぎた場合のペナルティ

相続税の申告・納付が期限に間に合わなかった場合、本来の税額に加えてペナルティが課されます。
無申告加算税
申告期限までに申告書を提出しなかった場合に課される税金で、税率は申告のタイミングによって異なります。
・税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合:5%
・税務調査の通知後に申告した場合:50万円以下の部分は15%、50万円超300万円以下の部分は20%
・令和6年1月1日以降に申告期限が到来するものは、300万円超の部分に30%の税率が適用されます(令和5年税制改正)
延滞税
納付期限を過ぎて税金を納めた場合に、利息に相当する金額として課されます。令和8年(2026年)の税率は以下のとおりです。
・納期限の翌日から2か月以内:年2.8%
・2か月を経過した日以後:年9.1%
重加算税
財産を意図的に隠したり、書類を偽装したりするなど悪質なケースに課されるペナルティです。過少申告の場合は35%、無申告の場合は40%と、他の加算税に比べて格段に重い税率が適用されます。
出典:国税庁「No.9205 延滞税について」/国税庁「相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
申告期限までに遺産分割がまとまらない場合の対処法

遺産分割協議が期限内にまとまらなくても、相続税の申告期限は原則として延長されません。
このような場合は、「未分割申告」として法定相続分で遺産を取得したものと仮定して申告・納税を行います。ただし、未分割の状態では配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が適用できないため、一時的に税額が高くなることがあります。
その際、申告書と一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくと、3年以内に遺産分割がまとまった時点で特例を適用し、払い過ぎた相続税の還付を受けることが可能です。この手続きを「更正の請求」といいます。
出典:国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」
相続税申告を依頼する税理士の選び方

相続税の申告は自分で行うことも可能ですが、財産評価の複雑さや特例適用の判断を考えると、専門家に依頼するのが現実的でしょう。
税理士を選ぶ際のチェックポイント
税理士選びで重要なのは、相続税申告の経験が豊富かどうかという点です。税理士試験において相続税は選択科目であり、すべての税理士が相続税に精通しているわけではありません。以下のポイントを確認してみてください。
・相続税申告の年間実績:年間の申告件数が多い事務所ほど、さまざまなケースに対応した知識とノウハウを持っている傾向にあります
・土地や不動産の評価に強いか:相続財産に占める不動産の割合は依然として高く(国税庁の統計で土地・家屋あわせて約36.5%)、評価方法によって税額が大きく変わることがあります
・税務調査への対応力:国税庁の統計では、実地調査が行われた場合の申告漏れ発覚率は84.2%(令和5事務年度)に上ります。税務調査への立会い経験があるかも重要な判断材料です
・報酬体系の透明性:相続税申告の税理士報酬は事務所によって異なるため、事前に見積もりを取り、追加費用の有無を確認しておきましょう
・初回相談が無料かどうか:相続税に特化した税理士事務所の多くは、初回の面談を無料で実施しています
税理士に依頼するタイミング
税理士への依頼は、遅くとも申告期限の3~4か月前までに行うのが理想です。書類の収集や財産評価、特例適用の検討には一定の時間がかかるため、依頼が遅くなるほど対応が難しくなります。相続発生から2~3か月以内に初回相談を行うのが目安となるでしょう。
まとめ:相続税の申告は早めの準備と正確な手続きがカギ
相続税の申告について、押さえておきたいポイントを整理します。
・申告・納付の期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内
・遺産の課税価格が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合に申告が必要
・特例適用で税額がゼロになっても、申告書の提出は必須
・提出先は被相続人の住所地を管轄する税務署(相続人の住所地ではない)
・期限を過ぎると無申告加算税(最大30%)や延滞税(年9.1%)が発生
・遺産分割がまとまらない場合は「未分割申告」と「分割見込書」で対応
相続税の課税割合は年々上昇しており、令和5年分は9.9%と約10人に1人が課税対象となっています。相続が発生したら、できるだけ早い段階で書類の収集に着手し、必要に応じて相続税に強い税理士への相談を検討してみてください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
金子賢司へのライティング・監修依頼はこちらから。ポートフォリオもご確認ください。



