税金(一般的な内容)
所得控除と税額控除の違いとは?仕組み・節税効果・代表的な控除をわかりやすく解説

所得税の計算において、「控除」は税負担を軽くするための重要な仕組みです。控除には「所得控除」と「税額控除」の2種類があり、同じ控除額でも節税効果はまったく異なります。国税庁によると、所得控除は課税所得を減らすことで間接的に税額を下げる仕組みであり、税額控除は算出された税額から直接差し引く仕組みとされています。この違いを正しく理解しておくことが、確定申告や年末調整で損をしないための第一歩となるでしょう。この記事では、2つの控除の仕組みと節税効果の違い、代表的な控除の種類を解説します。
所得控除とは|課税所得を減らして税額を間接的に下げる仕組み

所得控除は各種所得の合計額から差し引かれるもので、課税所得金額を減らすことで結果的に税負担を軽減する。
所得控除とは、国税庁No.1100「所得控除のあらまし」によれば、「所得税額を計算するうえで、社会政策上の要請によるもの、各納税者の個人的事情への考慮や最低生活費を保障するためのものなど、税負担面での調整を行う趣旨から設けられているもの」と説明されています。
所得税の計算では、まず1年間のすべての所得金額を合計し、そこから所得控除の合計額を差し引いた残り(課税所得金額)に税率を適用して税額を算出します。所得控除は課税所得を減らす仕組みであるため、適用される税率によって実際の節税額が変わる点が特徴です。
所得控除の16種類
令和7年4月1日現在、所得控除は以下の16種類が設けられています。
・雑損控除(災害や盗難による損害がある場合)
・医療費控除(年間の医療費が一定額を超えた場合)
・社会保険料控除(年金保険料や健康保険料を支払った場合)
・小規模企業共済等掛金控除(iDeCoや小規模企業共済の掛金を支払った場合)
・生命保険料控除(生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払った場合)
・地震保険料控除(地震保険料を支払った場合)
・寄附金控除(ふるさと納税など一定の寄附をした場合)
・障害者控除(本人や扶養親族が障害者である場合)
・寡婦控除(一定の要件を満たす寡婦である場合)
・ひとり親控除(ひとり親である場合)
・勤労学生控除(勤労学生である場合)
・配偶者控除(配偶者の所得が一定以下の場合)
・配偶者特別控除(配偶者の所得が一定の範囲にある場合)
・扶養控除(16歳以上の扶養親族がいる場合)
・特定親族特別控除(19歳以上23歳未満の親族の所得が一定の範囲にある場合)※令和7年分から
・基礎控除(すべての納税者に適用)
このうち、会社員が年末調整で適用できないのは、雑損控除・医療費控除・寄附金控除の3つに限られています。これらは確定申告でのみ適用を受けることが可能です。
所得控除の節税効果は税率によって変わる
所得控除の特徴は、同じ控除額であっても適用される税率が高い人ほど節税効果が大きくなる点にあります。
たとえば、10万円の所得控除を受けた場合の実際の減税額は次のとおりです。
・課税所得が195万円以下の人(税率5%):10万円 × 5% = 5,000円
・課税所得が330万円超695万円以下の人(税率20%):10万円 × 20% = 2万円
・課税所得が900万円超1,800万円以下の人(税率33%):10万円 × 33% = 3万3,000円
このように、所得控除は高所得者ほど節税メリットが大きくなる構造になっています。これは累進課税制度のもとでは避けられない特性であり、この点が税額控除との違いを理解するうえで重要なポイントとなります。
税額控除とは|算出された税額から直接差し引く仕組み

税額控除は課税所得に税率をかけて算出した所得税額から、一定の金額を直接差し引く仕組みである。
税額控除について、国税庁No.1200「税額控除」では「課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を控除するもの」と定義しています。所得控除が「所得」を減らすのに対し、税額控除は「税額そのもの」を減らすという違いがあります。
税額控除は控除額がそのまま税金の減額につながるため、所得控除と比べて節税効果がわかりやすいのが特徴です。たとえば、税額控除が10万円であれば、税率に関係なく所得税が10万円減ることになります。
個人に関係する主な税額控除
国税庁No.1200に記載されている税額控除には事業者向けのものも多く含まれていますが、一般的な個人にとって関係の深いものは以下のとおりです。
・住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除):住宅ローンの年末残高に一定の割合をかけた金額を控除する。令和4年以降に入居した場合、控除率は0.7%で控除期間は新築住宅で最長13年間
・配当控除:総合課税を選択した配当所得がある場合、配当所得の金額の10%または5%を控除する
・外国税額控除:外国で課税された所得がある場合に、二重課税を調整するための控除
・政党等寄附金特別控除:政党への寄附をした場合、所得控除(寄附金控除)との選択適用が可能
・認定NPO法人等寄附金特別控除:認定NPO法人への寄附をした場合、所得控除との選択適用が可能
このなかで多くの方にとって最も身近なのは住宅ローン控除でしょう。住宅ローンの年末残高が3,000万円で控除率0.7%の場合、年間21万円が所得税額から直接差し引かれます。控除しきれなかった分は住民税からも一部控除されるため、節税効果の高い制度といえます。
所得控除と税額控除の違いを具体例で比較する

同じ「10万円の控除」でも、所得控除と税額控除では実際の減税額に差が生じる。
ここでは、課税所得400万円(税率20%、控除額427,500円)のケースで、所得控除10万円と税額控除10万円の効果を比較してみましょう。
所得控除10万円の場合
課税所得は400万円から10万円を差し引いて390万円になります。
・所得控除なし:400万円 × 20% − 427,500円 = 372,500円
・所得控除10万円適用後:390万円 × 20% − 427,500円 = 352,500円
・減税額:2万円(10万円 × 税率20%)
税額控除10万円の場合
税額は372,500円から直接10万円を差し引きます。
・税額控除なし:372,500円
・税額控除10万円適用後:272,500円
・減税額:10万円
同じ10万円でも、所得控除の減税効果は2万円にとどまるのに対し、税額控除では10万円がそのまま減税されることがわかります。税額控除のほうが控除額に対する節税効果が高い理由は、この仕組みの違いにあります。
寄附金控除は「所得控除」と「税額控除」のどちらかを選べるケースがある

認定NPO法人等や政党への寄附は、所得控除と税額控除の選択適用が認められている。
控除の仕組みの違いを実感しやすいのが、寄附金に関する控除制度です。一般的な寄附は所得控除のみですが、認定NPO法人等や政党への寄附については、所得控除(寄附金控除)と税額控除(特別控除)のいずれか有利な方を選べる仕組みになっています。
税額控除を選択した場合の計算式は次のとおりです。
(その年中に支出した寄附金の額の合計額 − 2,000円)× 40% = 税額控除額
一般的には、課税所得が高い人は所得控除、課税所得がそれほど高くない人は税額控除を選んだほうが有利になるケースが多いとされています。確定申告の際には、両方のパターンで計算して有利な方を選択することが可能です。
出典:国税庁「No.1263 認定NPO法人に寄附をしたとき」
ふるさと納税は「所得控除」だが住民税からも控除される特殊な仕組み
ふるさと納税は所得税では寄附金控除(所得控除)として適用され、住民税からも特例控除が受けられる。
ふるさと納税は寄附金控除として所得控除に分類されますが、その効果は所得税だけにとどまりません。住民税からも「基本控除」と「特例控除」の2段階で控除されるため、実質的な自己負担額が2,000円に収まる仕組みになっています。
控除の内訳は以下のとおりです。
・所得税からの控除:(寄附金額 − 2,000円)× 所得税率(復興特別所得税を含む)
・住民税からの控除(基本分):(寄附金額 − 2,000円)× 10%
・住民税からの控除(特例分):(寄附金額 − 2,000円)×(100% − 10% − 所得税率)
ふるさと納税が「実質2,000円」になるのは、この3段階の控除によって寄附額のほぼ全額が戻ってくるためです。ただし、控除には上限額があり、上限を超えた分は自己負担となる点には注意が必要でしょう。上限額は年収や家族構成、その他の控除の状況によって異なるため、総務省のふるさと納税ポータルサイトなどで試算しておくと安心です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は全額が所得控除の対象

iDeCoの掛金は小規模企業共済等掛金控除として全額が所得控除の対象になる。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として、支払った掛金の全額が所得控除の対象になります。生命保険料控除には上限がありますが、iDeCoの掛金にはそのような上限は設けられておらず、拠出限度額の範囲内であれば全額が控除されるのが特徴です。
たとえば、会社員(企業年金なし)が月額23,000円(年額276,000円)をiDeCoに拠出し、課税所得に対する税率が20%の場合、所得税の軽減額は276,000円 × 20% = 55,200円となります。住民税(税率10%)の軽減額27,600円を合わせると、年間で約82,800円の節税効果が見込めるでしょう。
ただし、所得控除である以上、節税効果は適用される税率によって変わります。住民税率は一律10%であるため住民税の軽減額は収入に関係なく一定ですが、所得税率が5%の人と33%の人では、同じ掛金でも所得税の軽減額には差が生じることは認識しておく必要があるでしょう。
会社員が見落としやすい控除と活用のポイント

年末調整では適用されない控除もあり、確定申告で取り戻せる税金を見逃しているケースは少なくない。
会社員の場合、基礎控除や社会保険料控除、生命保険料控除といった主要な所得控除は年末調整で自動的に反映されます。しかし、以下の控除は確定申告をしなければ適用されません。
確定申告が必要な所得控除
・医療費控除:年間の医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の場合は5%)を超えた場合に適用される。家族全員分の医療費を合算できるため、該当する方は少なくない
・雑損控除:災害や盗難で損害を受けた場合に適用される
・寄附金控除:ふるさと納税でワンストップ特例を利用していない場合や、認定NPO法人等への寄附がある場合に必要
確定申告が必要な税額控除
・住宅ローン控除(初年度):住宅を取得した初年度は確定申告が必要。2年目以降は年末調整で適用できる
・寄附金の税額控除:認定NPO法人等への寄附で税額控除を選択する場合
特に医療費控除は、入院費や歯科治療費、通院のための交通費なども対象となるため、領収書を1年間まとめて確認すると10万円を超えていたというケースは珍しくありません。年末調整だけで終わらせず、確定申告で追加の控除を受けられないかを毎年チェックしておく習慣が、結果的に家計の節約につながります。
まとめ|所得控除と税額控除の違いを理解して適切に活用する
所得控除は「課税所得から差し引く」仕組みで、税率によって節税効果が変わります。一方、税額控除は「税額から直接差し引く」仕組みで、控除額がそのまま減税額に反映されるという違いがあります。
日常的に関わる機会が多いのは所得控除のほうですが、住宅ローン控除のように税額控除が適用されるケースでは、その節税効果は所得控除を上回ることもあるでしょう。いずれの控除も、制度を知っているかどうかで実際に支払う税額が変わるという点では共通しています。
特に確定申告が必要な控除については、適用を忘れてしまうと還付を受けられません。年末調整で処理されない医療費控除や寄附金控除、住宅ローン控除の初年度などは、確定申告で忘れずに申告することが節税の基本といえるでしょう。控除制度の詳細や最新の改正情報については、国税庁のタックスアンサーで確認しておくとよいでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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