家計管理
急騰する教育費・子育て費用への対処法|物価上昇時代の家計防衛策

食料品や光熱費の値上がりが家計を圧迫する中、教育費や子育て費用の負担も年々重くなっています。文部科学省の最新調査では、公立高校の学習費が前回調査比で約8万5千円増加し、過去最高を記録しました。しかし一方で、2024年10月からは児童手当が大幅に拡充され、所得制限の撤廃や高校生までの支給対象拡大など、子育て世帯への支援も手厚くなっています。
本記事では、総務省統計局や文部科学省、こども家庭庁などの公的機関が発表した最新データに基づき、ここ数年の物価上昇や教育費値上げの実態と、それに対する具体的な対処法を解説します。利用できる公的支援制度の活用方法から、家計見直しのポイント、教育資金の計画的な準備方法まで、実践的な情報をお届けします。
深刻化する物価上昇の実態

近年の物価上昇は子育て世帯の家計に大きな影響を及ぼしています。総務省統計局が発表した2024年度の消費者物価指数(総合)は前年度比3.0%上昇しており、特に食料品の値上がりが顕著です。
出典:総務省統計局「2020年基準消費者物価指数 2024年度平均」
2024年度の費目別上昇率を見ると、日々の生活に直結する項目で特に大きな値上がりが見られました。
・食料:前年度比5.0%上昇
・光熱・水道:前年度比7.8%上昇
食料の中でも特に上昇率が高かったのは以下の項目です。
・穀類:前年度比12.4%上昇
・生鮮野菜:前年度比16.0%上昇
・生鮮果物:前年度比13.5%上昇
成長期の子どもを持つ家庭では、これらの値上がりが家計を直撃する形となっています。
教育費の現状

学習費の実態
文部科学省が2024年12月25日に公表した「令和5年度子供の学習費調査」によると、保護者が1年間に負担する学習費総額は公立・私立ともに多くの学校種で過去最高水準に達しました。
【令和5年度の学習費総額】
・公立幼稚園:年間18万4,646円(前回16万5,126円)
・私立幼稚園:年間34万7,338円(前回30万8,909円)
・公立小学校:年間33万6,265円(前回35万2,566円)
・私立小学校:年間182万8,112円(前回166万6,949円)
・公立中学校:年間54万2,475円(前回53万8,799円)
・私立中学校:年間156万359円(前回143万6,353円)
・公立高等学校:年間59万7,752円(前回51万2,971円)
・私立高等学校:年間103万283円(前回105万4,444円)
特に公立高校では前回調査比で8万4,781円の増加となっており、コロナ明けによる活動再開や物価上昇が背景にあります。
15年間の教育費総額
幼稚園3歳から高等学校卒業までの15年間でかかる学習費総額は、以下の通りとなっています。
・すべて公立に通った場合:約596万円
・すべて私立に通った場合:約1,976万円
公的支援制度の活用

児童手当の大幅拡充
2024年10月から児童手当が大幅に拡充されており、子育て世帯にとって重要な支援となっています。
【改正の4つのポイント】
・所得制限の完全撤廃
・支給対象を高校生年代(18歳の誕生日後最初の3月31日)まで拡大
・第3子以降は0歳から高校卒業まで月額3万円に増額
・支給回数を年3回から年6回(偶数月)に増加
児童手当の支給額
2024年10月以降の支給額は以下の通りです。
・3歳未満:月額15,000円
・3歳以上~小学校修了前:第1子・第2子は月額10,000円、第3子以降は月額30,000円
・中学生:第1子・第2子は月額10,000円、第3子以降は月額30,000円
・高校生年代:第1子・第2子は月額10,000円、第3子以降は月額30,000円
児童手当の総額
児童手当を0歳から高校卒業まで全額貯蓄した場合の総額は以下の通りです。
第1子・第2子の場合:約234万円
・0歳~3歳未満:15,000円×36ヶ月=54万円
・3歳~小学校修了:10,000円×108ヶ月=108万円
・中学生:10,000円×36ヶ月=36万円
・高校生:10,000円×36ヶ月=36万円
第3子以降の場合:約594万円
・0歳~3歳未満:15,000円×36ヶ月=54万円
・3歳~小学校修了:30,000円×108ヶ月=324万円
・中学生:30,000円×36ヶ月=108万円
・高校生:30,000円×36ヶ月=108万円
これまで所得制限で受給できなかった世帯も、2024年10月分からは支給対象となりました。該当する方は必ず市区町村への申請を行いましょう。
その他の支援制度
児童手当以外にも以下の支援制度を活用できます。
・就学援助制度:経済的理由で就学困難な児童生徒の保護者に学用品費や給食費などを援助
・高等学校等就学支援金:授業料の支援制度
・自治体独自の子育て支援:給食費無償化など地域によって様々な支援が実施されている
お住まいの市区町村の窓口やホームページで詳細を確認することをお勧めします。
家計の見直しポイント

固定費の削減
月々の支出を抑える上で、まず見直すべきは固定費となります。
・通信費:格安SIMへの切り替えで月数千円の節約が可能
・保険料:必要保障額を見直し、重複している保障を整理
・サブスクリプションサービス:利用頻度の低いサービスの解約を検討
これらの見直しにより、年間で数万円から十数万円の削減が実現できることもあります。
食費の効率化
値上がりが続く食費も工夫次第で抑えることが可能となります。
・週に一度のまとめ買いで無駄な買い物を防ぐ
・旬の食材を活用してコストを抑える
・冷凍保存を活用して食材のロスを減らす
・プライベートブランド商品の積極的な活用
栄養バランスを保ちながら支出を抑えることが大切です。
教育費の計画的な準備
教育費は将来に向けて計画的に準備することが重要です。
・児童手当を全額貯蓄に回す
・学資保険やつみたてNISAなど税制優遇制度の活用
・奨学金制度の事前確認
児童手当を全額貯蓄することで、第1子・第2子で約234万円、第3子以降で約594万円の教育資金を準備できます。
収入増加への取り組み

スキルアップと副業
支出削減だけでなく、収入を増やす視点も重要となります。
・資格取得によるキャリアアップ
・在宅でできる副業の検討
・配偶者の就労時間の見直し
ただし、副業を始める際は本業への影響や税金面での注意が必要です。年間20万円を超える副業収入がある場合は確定申告が必要となります。
長期的な資産形成

つみたてNISAの活用
教育資金の準備には、つみたてNISA制度の活用が有効な選択肢となります。年間40万円まで、最長20年間の投資が非課税です。
長期・積立・分散投資の原則に基づき、無理のない範囲で資産形成を行うことで、インフレに対応した教育資金の準備が可能となります。
注意すべきポイント
投資には元本割れのリスクがあります。使用時期が明確な教育資金については、以下の点に注意が必要です。
・使用時期の5年前には低リスク資産への移行を検討
・必要資金の全額を投資に回さない
・緊急時に備えた現金も確保しておく
まとめ
物価上昇が続く中、教育費や子育て費用の負担は増加しています。しかし、2024年10月からの児童手当拡充をはじめとする公的支援制度の充実により、以前より家計への支援は手厚くなっているのも事実です。
重要なのは、利用できる支援制度を確実に活用し、家計の無駄を見直し、計画的に教育資金を準備していくこととなります。短期的な節約だけでなく、長期的な視点での資産形成も併せて検討することで、物価上昇に負けない家計管理が実現できます。
家計の状況は各世帯で異なりますので、必要に応じてファイナンシャルプランナーなど専門家への相談も検討されることをお勧めします。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
金子賢司へのライティング・監修依頼はこちらから。ポートフォリオもご確認ください。



