学資保険
学資保険の返戻率ランキングは信用できる?教育費の実態から考える本当の選び方

学資保険の返戻率ランキングは、商品選びの参考にはなりますが、ランキング上の返戻率と実際に契約したときの返戻率は一致しないケースが多い点に注意が必要です。ランキングに掲載される返戻率は、払込期間や契約者の年齢、受取方法などの条件によって変動するため、条件が異なれば数値も変わります。この記事では、大学進学に必要な教育費の実態を踏まえたうえで、返戻率ランキングの正しい読み方と、学資保険以外の選択肢も含めた教育資金準備の判断基準を解説します。
返戻率ランキングの数字が実際と異なる3つの理由

返戻率ランキングは比較の入り口としては便利ですが、以下の理由から実際の契約と乖離する可能性があります。
理由①:条件が統一されていない
返戻率は、払込期間・契約者の年齢・被保険者(子ども)の年齢・受取開始年齢の組み合わせで変動します。一般に払込期間が短いほど返戻率は高くなりますが、月々の保険料負担は重くなります。ランキングでは「最も有利な条件」で算出された数字が掲載されていることが多く、実際に見積もりを取ると返戻率が下がるケースは珍しくありません。
理由②:特約の有無で変わる
払込免除特約(契約者が死亡・高度障害になった場合に以降の保険料が免除される特約)や医療保障特約をつけると、その分の費用が差し引かれるため返戻率は低下します。ランキングでは特約を外した「素の返戻率」が掲載されていることが多いため、特約をつけて契約した場合の返戻率はランキングの数字より下がるのが一般的です。
理由③:一括受取が前提になっている
学資金を18歳で一括受取する設計は返戻率が高くなる傾向がありますが、実際の学費支払いは入学金+4年間の授業料と分散するため、一括受取が必ずしも使い勝手が良いとは限りません。分割受取(中学・高校入学時や大学1〜4年次に分けて受け取る設計)を選ぶと返戻率は下がります。
大学進学にはいくらかかるのか|教育費の実態を把握する

学資保険の要否を判断するには、まず教育費の実態を把握しておく必要があります。
大学4年間の学費の目安
文部科学省の調査によると、令和5年度の大学の学費は以下の水準です。
・国立大学:入学金282,000円+授業料535,800円×4年=約243万円
・私立大学(文系):4年間の総額 約410万円
・私立大学(理系):4年間の総額 約540万円
私立大学の初年度納付金(授業料・入学金・施設設備費等の合計)は平均約147.7万円(令和5年度)となっており、入学時に一括で必要になる金額です。
出典:文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
学資保険の返戻率で得られる金額を具体的に考える
たとえば、返戻率105%の学資保険に18年間加入し、払込保険料の総額が200万円の場合、満期に受け取れる金額は210万円です。18年間で得られるプラスは10万円にとどまります。この金額が私立大学の学費(4年間で約410万〜540万円)のどの程度をカバーできるかを冷静に把握しておくことが重要でしょう。
返戻率だけで判断すると見落とす3つのリスク

学資保険は元本割れのリスクが低い安全性の高い商品ですが、以下のリスクも理解しておく必要があります。
リスク①:インフレによる実質的な目減り
返戻率は契約時の予定利率で固定されるため、18年間のインフレ(物価上昇)が返戻率を上回れば、受け取った金額の実質的な購買力は目減りします。私立大学の授業料は令和3年度から令和5年度にかけて約3%上昇しており、教育費は長期的に上昇傾向にあります。返戻率105%でも、教育費が同じ期間にそれ以上上昇すれば、実質的にはプラスにならない可能性があるのです。
リスク②:途中解約すると元本割れする
学資保険は長期契約を前提とした商品であり、払込期間の途中で解約すると解約返戻金が払込保険料を下回るのが一般的です。住宅購入や転職など、ライフプランの変化で資金が必要になった場合に自由に引き出せない点は、預貯金やNISAにはないデメリットといえます。
リスク③:保険料負担が家計を圧迫する
返戻率を高くするために払込期間を短くすると、月々の保険料が高額になります。家計に余裕がない状態で保険料を無理に支払い続けると、途中解約のリスクが高まり、結果として元本割れを招くおそれがあります。
学資保険とNISA|教育資金準備の選択肢を比較する

教育資金の準備手段は学資保険だけではありません。NISAを活用した積立投資と比較したうえで、自分の状況に合った方法を選ぶことが重要です。
学資保険が合う状況
・元本割れを避けたい(満期まで継続すれば原則として元本割れしない)
・契約者に万が一のことがあった場合の保障が必要(払込免除特約により以降の保険料が免除される)
・強制的に貯める仕組みが欲しい
NISAが合う状況
・18年間の運用期間を活かしてリターンを狙いたい
・途中で資金を引き出す可能性がある(NISAはいつでも売却・引出し可能)
・月々の積立額を柔軟に変更したい
NISAは運用益が非課税になるメリットがありますが、元本保証ではなく、運用成果によっては損失が生じる可能性があります。一方、学資保険は契約者死亡時の保障機能があり、「貯蓄+保障」の一体型である点が特徴です。どちらか一方に絞る必要はなく、学資保険で最低限の教育資金を確保し、NISAで上乗せを目指すという組み合わせも選択肢の一つでしょう。
まとめ|返戻率ランキングは「入り口」にとどめ、自分の条件で比較する
学資保険の返戻率ランキングはあくまで参考情報であり、実際の契約条件では返戻率が変わります。教育資金準備の判断は、教育費の実態を踏まえたうえで、家計全体のバランスの中で行うことが重要です。
・ランキングの返戻率は「最も有利な条件」で算出されていることが多く、実際の契約では下がるケースがある
・返戻率を比較する際は払込期間・年齢・受取方法の条件を統一して、複数社から見積もりを取る
・私立大学の4年間の学費は文系で約410万円、理系で約540万円。学資保険だけでカバーするのは現実的でないケースもある
・返戻率105%で18年間運用してもプラスは払込総額の5%。インフレによる教育費上昇を踏まえた実質的な評価が必要
・途中解約すると元本割れのリスクがあるため、無理のない保険料設定が欠かせない
・学資保険とNISAは併用も選択肢。学資保険で最低限の教育資金と保障を確保し、NISAで上乗せを目指す方法もある
まずは公式サイトの試算ツールで自分の条件に合った返戻率を確認し、ランキングの数字に惑わされない冷静な判断を心がけましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した記事です。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



