生命保険
子育て世代の生命保険の選び方|遺族年金を踏まえた必要保障額の計算と合理的な保障設計

子どもが生まれると万が一の際に必要な保障額は増加しますが、その全額を民間の生命保険でカバーする必要はありません。会社員の遺族には遺族基礎年金+遺族厚生年金が支給され、住宅ローンには団体信用生命保険(団信)が付帯されているケースがほとんどです。必要保障額は「遺族の支出総額」から「公的保障+既存の資産」を差し引いた不足分で計算するのが原則であり、この不足分だけを民間保険で備えるのが合理的な設計といえるでしょう。この記事では、遺族年金の具体的な受給額を踏まえた必要保障額の考え方と、子育て世代に適した保険の選び方を解説します。
必要保障額の考え方|公的保障を差し引いてから民間保険を設計する

生命保険の保障額を決める際に最も重要なのは、「公的保障でいくらカバーされるか」を把握することです。公的保障を差し引かずに保障額を設定すると、保険料が過大になり家計を圧迫します。
遺族年金の受給額(令和7年度)
会社員が死亡した場合、遺族には遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。
・遺族基礎年金:子のある配偶者に年額831,700円+子の加算(第1子・第2子は各239,300円、第3子以降は各79,800円)。子1人の場合は年額約107万円、子2人の場合は年額約131万円
・遺族厚生年金:死亡した方の厚生年金加入期間と報酬に基づき計算(報酬比例部分の4分の3)。平均的な会社員の場合、年額40〜60万円程度が目安
・子が18歳到達年度の末日を過ぎると遺族基礎年金は終了。その後、40歳以上65歳未満の妻には中高齢寡婦加算(年額623,800円)が加算される
出典:生命保険文化センター「公的な遺族年金の仕組みについて知りたい」
たとえば、子ども2人の会社員世帯の場合、遺族基礎年金+遺族厚生年金で年額170〜190万円程度(月額14〜16万円程度)が子の成長に応じて支給されます。この金額を把握せずに保障額を設定すると、過剰な保険に加入してしまう可能性があります。
必要保障額の計算式
必要保障額は以下の計算で算出します。
必要保障額 = 遺族の支出総額 − 公的保障 − 既存資産
・遺族の支出総額:生活費(現在の生活費の7割程度が目安)+子の教育費+住居費(賃貸の場合)
・公的保障:遺族年金の総額+遺族の将来の老齢年金+配偶者の収入
・既存資産:預貯金+死亡退職金+団信による住宅ローン完済
住宅ローンに団信が付帯されている場合、ローン残高は死亡時に完済されるため、必要保障額に含める必要はありません。多くの住宅ローンには団信が付帯されていますが、保障内容(死亡のみか、三大疾病特約ありか等)は確認しておきましょう。
子育て世代に適した保険の種類と選び方

必要保障額を算出したら、その不足分をカバーする保険を選びましょう。子育て世代に適した保険は、保障が必要な期間に限定して加入する「掛け捨て型」が基本です。
収入保障保険|子育て期間の保障に最も合理的
収入保障保険は、死亡時から保険期間の満了まで、毎月定額の保険金が年金形式で支払われる保険です。子どもの成長とともに必要保障額が減少していく実態に合致しており、保険料も割安に抑えられます。
・保険金が年々減少するため、同じ保障額の定期保険より保険料が安い
・毎月定額で支給されるため、遺族が計画的に生活費として使いやすい
・非喫煙者・健康体割引が適用される商品が多く、さらに保険料を抑えられる可能性がある
定期保険|まとまった一時金が必要な場合に
定期保険は、保険期間中に死亡した場合に一括で保険金が支払われる保険です。教育費や葬儀費用など、まとまった資金が必要な場合に適しています。収入保障保険と組み合わせて、一時金と月額保障の両方を確保する設計も有効でしょう。
終身保険の優先度は低い
終身保険は一生涯の保障がありますが、同じ保障額の場合、定期保険や収入保障保険に比べて保険料が数倍になります。子育て期間中に必要な保障額が大きい世帯にとって、終身保険で全額をカバーしようとすると保険料が家計を圧迫しかねません。葬儀費用程度の少額(200〜300万円程度)を終身保険で確保し、子どもの独立までの保障は収入保障保険や定期保険で備えるのが合理的です。
医療保険・がん保険は公的保障を確認してから判断する

子育て世代は入院や病気による収入減のリスクにも備える必要がありますが、まずは公的保障でどこまでカバーされるかを確認することが先決です。
会社員の場合
会社員には高額療養費制度(月あたりの自己負担上限:年収約370万〜約770万円の区分で約8〜9万円)と傷病手当金(給与の約2/3、最長1年6か月)があります。これらの公的保障と預貯金を合わせて対応できる場合は、医療保険の優先度は相対的に低くなります。
自営業者の場合
国民健康保険には傷病手当金がありません。治療中の収入減に備える手段が限られるため、自営業者は医療保険やがん保険(特に診断一時金)の優先度が会社員より高いといえるでしょう。
まとめ|遺族年金と団信を把握してから保障を設計する
子育て世代の生命保険は、「万が一のとき、いくら不足するか」を公的保障から逆算して設計するのが原則です。
・必要保障額=遺族の支出総額−公的保障−既存資産。遺族年金・団信・預貯金を差し引いた不足分だけを保険でカバーする
・遺族基礎年金は子1人の場合で年額約107万円。会社員は遺族厚生年金と合わせて年額170〜190万円程度が目安
・住宅ローンに団信が付帯されている場合、ローン残高は必要保障額に含めない
・子育て期間の保障には収入保障保険が保険料・保障内容ともに合理的
・終身保険は葬儀費用程度の少額にとどめ、子どもの独立までの保障は掛け捨て型で確保する
・医療保険・がん保険は高額療養費制度と傷病手当金を確認してから加入の要否を判断する
・自営業者は傷病手当金がないため、医療保険の優先度が会社員より高い
まずは遺族年金の受給見込み額と団信の保障内容を確認し、必要保障額を計算したうえで、過不足のない保障を設計しましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



