自動車保険
対物賠償保険の補償範囲と金額の目安|無制限が安心な理由と高額事故の実例

「対物賠償は入っているけれど、どこまで補償される? 上限はいくらにすべき?」——フェンスや店舗の壁、公共物を壊してしまったら…と想像すると不安になりますよね。
本記事では、対物賠償保険の補償範囲と金額設定の考え方を、実際の高額事故の例も交えて分かりやすく解説します。
対物賠償保険の補償範囲

対物賠償保険は、運転中の事故で他人の「物」へ与えた損害を補償します。人身のケガは対人賠償保険の対象であり、本保険は物損とそれに関連する損害が中心です。
・相手の自動車の修理費
・店舗や住宅の壁・フェンス等の修理費
・電柱・ガードレール・信号機など公共物の復旧費
・事故で営業できなくなった店舗等の休業損害(営業損害)
・片付け・清掃・撤去費用、代替手配に伴う費用 等
ポイントは、物の修理費だけでなく間接損害(休業損害・逸失利益等)も請求対象になり得ること。対象物や社会的影響の大きさ次第で、賠償額は想像以上に膨らむ可能性があります。
補償金額の目安

以前は「1億円」など上限を設ける契約も見られましたが、近年は無制限での契約が主流です。
通常の物損であれば数十万円~数百万円で収まることも多い一方、社会インフラや事業活動に影響が及ぶと賠償額は一気に跳ね上がるため、上限の設定は慎重さが求められます。
実際に発生した高額事故の事例

2008年8月、首都高速道路・熊野町ジャンクションでタンクローリーが横転・火災となり、橋桁や路面が大破、長期の通行止めが発生しました。
東京地方裁判所は2016年7月14日、この事故に関し約32億8,900万円の損害賠償の支払いを命じています。賠償額には、復旧工事費だけでなく通行止めによる通行料金の逸失利益などの間接損害も含まれました。
このように、物的損壊に加えて社会的な機能停止や営業損害が重なると、対物賠償は数十億円規模に達し得ます。結果として、上限無制限の意義が実務上も強く裏づけられます。
金額設定に迷ったときの考え方

・社会インフラや事業活動に波及すると高額化するため、基本は無制限が安心
・休業損害など間接損害も念頭に置く(修理費だけではない)
・保険料の差は限定的なことも多く、コストに対するリスク低減効果が大きい
まとめると、「保険料の負担」対「想定外の高額リスク」のバランスを考えると、無制限を選ぶ合理性は高いと言えます。
まとめ
対物賠償保険は、物の修理費にとどまらず休業損害・逸失利益などの間接損害まで請求対象となるため、上限設定は極めて重要です。
日々の運転環境や利用頻度にかかわらず、無制限を基本に十分な補償を確保しておくことで、万一の経済的ダメージから家計を守れます。
参考情報
・東京地方裁判所 平成28年7月14日判決(平成20年 首都高速熊野町ジャンクション火災事故 損害賠償請求事件、認定損害額:約32億8,900万円)
判決日と事故名を控え、以下の公式「判例検索システム」から検索できます:
裁判所|判例検索システム(公式)
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。