医療保険
医療保険の審査に落ちたらどうする?高額療養費制度を踏まえた判断フローと選択肢

医療保険の審査に落ちた場合、すぐに引受基準緩和型保険に加入するのは合理的とは限りません。引受基準緩和型の保険料は通常の医療保険の約1.5〜2倍であり、その割高な保険料の累計と、高額療養費制度の自己負担限度額を比較したうえで判断すべきでしょう。この記事では、医療保険の審査の仕組みを整理したうえで、審査に落ちた場合の判断フローと具体的な選択肢を解説します。
医療保険の審査の仕組み|告知書と診査

医療保険の審査は、主に告知書への記入内容に基づいて行われます。
告知書で問われる主な内容
告知書の質問項目は保険会社によって異なりますが、一般的には以下のような内容が含まれます。
・過去5年以内の入院・手術歴
・過去2年以内の健康診断での異常指摘(要再検査・要精密検査・要治療など)
・現在治療中の病気や服用中の薬の有無
・過去にがん(悪性新生物)と診断されたことがあるか
告知義務違反(事実と異なる告知)があった場合、保険法第55条に基づいて契約が解除される可能性があります。告知書には正確に、ありのままを記入することが原則です。
出典:生命保険文化センター「保険法の概要(各論)」
保険金額が高額な場合は医師の診査が必要になることも
入院給付金日額が高額(目安として日額1万円以上など)の場合や、告知書の内容に保険会社が追加確認を求める場合は、医師による診査や健康診断書の提出が必要になることがあります。
審査に落ちた場合の判断フロー

1社で審査に落ちた場合でも、すぐに引受基準緩和型保険に切り替えるのではなく、以下の順序で検討することが重要です。
ステップ①:他社に申し込む
保険会社によって審査基準は異なります。A社で落ちてもB社では「特別条件付き」で引き受けられるケースがあるでしょう。特別条件とは、特定の部位に関する保障を一定期間除外する「部位不担保」や、標準より高い保険料を適用する「保険料割増」などの条件を指します。特別条件付きであっても通常の医療保険であれば、引受基準緩和型より保険料が安くなるのが一般的です。
ステップ②:高額療養費制度を踏まえて「そもそも民間医療保険が必要か」を判断する
医療費の自己負担には高額療養費制度による上限があります。69歳以下で年収約370万〜約770万円の区分の場合、ひと月の自己負担限度額は80,100円+(総医療費−267,000円)×1%です。直近12か月で3回以上該当した場合は多数回該当で44,400円に引き下げられます。
出典:厚生労働省「高額療養費制度について」(PDF)
この自己負担限度額に加えて、差額ベッド代・食費・先進医療費などの対象外費用を合算した金額を、預貯金で対応できるかどうかが判断の分かれ目です。十分な預貯金がある場合、割高な保険料を払い続けるよりも医療保険に加入しない方が合理的なケースもあります。
ステップ③:引受基準緩和型保険を検討する
他社でも引き受けられず、かつ預貯金だけでは不安が残る場合に、引受基準緩和型保険を検討します。
・告知項目が3〜5項目程度に簡素化されており、持病があっても加入しやすい
・保険料は通常の医療保険の約1.5〜2倍
・加入から1年間は給付金が50%に削減される商品が多い(削減なしの商品もある)
・持病の悪化による入院・手術も保障対象となる商品がある
ステップ④:無選択型保険は最終手段
告知も医師の診査も不要で誰でも加入できますが、保険料はさらに割高であり、加入から一定期間は保障が制限される場合があります。無選択型は引受基準緩和型でも加入できなかった場合の最終的な選択肢と位置づけるのが妥当でしょう。
引受基準緩和型の保険料累計と高額療養費の比較

引受基準緩和型保険に加入する前に、保険料の累計と公的保障でカバーされる範囲を比較してみましょう。
たとえば、引受基準緩和型の月額保険料が5,000円の場合、10年間の保険料累計は60万円です。一方、高額療養費制度の自己負担限度額(年収約370万〜約770万円の区分)は月約8〜9万円程度であり、仮に2か月入院しても自己負担は約16〜18万円(+対象外費用)にとどまります。60万円の預貯金があれば、割高な保険料を支払うよりも自費で対応した方が経済的に有利なケースも少なくありません。
ただし、預貯金が十分でない場合や、長期入院のリスクが高い持病がある場合は、引受基準緩和型保険の保障価値が高まります。一律の正解はなく、自身の預貯金額・持病の内容・家計の状況を踏まえた個別判断が必要です。
まとめ|審査に落ちても「引受基準緩和型」が唯一の選択肢ではない
医療保険の審査に落ちた場合でも、焦って引受基準緩和型保険に加入する必要はありません。
・保険会社によって審査基準は異なる。1社で落ちても他社で「特別条件付き」で引き受けられる可能性がある
・特別条件(部位不担保・保険料割増)付きの通常の医療保険は、引受基準緩和型より保険料が安い
・高額療養費制度により医療費の月あたりの自己負担には上限がある
・引受基準緩和型の保険料は通常の約1.5〜2倍。10年間の累計と預貯金を比較して判断する
・引受基準緩和型は加入から1年間は給付金が50%に削減される商品が多い点に注意
・「まず他社に申込み→高額療養費で十分か判断→引受基準緩和型→無選択型」の順序で検討するのが合理的
まずは自身の預貯金額と高額療養費制度の自己負担限度額を確認し、民間医療保険で備えるべき範囲を明確にしたうえで判断しましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



