火災保険
火災保険の「時価」と「新価(再調達価額)」の違いとは?古い契約の見直しが必要な理由と保険料改定の動向

火災保険の補償額は、建物や家財の評価方法によって大きく変わります。現在の火災保険は新価(再調達価額)方式が主流ですが、1998年の保険料率自由化以前や2000年頃までに契約した長期火災保険は「時価契約」のまま継続されているケースが少なくありません。時価契約では、火災や自然災害で住宅が全損した場合でも再建費用の半分程度しか補償されない可能性があります。さらに2024年10月には参考純率が全国平均で13.0%引き上げられ、火災保険を取り巻く環境は大きく変化しました。この記事では、時価と新価の違いを整理したうえで、古い契約の見直しが必要な理由と保険料改定の最新動向を説明していきます。
火災保険の「時価」と「新価(再調達価額)」の違い

火災保険で保険金額を設定する際、建物や家財の評価方法には「時価」と「新価」の2つがあり、どちらを選ぶかで受け取れる保険金額に差が生じます。
時価とは
時価とは、建物や家財の現在の市場価値を指します。購入・建築時の価格から、経年による劣化(減価償却)分を差し引いた金額で評価されるため、築年数が経過するほど評価額は下がります。たとえば、新築時に2,000万円だった住宅でも、築20年の時価評価は1,000万円程度に下がることも珍しくありません。
新価(再調達価額)とは
新価(再調達価額)とは、同等の建物や家財を現時点で新たに購入・建築するために必要な金額です。減価償却を差し引かないため、築年数に関わらず再建・再取得に必要な実費に近い補償を受けられます。中古住宅の場合でも、「同規模・同程度の住宅を再建するために必要な金額」が新価として設定されるため、「築年数が古いから補償額が少なくなる」ということはありません。
具体例で比較する
新築時2,000万円の住宅が築20年で火災により全損した場合を考えましょう。
・時価契約の場合:減価償却後の評価額(例:約1,000万円)が保険金額の上限。再建費用との差額は自己負担
・新価契約の場合:同等の住宅を再建するための費用(例:2,000万円、物価上昇を反映すればそれ以上)が保険金額の基準
同じ火災でも時価契約では再建費用の半分程度しか補償されない可能性があり、残りは自己負担になります。
出典:総務省消防庁 防災・危機管理eカレッジ「火災保険加入の際の注意点(2)」
古い火災保険契約を見直すべき理由

現在販売されている火災保険は新価方式が標準であり、多くの保険会社で時価契約の新規受付は停止されています。しかし、過去に契約した長期火災保険がそのまま継続されていると、気づかないうちに補償が不十分な状態になっている場合があります。
時価契約が残っている可能性がある契約
特に確認が必要なのは、以下のような契約です。
・1998年の保険料率自由化以前に契約した火災保険
・2000年頃までに契約した長期火災保険(最長36年契約も存在)
・住宅ローン契約時に銀行経由で一括加入した火災保険で、その後一度も見直していないもの
保険証券には「時価」か「新価(再調達価額)」かが記載されていますので、まずは契約内容を確認しましょう。
物価上昇で再調達価額は上昇している
たとえ新価契約であっても、建築資材や人件費の上昇により、契約時に設定した保険金額では現在の再建費用をカバーできなくなっている可能性があります。20年前に2,000万円で建築した住宅でも、現在同等の住宅を再建するには2,500万円程度必要になるケースも珍しくありません。契約時の保険金額が現在の再調達価額に対して不足していないか、定期的に確認することが重要です。
地震保険にも影響する
地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲で設定されます。火災保険が時価契約で保険金額が低い場合、それに連動する地震保険の保険金額も低くなり、大規模地震で住宅が全壊しても十分な補償を受けられないリスクがあります。
一部保険・超過保険に注意|保険金額の過不足はどちらも不利になる

火災保険は保険金額の設定が適正であることが前提の仕組みです。保険金額が再調達価額に対して過不足がある場合、どちらも不利になります。
一部保険(保険金額が不足しているケース)
再調達価額2,000万円の建物に対して保険金額を1,000万円で契約した場合、「比例てん補」が適用されます。実際に500万円の損害が発生しても、保険金は500万円×(1,000万円÷2,000万円)=250万円しか支払われません。損害額の全額が補償されないため、自己負担が大きくなります。
超過保険(保険金額が過大なケース)
再調達価額2,000万円の建物に3,000万円の保険金額で契約しても、支払われる保険金は実際の損害額が上限です。超過分の1,000万円に対応する保険料は無駄になります。
いずれの場合も、保険金額を再調達価額と一致させる「全部保険」が基本です。なお、現在主流の実損払い方式の商品では比例てん補が適用されないものもありますが、古い契約では比例てん補方式が残っている場合があるため注意しましょう。
火災保険料の改定動向|参考純率13.0%引き上げと水災料率の細分化

火災保険を取り巻く環境は近年大きく変化しています。契約の見直しにあたっては、保険料改定の動向も把握しておきましょう。
2024年10月の参考純率改定
損害保険料率算出機構は2023年6月、火災保険の参考純率を全国平均で13.0%引き上げると発表しました。この改定は過去10年間で5回目であり、過去最大の引き上げ幅です。各損害保険会社はこの参考純率を踏まえ、2024年10月に保険料の改定を実施しています。
出典:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」
水災料率の5段階細分化
今回の改定では、これまで全国一律だった水災料率が市区町村単位で5等地に細分化されました。水災リスクの低い地域(1等地)から高い地域(5等地)まで、最大で約1.2倍の料率格差が生じる仕組みです。自身の住所がどの等地に該当するかは、損害保険料率算出機構の「水災等地検索」で確認できます。
契約期間も短縮されている
火災保険の最長契約期間は、2022年10月以降最長5年に短縮されています(それ以前は最長10年、さらに古い契約では最長36年)。契約更新のたびに改定後の保険料が適用されるため、保険料負担の増加は避けられない状況です。
まとめ|時価契約・保険金額の過不足を確認し、定期的な見直しを
火災保険は「入っているから安心」ではなく、評価方法と保険金額が適正かどうかが補償の実効性を左右します。
・時価契約では減価償却分が差し引かれ、再建費用の半分程度しか補償されない可能性がある
・新価(再調達価額)契約が現在の主流。同等の建物を再建するために必要な金額が補償される
・1998年以前や2000年頃までの長期契約は時価契約のまま残っている可能性がある。保険証券を確認する
・物価上昇により、契約時の保険金額では再建費用が不足するケースが増えている
・火災保険が時価契約の場合、地震保険の保険金額も連動して低くなる
・保険金額の不足(一部保険)は損害の全額が補償されず、過大(超過保険)は保険料の無駄。再調達価額と一致させるのが基本
・2024年10月に参考純率が全国平均13.0%引き上げ。水災料率は市区町村単位で5段階に細分化
特に2000年以前に契約し長期間見直していない方は、保険証券で「時価」か「新価」かを確認し、保険金額が現在の再調達価額に見合っているかを早めにチェックしましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



