生命保険
相続税は約9割の世帯にはかからない|基礎控除の仕組みと、本当に対策が必要なケースの見極め方

「相続税対策に生命保険が有効」という情報を見聞きし、対策を急がなければと感じている方は多いでしょう。しかし、国税庁の令和5年分統計によると、相続税が課税された被相続人は全死亡者の約9.9%にとどまります。つまり約9割の世帯では相続税はかかっていません。対策を検討する前にまず確認すべきは、「そもそも自分の家庭に相続税がかかるのかどうか」という基礎控除の計算です。この記事では、基礎控除の仕組みと課税の有無の判断方法、そして本当に対策が必要なケースにおける生命保険の活用法を整理します。
出典:国税庁「令和5年分 相続税の申告事績の概要」
まず確認|相続税の基礎控除で「課税されるかどうか」を判断する

相続税には基礎控除があり、遺産の総額がこの基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。申告も不要です。
基礎控除額の計算式
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
・配偶者と子ども1人の場合:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
・配偶者と子ども2人の場合:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
・配偶者と子ども3人の場合:3,000万円+600万円×4人=5,400万円
遺産の総額(預貯金+不動産の評価額+有価証券+生命保険金−債務・葬式費用)がこの基礎控除額を超えない限り、相続税は課税されません。まずは家庭の財産状況をおおまかに把握し、基礎控除額と比較することが第一歩です。
出典:国税庁「No.4152 相続税の計算」
課税割合は約9.9%|ただし地域差がある

国税庁の令和5年分統計によると、死亡者数1,576,016人のうち相続税の課税対象となったのは155,740人(課税割合9.9%)です。約10人に1人の割合であり、大多数の世帯では相続税は発生していません。
ただし、この課税割合には地域差があります。令和4年分のデータでは、課税割合が最も高いのは東京都(18.7%)、次いで愛知県(15.1%)、神奈川県(14.3%)です。都市部は地価が高いため、自宅の土地だけで基礎控除額を超えるケースがあり得ます。都市部に持ち家がある方は、基礎控除額との比較を慎重に行う必要があるでしょう。
本当に対策が必要なケース|基礎控除を超える可能性がある世帯

基礎控除額を超える可能性がある場合に、初めて相続税対策を検討する段階に入ります。以下のいずれかに該当する場合は、遺産総額が基礎控除を超える可能性があるため確認が必要です。
・都市部に持ち家がある:土地の相続税評価額(路線価基準)が高い地域では、自宅だけで数千万円の評価になることがある
・預貯金・有価証券が多い:金融資産は額面どおり評価されるため、基礎控除額を超えやすい
・法定相続人が少ない:法定相続人が1人の場合、基礎控除額は3,600万円にとどまる
・退職金・生命保険金の受取が多い:これらも相続財産に算入される(ただし非課税枠あり)
逆に、賃貸住まいで金融資産も基礎控除額以下という世帯であれば、相続税対策としての生命保険加入は不要である可能性が高いでしょう。
基礎控除を超える場合の生命保険の活用法

基礎控除を超える見込みがある場合に限り、生命保険は有効な相続税対策の手段となります。
生命保険金の非課税枠
死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。この非課税枠の範囲内であれば、受け取った保険金に相続税はかかりません。
・法定相続人2人の場合:1,000万円が非課税
・法定相続人3人の場合:1,500万円が非課税
預貯金をそのまま相続すれば全額が課税対象ですが、預貯金の一部で生命保険に加入し、非課税枠の範囲内で保険金として受け取ることで、その分の相続税を軽減できます。
出典:国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
納税資金の確保
相続財産の大部分が不動産の場合、相続税の支払いに充てる現金が不足するケースがあります。相続税は原則として現金一括納付であるため、不動産を売却して納税資金を確保しなければならない事態も起こり得るでしょう。生命保険金は被保険者の死亡後すぐに現金で受け取れるため、納税資金を事前に確保する手段として活用できます。
契約形態による税金の違いに注意
生命保険金にかかる税金は、契約者・被保険者・受取人の組み合わせで変わります。
・契約者=被保険者、受取人が相続人→相続税(非課税枠が適用される)
・契約者=受取人≠被保険者→所得税(一時所得)
・契約者≠被保険者≠受取人→贈与税(税負担が最も重い)
非課税枠を活用するには「契約者=被保険者」の契約形態にすることが前提です。契約時に名義設計を誤ると、相続税の非課税枠が使えず、かえって税負担が重くなる可能性があります。
まとめ|「対策が必要かどうか」を先に確認する
相続税対策を検討する前に、まず基礎控除額の計算で「課税されるかどうか」を確認することが最も重要なステップです。
・相続税の課税割合は約9.9%(令和5年分)。約9割の世帯には相続税がかからない
・基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数。遺産総額がこの額以下なら非課税
・ただし都市部は地価が高いため、持ち家がある場合は基礎控除を超える可能性がある
・基礎控除を超える場合、生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が有効
・非課税枠を使うには「契約者=被保険者」の契約形態が前提。名義設計を誤ると税負担が増える
・不動産が多く現金が少ない場合は、生命保険で納税資金を事前に確保する方法も有効
・相続税がかからない世帯が生命保険に加入する意味は、税対策ではなく「遺族の生活費確保」
まずは家庭の財産状況をおおまかに把握し、基礎控除額と比較するところから始めましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



