学資保険
学資保険の見直しタイミングと方法|保険金額の減額・払済・他金融商品への切り替えまで解説

「子どもの教育費、ちゃんと用意できるだろうか…」「保険料の支払いが重くなってきた…」。学資保険に入った当時は余裕があっても、収入や物価、教育方針の変化で不安が芽生えることは珍しくありません。無理のない負担で、必要な時期に必要な額を準備する——そのためには、学資保険の見直しタイミングと方法を押さえておくことが大切です。
本記事では、①保険料負担が重いとき、②教育資金計画の変更時、③他の金融商品との切り替えという代表的な3つの局面に分け、独立系FPの視点で実践的に解説します。まずは全体像を掴み、次に各パートで手順と判断軸を確認しましょう。
保険料負担が重いとき

収入減や支出増で毎月の保険料が家計を圧迫するなら、学資保険は見直しの優先度が高い項目です。焦って解約する前に、制度上選べる手続きから負担軽減を検討しましょう。
・払済(はらいずみ)への切り替え:これまでの積立を維持しつつ、以後の保険料払込を停止する方法。受取額は原契約より減るが、キャッシュフローは直ちに改善。
・保険金額の減額:保険金額を下げることで保険料負担を軽減する(保険会社との「交渉」ではなく、契約者が選択できる制度上の手続き)。
・一部解約:必要最低限の受取・保障を残しつつ、契約の一部を解約して保険料負担や将来の拘束を緩和。
FPの判断軸:家計の固定費(住居費・通信費・保険料など)が手取りの50~60%を超えていないかを確認。保険で固定費が膨らんでいる場合は、まず「払済」や「保険金額の減額」で血流(キャッシュフロー)を確保し、解約は解約返戻金・将来受取額・満期までの残年数を試算してから最終判断に。
簡易シミュレーション(例):月払15,000円・残り10年・現在の解約返戻金80万円・満期受取200万円。
①払済に変更 → 今後の負担0円、満期受取は例えば170~180万円程度に低下(商品・時期で異なる)。
②保険金額を20%減額 → 月払12,000円に低下、満期受取もおおむね20%減。
③一部解約で返戻金の一部を生活防衛費に → 現金余力は増えるが、受取額は比例して減少。
※実際の数値は契約内容・配当・利率により異なります。必ず契約概要・設計書で確認してください。
教育資金計画の変更時

進路(公立・私立・留学)や居住地、物価水準の変化は必要総額に直結します。まずは公的データで現在地を把握し、足りない・余るを定量化しましょう。
1.最新データで必要額を把握:学年別・学校種別の支出を公的調査から確認。
2.ギャップを計算:既契約の受取予定+他の貯蓄・運用予定と照合し、不足/余剰を算出。
3.資金配分を最適化:不足なら追加原資を「時期」「安全性」「流動性」の観点で手当。余剰なら保険金額の減額や払済化で固定費を下げ、余力は老後資金や住宅繰上げに回す。
判断ポイント:教育資金は使う時期(高校・大学入学時など)がほぼ確定しているため、「期日までに不足なく到達」が最重要。利回りよりも目標時点での確実性を優先し、必要時期が近い資金は価格変動の小さい手段へ段階的に移す(いわゆる「デ・リスク」)。
ミニ・ケース:「私立志望 → 公立志望へ」変更で必要額が圧縮。保険金額を15%減額し、浮いた月3,000円はつみたて投資/NISAのリスク資産ではなく、生活防衛費に回す。教育費の確実性を担保しつつ家計の耐久性を高める戦略です。
他の金融商品との切り替え

長期の低金利環境では、学資保険の予定利率や配当が相対的に魅力を欠く場合があります。流動性・税制・元本確実性を総合比較し、必要に応じて段階的な切り替えを検討します。
・元本確実性重視:定期預金、個人向け国債(変動10年/固定3・5年)。満期や中途換金条件、金利改定ルールを確認。
・長期分散投資:つみたてNISAやiDeCoなどの税制優遇枠。教育費の使用時期が近い資金は値動きリスクに要注意。
・贈与制度の活用:教育資金贈与の活用など、親族からの資金移転で家計全体の効率を高める選択肢。
切り替えの実務ステップ:①現契約の解約返戻金・減額可否・払済可否・ペナルティを確認 → ②新商品の期待収益・税制・コスト・換金性を比較 → ③教育費の必要時期から逆算して段階的移行(一括乗り換えでなく、期間分散・金額分散)を検討。
リスク管理のコツ:教育費は「使途が確定した生活費」。高利回りでも価格変動が大きい商品は、使用までの残期間に応じて比率を抑えるのが基本です。目標達成見込みが立った資金は、順次現金・元本確保型に寄せると計画の安全度が上がります。
まとめ:目的と現状のズレを定期点検
見直しの主なトリガーは「保険料が重い」、「教育計画の変更」、「他手段への切り替え」の3つ。いずれも共通するのは、加入時の目的と現在の家計・進路・市場環境とのズレを早期に特定し、制度上の手続き(払済・保険金額の減額・一部解約)や資金配分の再設計で修正することです。公的データを基準にシミュレーションし、必要があれば専門家に相談して、家計に無理のない教育資金計画を維持しましょう。
参考文献(一次情報)
・文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査 結果の概要」
・日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果(令和3年度)」
・金融庁 NISA制度のしくみ(制度説明ページ)
※本記事は制度の一般的な枠組みを説明したもので、特定の金融商品の推奨や比較ではありません。実際のお手続き・金額は契約内容・各機関の最新情報により異なります。必ずご自身の契約書・各省庁/金融機関の最新公表資料をご確認ください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。