税金(一般的な内容)
所得税の「10種類の所得」とは?それぞれの計算方法・課税方式の違いをわかりやすく解説

所得税法では、個人の所得をその性質に応じて10種類に区分し、それぞれ異なる計算方法と課税方式を定めています。会社員の給与も、年金も、株の売却益も、すべて「所得」ですが、種類によって税金の計算方法がまったく異なるため、正しく理解しておくことが確定申告や節税対策の第一歩です。この記事では、10種類の所得それぞれの内容と計算方法、課税方式の違いまで解説します。
なぜ所得は10種類に分けられているのか

所得税は所得の発生形態に応じて10区分に分類され、それぞれに応じた課税方法が定められています。
所得税法が所得を10種類に区分しているのは、所得の性質に応じて公平に課税するためです。たとえば、長年働いた結果受け取る退職金と、毎月の給与では、同じ金額であっても担税力(税金を負担する能力)が異なると考えられています。退職金は長期間にわたる勤務の対価であり、老後の生活資金でもあるため、税負担が軽くなる仕組みが設けられているのはこうした理由によるものです。
また、所得の種類によって「総合課税」と「分離課税」という2つの課税方式に分かれる点も重要なポイントとなっています。総合課税は複数の所得を合算して累進税率を適用する方式で、分離課税は他の所得と分けて一定の税率で課税する方式を指します。
【1】利子所得:預貯金や公社債の利子に係る所得

利子所得は、預貯金の利子や国債・社債などの公社債の利子から生じる所得です。
利子所得の計算は「収入金額=利子所得の金額」とシンプルで、必要経費を差し引くことはできません。銀行の普通預金や定期預金の利子、国債や社債の利子のほか、公社債投資信託の収益分配金なども利子所得に該当します。
利子所得の課税方式
国内の銀行預金の利子は、源泉分離課税の対象となり、所得税15.315%と住民税5%の合計20.315%が源泉徴収されることで課税関係が完結します。確定申告は不要で、他の所得と合算されることもありません。
【2】配当所得:株式の配当金や投資信託の分配金に係る所得

配当所得は、株主や出資者が法人から受ける配当や、投資信託の収益分配金に係る所得です。
配当所得の計算式は「収入金額-株式等の取得のために要した負債の利子=配当所得の金額」となります。株式投資のために借入れをした場合、その利子を差し引くことが可能です。
配当所得の課税方式
上場株式の配当は、総合課税・申告分離課税・申告不要の3つから選択できます。総合課税を選ぶと配当控除が適用されるメリットがある一方、所得が多い場合は申告分離課税(税率20.315%)を選んだ方が有利になるケースもあるでしょう。
【3】不動産所得:土地や建物の貸付けによる所得

不動産所得は、土地や建物、借地権などの不動産の貸付けから生じる所得です。
計算式は「総収入金額-必要経費=不動産所得の金額」となります。家賃収入や地代、礼金・更新料などが収入に含まれ、固定資産税、減価償却費、修繕費、管理費、ローンの利子などが必要経費として認められます。
不動産所得の課税方式と損益通算
不動産所得は総合課税の対象であり、給与所得など他の所得と合算して累進税率が適用されます。赤字が出た場合は、原則として他の所得と損益通算(相殺)できる点がメリットです。ただし、土地取得のための借入金利子に相当する部分は損益通算の対象外となる点に注意が必要でしょう。
出典:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
【4】事業所得:事業から生じる所得

事業所得は、農業・漁業・製造業・小売業・サービス業などの事業活動から生じる所得です。
計算式は「総収入金額-必要経費=事業所得の金額」となります。個人事業主やフリーランスの収入が該当し、青色申告の承認を受けている場合は最大65万円の青色申告特別控除を受けられるため、節税効果が見込めます。
事業所得と雑所得の違い
副業収入が事業所得と雑所得のどちらに該当するかは、税務上の取扱いに影響を与える重要な問題です。国税庁は、その活動が「社会通念上、事業と称するに至る程度で行っているか」を判断基準としており、反復・継続性や営利性、独立性などを総合的に判断するとされています。事業所得であれば損益通算や青色申告特別控除が活用できるため、区分の判断は慎重に行う必要があるでしょう。
出典:国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」
【5】給与所得:会社員・公務員の給料やボーナスに係る所得

給与所得は、俸給・給料・賃金・賞与など、勤務先から受け取る給与に係る所得です。
計算式は「収入金額(年収)-給与所得控除額=給与所得の金額」となります。給与所得控除とは、会社員の「みなし経費」に相当する控除で、収入金額に応じて段階的に設定されています。令和7年度税制改正により、給与所得控除の最低保障額は55万円から65万円に引き上げられました。
給与所得控除額の目安
給与所得控除の計算は収入金額に応じて異なり、たとえば年収500万円の場合は144万円、年収800万円の場合は190万円が控除されます。上限は年収850万円超で195万円です。多くの会社員は年末調整で所得税の精算が完了するため、原則として確定申告は不要となります。
【6】退職所得:退職金や一時金に係る所得

退職所得は、退職により勤務先から受け取る退職手当や、確定拠出年金の一時金などに係る所得です。
計算式は「(収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額」となります。退職所得控除額は、勤続年数20年以下の部分が1年あたり40万円、20年超の部分が1年あたり70万円で計算されます。たとえば勤続30年の場合、退職所得控除額は800万円+70万円×10年=1,500万円です。
退職所得の課税方式
退職所得は申告分離課税が適用され、他の所得と合算されません。退職金は長期間の勤務に対する報酬であり、老後の生活資金としての性格を持つことから、「退職所得控除」と「1/2課税」という二重の優遇措置が設けられています。なお、勤続5年以下の役員等の退職金は1/2課税が適用されない点に注意が必要です。
出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
【7】山林所得:山林の伐採・譲渡による所得

山林所得は、山林を伐採して譲渡するか、立木のまま譲渡することで生じる所得を指します。
計算式は「総収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)=山林所得の金額」です。山林の取得費や管理費、伐採費用などが必要経費に該当します。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採・譲渡した場合は山林所得ではなく、事業所得または雑所得として扱われる点に注意しましょう。
山林所得の課税方式
山林所得には「5分5乗方式」という特別な計算方法が適用されます。山林の育成には長い年月がかかるため、一度に多額の所得が発生すると累進課税で税負担が過重になることから、所得金額を5分の1にした上で税率を適用し、算出された税額を5倍する方式が採用されています。
【8】譲渡所得:資産の売却による所得

譲渡所得は、土地・建物・株式・ゴルフ会員権などの資産を譲渡(売却)して得た所得です。
計算式は「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=譲渡所得の金額」となります。取得費とは資産の購入代金や購入手数料などの合計で、不明な場合は収入金額の5%を取得費とすることも認められています。
保有期間による税率の違い
土地・建物の譲渡所得は申告分離課税で、保有期間によって税率が異なります。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」は所得税15.315%+住民税5%、5年以下の「短期譲渡所得」は所得税30.63%+住民税9%です。保有期間によって税率がおよそ2倍異なるため、売却のタイミングは慎重に検討する必要があるでしょう。
出典:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
【9】一時所得:一時的な所得

一時所得は、営利目的の継続的行為から生じたものでなく、労務や資産譲渡の対価でもない一時的な所得です。
計算式は「総収入金額-収入を得るための支出額-特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額」です。具体的には、懸賞金や福引の賞金、競馬・競輪の払戻金、生命保険の一時金(満期保険金など)、法人からの贈与などが該当します。
一時所得の課税上の特徴
一時所得は総合課税の対象ですが、課税対象となるのは一時所得の金額の2分の1のみです。50万円の特別控除と合わせると、たとえば満期保険金で80万円の利益が出ても「(80万円-50万円)×1/2=15万円」しか課税対象にならない計算となります。
【10】雑所得:他のいずれにも該当しない所得

雑所得は、利子所得から一時所得までの9種類のいずれにも該当しない所得です。
雑所得は大きく「公的年金等」「業務に係るもの」「その他」の3区分に分かれます。公的年金等の場合は「収入金額-公的年金等控除額=雑所得の金額」、業務やその他の場合は「総収入金額-必要経費=雑所得の金額」で計算します。
雑所得に該当する主な収入
雑所得に該当する代表例として、老齢基礎年金や老齢厚生年金などの公的年金等、副業による原稿料やシェアリングエコノミーの収入、FX取引の利益、暗号資産(仮想通貨)の売却益、個人年金保険の年金などが挙げられます。
雑所得は損益通算ができない点が重要なポイントです。雑所得で赤字が出ても、給与所得や事業所得と相殺することはできません。また、青色申告特別控除も適用されないため、副業が事業所得に該当するか雑所得に該当するかで税負担が変わってくるケースがあります。
課税方式の違いを理解する:総合課税と分離課税

10種類の所得は、課税方式の違いによって「総合課税」と「分離課税」に大別されます。
総合課税は、対象となる所得を合算した上で累進税率(5%~45%の7段階)を適用する方式です。給与所得、事業所得、不動産所得、配当所得(選択した場合)、一時所得、雑所得が原則として総合課税の対象となります。
一方、分離課税は、他の所得と分離して一定の税率で課税する方式を指します。分離課税にはさらに2つの種類があり、源泉徴収だけで課税が完結する「源泉分離課税」(預貯金の利子など)と、確定申告で他の所得と分けて計算する「申告分離課税」(土地・建物の譲渡所得、退職所得など)があります。
所得の種類によって課税方式が異なるため、同じ金額の所得でも最終的な税額は変わります。確定申告や税金対策を考える際は、まず自分の所得がどの区分に該当するかを正しく把握することが出発点となるでしょう。
損益通算ができる所得・できない所得

所得税法では、特定の所得で赤字が出た場合に他の黒字の所得と相殺できる「損益通算」の制度があります。
損益通算が認められているのは、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つの所得に限られます。頭文字を取って「ふじさんじょう(富士山上)」と覚えると便利です。たとえば、不動産所得で赤字が出た場合は給与所得と相殺して税負担を軽減できる可能性があります。
反対に、給与所得、利子所得、配当所得、一時所得、雑所得では損益通算ができません。特に副業の赤字が雑所得に分類された場合は、本業の給与所得と相殺することができない点は押さえておきたいポイントです。
ただし、損益通算には例外もあり、生活に通常必要でない資産の譲渡損失や、土地取得のための借入金利子に相当する不動産所得の赤字などは損益通算の対象外とされているため注意が必要です。
まとめ
所得税法では所得を10種類に区分し、それぞれに応じた計算方法と課税方式を定めています。会社員であっても副業収入や不動産収入がある場合は複数の所得区分にまたがることになり、正しい区分の理解が適切な申告と節税につながります。
特に押さえておきたいのは、損益通算が可能な4つの所得(不動産・事業・山林・譲渡)の特徴と、総合課税・分離課税の違いです。これらの知識があれば、確定申告の際に「なぜこの計算になるのか」が理解でき、税理士や専門家への相談もスムーズに進むでしょう。
所得の区分について不明点がある場合は、最寄りの税務署や国税局電話相談センターに問い合わせるか、国税庁のタックスアンサーを活用してみてください。
老後の資金管理は、一度プランを立てたら終わりではありません。健康状態や生活スタイルの変化、経済環境の動向に合わせて、定期的に計画を見直していくことが、安心できる老後を過ごすための鍵となるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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