火災保険
地震保険の加入率【2025年最新データで見る全国と都道府県の現状】

地震はいつどこで起こるかわからないものです。万一の時に生活を立て直すため、多くの家庭が加入しているのが地震保険です。2024年度の付帯率は初めて70%を超え、全国で関心が高まっていることがわかります。
たとえば2024年1月の能登半島地震では、石川県の付帯率は60%台半ばと全国平均を下回っていたこともあり、多くの世帯が十分な備えを持てないまま大きな被害を受けました。この事例は「地震は予想外の地域でも起きる」ことを改めて示しています。
本記事では全国と都道府県別の加入率や過去からの推移を最新データで確認し、さらに能登半島地震や阪神・淡路大震災の教訓、そして制度の最新動向を紹介します。最後に、どのように備えを進めればよいか、具体的なステップも解説しますので、ご自身の暮らしに照らしてぜひ参考にしてください。
全国平均の地震保険加入率の現状

2024年度の地震保険付帯率は70.4%となり、初めて70%を超えました。前年の69.7%から0.7ポイント上昇し、22年連続で増加しています。
一方、全世帯を分母とした世帯加入率は2024年度で35.4%にとどまりました。
契約件数は増加傾向にあり、2024年度末には約2,172万件と過去最多を記録しています。
都道府県別の地震保険加入率の差とその要因

過去の震災経験がある地域では加入率が高く、宮城県(89.3%)、高知県(87.6%)、熊本県(87.8%)などが上位に位置しています。防災意識が高まった結果といえるでしょう。
一方で、長崎県(56.2%)、沖縄県(58.5%)、東京都(62.2%)などは全国平均を大きく下回っています。都市部や比較的地震発生の少ない地域では、「自分は大丈夫」という意識が影響している可能性があります。
石川県は2023年度末時点で66.4%と低めでしたが、2024年1月の能登半島地震では死者約260名、住家被害約24,000棟の大規模被害(全壊・半壊)が発生しました。珠洲市や輪島市の一部は「全損地域」と認定され、現地調査を省略して迅速に保険金が支払われ、その額は740億円超に達しました。
出典:石川県ホームページ
出典:一般社団法人日本損害保険協会「令和 6 年能登半島地震に係る地震保険の支払件数・支払保険金等について(2024 年 3 月 31 日現在)」
この経験を受け、北陸地方の加入率は今後上昇する可能性があります。
地震保険加入率の長期的な推移
加入率は過去20年あまりで着実に上昇しています。2010年度は48.1%にとどまっていましたが、2023年度には69.7%、2024年度には70.4%へと拡大しました。世帯加入率も2006年度の20.8%から2023年度には35.1%にまで上昇しています。なお、これらは共済を含まない地震保険のみの統計です。
加入率上昇の背景
加入率上昇の大きな要因は大震災です。1995年の阪神・淡路大震災を契機に制度改正が行われ、2011年の東日本大震災では東北地方で加入率が急増しました。2016年の熊本地震でも九州地方で加入率が上がり、2024年の能登半島地震をきっかけに北陸地方でも同様の動きが予想されています。
最新データから見る地震保険の必要性

火災保険では地震を原因とする損害は補償されません。地震保険は国と民間が共同で運営し、目的は住宅の完全復旧ではなく被災直後の生活安定にあります。補償額は火災保険金額の30〜50%の範囲で設定され、建物5,000万円・家財1,000万円が上限です。損害の程度(全損・大半損・小半損・一部損)に応じて定額が支払われる仕組みです。
地震保険料控除の具体例
税制面でもメリットがあります。たとえば年間保険料が5万円、所得税率が20%の場合、所得控除5万円×20%=1万円の節税効果があります。住民税にも影響が及び、合計ではさらに効果が大きくなります。なお、5年契約の一括払いでは「一括保険料÷5年」で年間額に換算して申告します。
阪神・淡路大震災から30年の節目
2025年は阪神・淡路大震災から30年を迎える節目の年です。損害保険料率算出機構も特設ページを公開しており、制度の見直しや防災意識の定着についての議論が続いています。
最近の制度・運用の動向
地震保険の仕組みは社会情勢や震災の教訓を踏まえて変化しています。2017年から2021年にかけて3度の料率改定が行われ、2022年10月には全国平均で0.7%の引き下げがありました。
民間の火災保険で備える場合、自宅の環境性能に応じて地震保険料の割引が受けらる耐震性能割引が利用できます。この割引は、「免震建築物」「耐震等級」「耐震診断」「建築年数」の4区分で運用が続いており、条件に応じて10〜50%の割引が適用されます。また、保険会社各社でオンライン申込や電子証券への対応が進んでいます。
政策面では、2024年4月に政府広報オンラインが地震保険の重要性を啓発し、阪神・淡路大震災30年を契機とした制度見直しが検討されています。実務的には2022年10月以降の契約から自動継続制度が廃止され更新手続きが必要となり、さらに警戒宣言が出た地域では新規契約や増額契約が制限される点に注意が必要です。
まとめ:最新データからご自身の地域の備えを考える
全国平均の付帯率は70.4%まで上昇しましたが、地域差は依然として残されています。能登半島地震のように「自分の地域は大丈夫」とは言えないことが明らかになりました。地震保険は生活再建の初動資金として重要な役割を持ち、共済とあわせて比較する価値があります。
まずはお手元の火災保険証券を確認しましょう。そこに「地震保険」や「地震危険補償特約」の記載がなければ未加入の可能性があります。不明点があれば保険会社や代理店に問い合わせてください。そのうえで、必要なら複数の商品や共済を比較し、築年数や構造を考慮して補償を調整することが望ましいでしょう。
ただし、地震保険特約は保険金額が少ないため、地震保険でしっかり備えておくことをおすすめします。
加えて、耐震診断や補強、防災用品や備蓄、避難計画などのハード・ソフト両面の備えを組み合わせることで、家族の安全と生活の安定を守る力は一層強まります。データを理解するだけでなく、確認→相談→実行の流れを実践することが、防災において最も重要です。
※各統計の数値は、定期的に更新されますので、詳しくは最新の統計をご確認ください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。