生命保険
差額ベッド代は払う必要ない?相場と保険適用の可否、賢く備える方法を徹底解説

この記事では、知っておきたい差額ベッド代の基本知識から、費用を支払う必要がないケース、万が一のトラブルへの対処法、そして高額な自己負担に備えるための医療保険活用術まで、入院費用を賢く節約するための情報を分かりやすく解説します。
差額ベッド代ってどんな費用?

差額ベッド代は、正式には「特別療養環境室料」と呼ばれます。これは、大部屋とは異なる、よりプライバシーが確保され、快適な設備(個別のトイレ、洗面台、冷蔵庫、テレビなど)が備わった病室を利用する際に発生する費用です。
患者さんの療養環境を向上させる目的で、厚生労働省によってその基準が定められています。
差額ベッド室の基準
差額ベッド代の対象となる「特別療養環境室」には、以下の4つの条件があります。
・病室のベッド数が4床以下であること
・病室の面積が患者さん1人あたり6.4平方メートル以上であること
・病床ごとにプライバシーを確保する設備(仕切りなど)があること
・特別の療養環境として適切な設備があること
この基準を満たしていれば、個室でなくとも差額ベッド代が発生する可能性があることを覚えておきましょう。
差額ベッド代の相場は?

差額ベッド代は、病院が自由に料金を設定できるため、その金額は医療機関や病室のタイプによって大きく異なります。
厚生労働省の「主な選定療養に係る報告状況(令和5年7月1日現在)」によると、1日あたりの平均費用※1は以下の通りです。
・1人室:8,437円
・2人室:3,137円
・3人室:2,808円
・4人室:2,724円
・全体平均:6,714円
入院期間が長くなればなるほど、差額ベッド代の総額は高額になります。例えば、平均的な入院日数(約28.4日)※2を差額ベッド代の全体平均で計算すると、約19万円以上の費用が必要となることもあります。入院日数のカウントは午前0時を起点とするため、1泊2日の入院でも2日分の差額ベッド代が発生する点にも注意が必要です。
※2出典:厚生労働省令和5年(2023)患者調査より
どんなときに差額ベッド代を払うの?

差額ベッド代は、患者さん自身が希望して特別室への入院を選び、かつ、その設備や料金について十分な説明を受け、同意書に署名した場合に発生します。つまり、患者さんの明確な意思と同意がなければ、基本的に支払いは不要です。
差額ベッド代を払わなくていいケース

患者さんの希望や同意がない場合、差額ベッド代を支払う義務はありません。具体的には、以下の3つのケースに該当するときは、差額ベッド代を請求されても支払う必要はありません。
1.同意書による確認が行われていない場合
特別室の利用に際し、病院からの説明が不十分であったり、料金の記載がない同意書にサインした場合、あるいはそもそも同意書に署名していない場合は、差額ベッド代は発生しません。
2.治療上の必要により特別室に入院した場合
医師が患者さんの治療上の理由(病状が重篤で安静が必要、感染症予防、終末期医療など)から特別室への入院が必要と判断した場合、差額ベッド代は請求されません。
3.病院側の都合で特別室に入院した場合
患者さんの選択によるものではなく、病院側の事情(大部屋が満床、院内感染防止のためなど)で特別室に入院した場合も、差額ベッド代は発生しません。
これらのケースで差額ベッド代を請求された場合は、病院側にその理由を確認し、厚生労働省の規定に則っているか確認しましょう。
差額ベッド代のトラブルと対策

差額ベッド代は、残念ながら公的医療保険の適用対象外です。そのため、高額療養費制度も利用できず、全額が自己負担となります。
また、医療費控除も、患者自身の希望で利用した差額ベッド代は原則として対象外です。「治療に最低限必要な費用」とはみなされないためです。
トラブルを防ぐために

突然の入院で気が動転していると、書類の内容をよく確認せずにサインしてしまうことがあります。不必要な差額ベッド代を請求されないためにも、以下の点に注意しましょう。
・入院手続きの書類は隅々まで目を通す。
・内容を十分に理解できない書類や、説明が不十分な同意書には安易にサインしない。
・料金や設備など、不明な点があれば必ず病院の窓口で確認する。
もし、不当な差額ベッド代を請求されたと感じる場合は、各都道府県庁の保健医療担当部署や、厚生労働省の地方厚生局に相談することも可能です。
医療保険で差額ベッド代に備える

「大部屋だと他の患者さんが気になってストレスを感じる」「プライバシーを確保して治療に専念したい」といった理由から、個室や特別室の利用を希望する方もいらっしゃるでしょう。その際にかかる差額ベッド代は高額になりがちですが、公的医療保険ではカバーされません。
このような場合に備えて、民間の医療保険の活用を検討することをおすすめします。医療保険の「入院給付金」は、入院日数に応じて保険金が支払われるため、差額ベッド代の費用を補填するのに役立ちます。
例えば、1日あたり平均6,700円程度の差額ベッド代を目安に、入院給付金の日額を設定すると良いでしょう。また、長期入院に備えて、保障期間や入院給付金の支払限度日数なども考慮して選ぶことが重要です。
また、通常の入院給付金に加え、差額ベッド代が発生した場合に、費用が一定額まで保障される特約を用意している保険会社もあります。
医療保険に加入しておけば、差額ベッド代だけでなく、入院中の食事代や生活費など、公的医療保険ではカバーされない様々な費用への備えにもなります。万が一の入院時に、経済的な心配なく治療に専念するためにも、ご自身のニーズに合った医療保険を検討してみてはいかがでしょうか。