火災保険
火災保険の全損・半損・一部損とは?知らないと損する判定基準と申請の注意点

火災や自然災害で建物に被害が出た場合、火災保険の補償は「全損」「半損」「一部損」といった区分で判定されます。ただし、地震保険のように全国共通の割合基準があるわけではなく、火災保険では契約内容や約款によって異なります。
本記事では、火災保険における損害判定の基本と、申請時に注意すべきポイントを解説します。
保険でいう「全損」の定義とは

火災保険の全損は、建物が居住できないほど大きな損害を受けた状態を指します。法律で一律の基準は定められていませんが、一般的には以下のケースが該当します。
・建物の主要構造部(柱・屋根・壁など)が焼失して居住が不可能になった場合
・修復費用が保険金額または時価評価額の大部分(一般的には80%以上)を超える場合
一方で「時価評価額の70%以上」といった割合基準は、地震保険における損害区分の基準です。火災保険の全損判定は、契約ごとに異なる点を押さえておきましょう。
「半損」「一部損」の定義と具体的な例

半損は、建物が大きな損害を受けたものの、全損とまではならない状態を指します。例えば、主要構造部の一部が損壊し、修復は可能だが高額な修理費が必要となるケースです。
一部損は、修理により使用可能な状態に戻せる部分的な損害です。例としては以下のようなものがあります。
・壁や天井の一部が焦げただけ
・窓ガラスやドアなどの建具の破損
半損や一部損では、修理可能性や費用の大きさによって補償額が変わります。どの程度の損害が認められるかは契約内容によって異なるため、約款を確認しておくことが大切です。
損害の程度を判断する基準と注意点

火災保険の損害判定は、保険会社が委託する鑑定人によって行われ、以下の点が重視されます。
・建物の主要構造部がどの程度損傷しているか
・修理費用と保険金額の関係
・居住可能性(生活できる状態かどうか)
火災保険は実損払い方式が基本です。例えば、修理費が300万円かかる場合、保険金額が500万円なら300万円が支払われますが、保険金額が200万円の場合は200万円が上限となります。
申請時に必要な書類と準備

適正な補償を受けるためには、申請時に次のような資料を準備することが重要です。
・被害状況の写真(複数の角度から撮影)
・修理業者の見積書
・被害が発生した日時の記録
これらを揃えることで、鑑定や審査がスムーズになり、適切な補償を受けやすくなります。
統計で見る火災被害の現状

総務省消防庁の統計によると、令和5年(2023年)の総出火件数は38,672件、うち住宅火災は12,112件でした。火災による死者は1,503人(放火自殺者を除くと1,266人)で、そのうち65歳以上の高齢者が762人(約75%)を占めています。
高齢者世帯を中心に火災リスクが高いことがわかり、火災保険の理解と備えがますます重要であるといえます。
出典:総務省消防庁
まとめ:損害判定を正しく理解して備える
火災保険の全損・半損・一部損は、全国共通の割合基準があるわけではなく、保険会社ごとの約款に基づいて判定されます。契約内容を確認し、いざという時に備えて写真や見積書を準備しておくことが重要です。
また、地震や津波による被害は火災保険の対象外のため、必要に応じて地震保険の加入も検討すると安心です。
正しい知識と備えが、万一の際に適切な補償につながります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。