iDeCo
専業主婦(夫)のiDeCo活用術:運用益非課税メリットと夫婦での節税戦略

「運用益が非課税になるってどういうこと?夫婦でiDeCoを使えば、どれくらいお得になるんだろう?」
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、会社員や自営業者だけでなく、専業主婦(夫)の方も加入できる老後資金準備のための税制優遇制度です。ご自身に所得がない場合、iDeCoの最大のメリットである「掛金の所得控除」を直接受けられないため、メリットがないと感じるかもしれません。しかし、専業主婦(夫)の方にとってのiDeCoには、所得控除とは異なる大きなメリットがあるんです。
この記事では、専業主婦(夫)のiDeCo活用術を徹底解説します。専業主婦(夫)(第3号被保険者)のiDeCo加入資格と掛金上限を明確にし、所得控除の恩恵が受けられない場合の真のメリットを詳しくご紹介します。そして、夫婦でiDeCoを活用することで得られる世帯全体の節税メリットまで、賢い資産形成を目指す夫婦のための具体的な戦略を提案します。
専業主婦(夫)のiDeCo:加入資格と掛金上限

専業主婦(夫)は、公的年金制度において「第3号被保険者」に該当します。第3号被保険者の方も、iDeCoに加入し、税制優遇を受けながら老後資金を準備することができます。
1. 加入資格
・日本国内に住む20歳以上65歳未満の専業主婦(夫)が加入できます。
・配偶者(第2号被保険者)の扶養に入っている方が対象です。
2. 掛金上限額
- 専業主婦(夫)のiDeCoの掛金上限額は、月額2万3,000円(年間27万6,000円)です。
- 掛金の下限額は、月額5,000円です。
3. 専業主婦(夫)自身は所得控除を受けられない点に注意
・iDeCoの掛金が全額所得控除になるメリットは、掛金を拠出した本人の所得から控除されるものです。
・そのため、専業主婦(夫)自身に所得がない場合、ご自身の所得税・住民税を直接軽減する効果はありません。
この点が、専業主婦(夫)がiDeCoを検討する際に最も誤解しやすいポイントです。では、所得控除メリットがない専業主婦(夫)がiDeCoに加入する真のメリットは何なのでしょうか?
専業主婦(夫)がiDeCoに加入する「真のメリット」:運用益非課税の恩恵

専業主婦(夫)がiDeCoに加入する最大のメリットは、「運用益が非課税になること」、そして夫婦でiDeCoを活用することで「世帯全体の税金を最適化し、老後資金を確実に準備できること」にあります。
運用益が「非課税」になる
所得控除のメリットがなくても、iDeCoの運用益が非課税になるのは非常に大きな魅力です。
・複利効果を最大化: 運用で得た利益が非課税で再投資されるため、利益がさらに利益を生む複利効果が最大限に発揮されます。税金が引かれない分、資産が雪だるま式に増えるスピードが加速します。
・長期運用で大きな差: iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、長期的な運用が前提です。例えば、月2.3万円(年間27.6万円)を30年間運用し、年率5%で増えた場合、最終的な資産額は約1,920万円にもなります。もし運用益に20%の税金がかかるとすれば、そのうち約300万円以上が税金として引かれる計算です。これが非課税になるのは非常に大きいのです。
夫婦でiDeCoを活用する「世帯全体の節税メリット」
専業主婦(夫)自身に所得がない場合、直接所得控除のメリットを受けられませんが、世帯全体の税金を最適化する視点で見ると、iDeCoのメリットは明確です。
・世帯全体の非課税枠の拡大: 夫婦それぞれがiDeCo口座を持つことで、運用益が非課税になる「非課税枠」が2人分に増えます。これは、世帯全体で老後資金を非課税で増やす大きな土台となります。
・所得がある配偶者がiDeCoを活用: 所得がある配偶者(夫または妻)がiDeCoに加入することで、その掛金が全額所得控除になり、世帯全体の所得税・住民税が軽減されます。夫婦で協力し、所得が高い方がiDeCoの掛金控除メリットを最大限活用することが、世帯全体の節税には重要です。
夫婦の所得バランスに応じたiDeCo掛金設定の最適化

夫婦でiDeCoを活用する際、世帯全体の節税効果を最大化するためには、お互いの所得状況に応じた掛金設定が重要です。
夫婦ともに所得がある場合(共働き)
・戦略: 夫婦それぞれに所得税・住民税がかかるため、夫婦それぞれがiDeCoに加入し、それぞれの掛金上限額まで拠出することを検討しましょう。
・ポイント: 所得税は累進課税のため、所得が高い方がiDeCoに拠出する掛金が多いほど、世帯全体の節税効果は大きくなります。所得のバランスを見て、掛金配分を最適化することが重要です。
夫婦のどちらか一方に所得がある場合(片働き・専業主婦世帯)
戦略:
1.まず、所得がある方(夫または妻)が、ご自身のiDeCo掛金上限まで拠出することを優先しましょう。これにより、世帯で確実に所得控除のメリットを享受できます。
2その上で、老後資金をさらに積み増したい、あるいは運用益非課税の恩恵を最大限に受けたいと考えるなら、専業主婦(夫)もiDeCoに加入することを検討しましょう。
・ポイント: 専業主婦(夫)のiDeCoの掛金は、運用益非課税が主なメリットとなるため、無理のない範囲で継続できる金額を設定することが大切です。月5,000円からでも、長期で続ければ大きな資産になります。
NISAとの連携も視野に
iDeCoは老後資金に特化しており、原則60歳まで引き出せない資金拘束があります。そのため、夫婦でiDeCoを活用しつつ、NISAの非課税枠も併用することで、資産形成の柔軟性を高めることができます。
・iDeCo: 老後資金の「コア」として、確実に税制メリットを享受しながら積み立てる。
・NISA: 教育資金、住宅資金、あるいはiDeCoの掛金上限を超える老後資金など、柔軟に使える非課税資産として積み立てる。
このように、夫婦でiDeCoとNISAを連携させることで、世帯全体の資産形成をより効率的かつ多角的に進めることが可能になります。
まとめ:専業主婦(夫)のiDeCoは「運用益非課税」と「夫婦連携」が鍵!
専業主婦(夫)がiDeCoに加入する最大のメリットは、掛金が所得控除になることではなく、「運用益が非課税になること」にあります。そして、所得がある配偶者がiDeCoに加入することと合わせて、夫婦でiDeCoとNISAを戦略的に活用することが、世帯全体の節税効果と資産形成効果を最大化する鍵となります。
・専業主婦(夫): 運用益非課税メリットを活かし、月5,000円からでも長期でコツコツ積み立てる。
・夫婦全体: 所得がある方がiDeCoの所得控除を最大限活用し、NISAも夫婦それぞれが年間合計360万円(つみたて投資枠年間120万円+成長投資枠年間240万円)の非課税枠をフル活用。
今日から夫婦でiDeCoとNISAの活用について話し合い、世帯全体の未来を豊かにするための資産形成を始めてみませんか。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています