就業不能保険
就業不能保険は労災と併用できる?保障内容とメリット・注意点を解説

本記事では、労災保険と就業不能保険の違いや併用のメリット、注意点を詳しく解説し、上手な組み合わせ方をお伝えします。
労災保険と就業不能保険の違い

労災保険は、業務中や通勤中の事故・ケガ・病気など、業務に起因する事由で働けなくなった場合に補償する公的保険制度です。休業補償給付として「給付基礎日額の60%」が支給され、さらに休業特別支給金として「給付基礎日額の20%」が上乗せされます。結果として、平均賃金の80%相当が支給される仕組みです。
一方、就業不能保険は民間の保険で、公私問わず病気やケガで働けない状態になった場合に、契約で定められた期間・金額の給付金を受け取れます。保障範囲は労災より広く、私生活での病気やケガも対象になります。
労災でカバーされないケース

労災保険はあくまで「業務起因性」が認められた場合に限られます。そのため、以下のようなケースは対象外です。
・私生活中の病気やケガ(例:自宅での転倒、趣味のスポーツでの負傷)
・業務に関連しない交通事故
・業務との因果関係が証明できない精神疾患
このような場合でも、就業不能保険であれば保障対象になる可能性があります。
併用で得られるメリット

労災と就業不能保険を併用することで、収入減少のリスクを大幅に軽減できます。労災保険で補償されるのは賃金の約80%ですが、残り20%は自己負担になります。就業不能保険を併用すれば、その差額をカバーし、実質的に休業前と同等の生活水準を維持しやすくなります。
また、労災対象外の病気やケガにも備えられるため、保障の幅が広がります。
併用時の注意点(給付金の減額・免責期間)
給付金の減額ルール
就業不能保険には「他の収入がある場合の減額規定」があることがあります。労災や健康保険の傷病手当金などからの給付がある場合、その分が差し引かれる契約もあるため、事前に契約条件を確認しておきましょう。
免責期間の仕組み
免責期間とは、病気やケガで働けなくなってから保険金の支払いが始まるまでの待機期間のことです。短いほど給付開始が早い反面、保険料は高くなる傾向があります。多くの就業不能保険では60日や90日、180日などの設定が一般的です。
実際のケーススタディ

【ケース1】業務中の事故で3か月休業
労災保険から賃金の80%を受給し、就業不能保険から差額補填を受けて実質100%に近い収入を確保。
【ケース2】私生活での病気(長期入院)
労災の対象外だが、健康保険の傷病手当金で賃金の3分の2(約66.7%)を受給。さらに就業不能保険で上乗せして生活費を補完。
労災+就業不能保険の選び方

併用を前提に保険を選ぶ際は、以下の点に注目しましょう。
・免責期間:既存の公的保障(労災・傷病手当金)との受給期間を考慮
・給付金額:生活費と既存保障との差額を補える金額設定
・給付期間:長期化リスクに備えられるか
・減額規定の有無:公的給付との併用で減額されないか確認
まとめ
労災保険は業務起因の事故や病気に強い一方、私生活中のリスクはカバーしきれません。就業不能保険を組み合わせることで、あらゆるリスクに対応でき、収入減少の不安を大きく軽減できます。ただし、免責期間や減額規定などの契約条件を十分に確認し、自分の生活や既存保障に合ったプランを選ぶことが大切です。
参考:
厚生労働省:労災保険制度の概要
厚生労働省:労災給付の請求手続・概要
厚生労働省:傷病手当金の計算方法
金融庁:公的保険と民間保険の関係
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。