学資保険
学資保険の返戻率を最大化する3つの方法|払込期間・支払方法・選び方をFPが解説

返戻率は契約条件によって変動し、同じ保険料を支払っても、最終的に受け取れる金額に差が出ます。
ここでは、返戻率を高めるための一般的な方法と、返戻率だけに偏らない選び方を、ファイナンシャルプランナーの視点から解説します。
払込期間の短縮効果

学資保険の返戻率は、払込期間を短く設定することで上昇する傾向があります。理由は、保険料を早く払い終えることで支払総額が抑えられ、保険会社に運用される期間が長くなるためです。
短期払込のメリットとして、教育費がかさむ時期に保険料の支払いがなくなる点もあります。ただし、短期間に設定すると月々の負担額は高くなるため、家計の収支を見ながら無理のない範囲で検討する必要があります。
年払い・一括払いのメリット

保険料の支払方法によっても返戻率は変わります。月払いよりも年払いや一括払いを選択することで、総支払額が抑えられ、返戻率が改善することがあります。
・年払い:1年分をまとめて支払うため、月払いより割引が適用される場合がある
・一括払い:契約時に全額を支払う方法で、返戻率が高めになることが多い
一括払いは資金を長期的に拘束するため、途中解約リスクも考慮が必要です。年払いは比較的負担を抑えつつ返戻率を改善できる選択肢です。
保険会社選びのポイント

返戻率は契約内容だけでなく、保険会社の設計や運用方針にも左右されます。選ぶ際は次の点を確認しましょう。
1.予定利率や契約条件の傾向
2.祝金・満期金の受取方法の柔軟性
3.年払いや一括払いなどの割引制度の有無
4.財務の健全性(ソルベンシー・マージン比率など)
返戻率の計算方法
返戻率は次の計算式で求められます。
返戻率(%) =(受取総額 ÷ 支払総額)× 100
同じ満期金でも、払込期間や支払方法によって返戻率は変わります。ただし、実際の返戻率は保険会社や契約時期の金利環境によって異なるため、必ず見積もりで確認しましょう。
加入前チェックリスト

契約前に、以下の点を整理すると無理のないプランを立てやすくなります。
・払込期間を短くしても家計に負担がないか
・年払いや一括払いに対応できる資金余力があるか
・途中解約時の元本割れリスクを理解しているか
・祝金や満期金の受取時期が教育費の必要時期と合致しているか
・保険会社の条件や財務状況を確認しているか
返戻率以外で学資保険を選ぶ考え方

学資保険は返戻率だけで判断すると、思わぬ不都合が生じることがあります。総合的な視点を持つことが大切です。
・保障内容:契約者が亡くなった場合や高度障害状態になった場合に、以降の保険料が免除される制度があるか。
・資金の流動性:学資保険は原則として満期まで引き出せません。途中で資金が必要になる可能性がある場合は、預貯金や他の運用商品とのバランスを検討しましょう。
・教育資金以外の活用可能性:満期金を教育以外の用途に使えるかどうか、また受取方法の変更が可能かも確認しておくと安心です。
・インフレリスクへの対応:物価上昇に備えるため、必要に応じて他の資産形成手段を併用する選択肢も考えられます。
教育資金全体の準備プラン例(学資保険+預金+新NISA)
教育資金は複数の手段を組み合わせることで、リスク分散と柔軟性を確保できます。以下は一例です。
・学資保険(基礎資金の確保):高校や大学の入学金など、予め時期がわかっている支出に対応。
・普通預金・定期預金(流動性の確保):突発的な教育関連費や習い事費用にすぐ対応できる資金。
・新NISA(成長性の補完・リスクあり):長期的な資産形成の一手段として、少額から分散投資を行う方法。ただし、株式や投資信託は元本割れのリスクがあり、教育資金のように使用時期や金額がある程度決まっている目的では、必要な時期に十分な運用成果を得られない可能性があります。利用する場合は金額や期間を慎重に設定し、安全資産とのバランスを必ず確保しましょう。
FPとしての提案
返戻率は学資保険を検討する際の重要な指標ですが、それだけに偏ると柔軟性や保障面が不足する可能性があります。学資保険を中核としつつ、預金や新NISAなどを適切に組み合わせて教育資金全体を設計することで、安定性と成長性を両立できます。契約前には必ず複数のシミュレーションを行い、家計全体で無理のない資金計画を立てましょう。
参考文献
・金融庁「生命保険の仕組み」
・独立行政法人日本学生支援機構「学生生活調査(教育費関連データ)」
・全国銀行協会「金利表示の見方と注意点(利息・利率の基礎)」
・金融庁「NISA特設ウェブサイト(新しいNISAの概要)」
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。