公的年金制度
公務員・私学教員等の共済年金は今どうなっている?一元化後の変更点と影響を解説

かつて公務員や私学教員などが加入していた「共済年金」は、2015年(平成27年)10月に厚生年金に一元化されました。この制度変更により、公務員や教員の年金制度は大きく変わっています。
本記事では、共済年金の一元化で何が変わったのか、一元化前から加入していた方の年金はどう扱われるのか、さらに現在の公務員・私学教員が活用できる年金上乗せ対策まで詳しく解説します。
共済年金から厚生年金へ、何が変わったのか?

2015年10月1日、被用者年金制度の一元化が実施され、それまで公務員や私学教員が加入していた共済年金は厚生年金に統合されました。この改正は「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」(平成24年法律第63号)に基づいて行われたものです。
一元化により、公務員も民間企業の会社員と同じ厚生年金制度に加入する形となり、年金制度の2階部分が統一されました。
共済年金の一元化とは?2015年の歴史的転換

共済年金と厚生年金の一元化は、日本の年金制度における大きな転換点でした。この制度改革の背景と対象者について整理します。
制度統合の背景と目的
被用者年金の一元化は、「社会保障・税一体改革大綱」(平成24年2月17日閣議決定)の一環として実施されました。主な目的は以下の2点に集約されます。
・公平性の確保:共済年金は厚生年金よりも保険料率が低く、職域加算という上乗せ給付もあったことから、公務員と民間サラリーマンの間で不公平感が指摘されていました。制度を統一することで、同じ報酬であれば同じ保険料、同じ給付を実現しています。
・年金財政の安定化:複数の年金制度が分立していると、将来的にいずれかの財政が悪化するリスクがあります。制度を一本化して規模を拡大することで、年金財政の安定性を高める狙いがありました。
出典:地方公務員共済組合連合会「共済年金は厚生年金に統一されます」(PDF)
対象者(国家公務員、地方公務員、私学教員など)
一元化の対象となったのは、以下の共済組合に加入していた方々です。
・国家公務員共済組合
・地方公務員等共済組合
・私立学校教職員共済
これらの方々は2015年10月1日以降、厚生年金の被保険者となりました。なお、厚生年金には「第1号厚生年金被保険者」(民間企業)から「第4号厚生年金被保険者」(私学教職員)までの区分が設けられ、国家公務員は第2号、地方公務員は第3号、私学教職員は第4号として管理されています。
一元化後の年金制度の主な変更点

共済年金から厚生年金への移行に伴い、いくつかの重要な変更がありました。ここでは主要な変更点を解説します。
「職域加算」の廃止とそれに代わる「年金払い退職給付」
一元化前の共済年金には「職域加算」と呼ばれる3階部分の給付がありました。これは公務員独自の上乗せ年金で、追加の保険料負担なしに支給される仕組みでしたが、一元化に伴い廃止されています。
職域加算に代わって創設されたのが「年金払い退職給付」(退職等年金給付)です。年金払い退職給付には以下の特徴があります。
・積立方式を採用:従来の賦課方式とは異なり、将来の年金給付に必要な原資をあらかじめ保険料で積み立てる方式
・労使折半の保険料:保険料率は1.5%を上限とし、組合員と事業主(国等)が折半で負担(組合員の掛金率は0.75%)
・給付の種類:退職年金、公務障害年金、公務遺族年金の3種類
・退職年金の支給方法:半分が終身年金、半分が有期年金(10年または20年を選択、一時金受給も可能)として65歳から支給
年金払い退職給付は、民間企業の企業年金に相当する制度として位置づけられており、キャッシュ・バランス方式を採用しています。これにより、国債利回り等に連動して給付額が変動する仕組みとなっています。
厚生年金への移行によるメリット・デメリット
一元化による主な変更点をメリット・デメリットの観点から整理します。
【主な変更点】
・保険料率の統一:共済年金は厚生年金より低い保険料率でしたが、段階的に引き上げられ、公務員共済は平成30年(2018年)、私学共済は令和9年(2027年)に厚生年金と同じ18.3%に統一されます。
・被保険者の年齢上限:共済年金では私学共済を除き年齢上限がありませんでしたが、厚生年金と同様に70歳までとなりました。
・遺族年金の転給廃止:共済年金では、遺族年金を受給していた方がその権利を失った場合、次の順位の遺族に年金が引き継がれる「転給」がありましたが、廃止されました。
・未支給年金の支給範囲:受給者が亡くなった際の未払い年金の受給対象者が、亡くなった受給者と生計を同じくしていた3親等以内の親族に限定されました。
・在職支給停止のルール変更:老齢年金を受給しながら働いている場合の支給停止要件が、厚生年金の基準に統一されました。
【メリットとなる変更点】
・加給年金の算定基準:加給年金の受給には厚生年金加入期間20年以上が必要ですが、一元化後は共済と厚生年金の期間を合算できるようになりました。
・年金請求手続きの簡素化:ワンストップサービスにより、厚生年金と共済年金のどちらか一方の窓口で請求手続きが可能になりました。
・ねんきん定期便の統合:2015年12月以降、共済の加入期間もねんきん定期便に記載されるようになっています。
旧共済年金加入者の年金はどうなる?経過措置と影響

一元化前に共済年金に加入していた方々の既得権は保護されています。経過措置の内容と年金への影響について解説します。
一元化前の加入期間の扱い
2015年9月以前の共済組合員期間を有する方には、「経過的職域加算額」が支給されます。これは、一元化で廃止された職域年金相当部分(3階部分)を経過措置として保障するものです。
経過的職域加算額の主なポイントは以下の通りです。
・2015年9月以前に1年以上の引き続く共済組合員期間がある方が対象
・2015年9月以前の組合員期間を基礎として、従来の職域年金相当部分と同様の計算方法で算定
・老齢厚生年金の受給権発生時に、共済組合から退職共済年金(経過的職域加算額)として支給
・年金証書は厚生年金と経過的職域加算額で2枚届く形になる
年金支給額への影響と見込み
一元化前後の両方の期間がある方の年金は、以下のように構成されます。
・1階部分(老齢基礎年金):全加入期間を通じて国民年金から支給
・2階部分(老齢厚生年金):共済・厚生年金の全加入期間を通じて支給
・3階部分:2015年9月以前の期間分は「経過的職域加算額」、2015年10月以降の期間分は「年金払い退職給付」として支給
例えば、一元化前に20年、一元化後に20年勤務した方の場合、経過的職域加算額は一元化前の20年分のみを基礎として計算されます。一元化後の20年分については、年金払い退職給付として別途支給される仕組みです。
経過的職域加算額には繰上げ・繰下げ制度も適用されます。老齢厚生年金と同様の条件で繰上げ請求または繰下げ申出が可能です。
出典:国家公務員共済組合連合会「退職共済年金(経過的職域加算額)」
公務員・私学教員が今からできる年金上乗せ対策

共済年金の一元化や退職金の減少傾向を踏まえ、公務員・私学教員も自助努力による老後資産形成が求められる時代になっています。活用できる制度を紹介します。
iDeCoや財形貯蓄、企業型DCの活用
【iDeCo(個人型確定拠出年金)】
2017年1月から公務員もiDeCoに加入できるようになりました。さらに、2024年12月からは拠出限度額が月額1万2,000円から月額2万円に引き上げられています。年間では14万4,000円から24万円への増額となり、より積極的な資産形成が可能になりました。
iDeCoの主なメリットは以下の通りです。
・掛金が全額所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減
・運用益が非課税
・受取時も退職所得控除や公的年金等控除が適用
なお、2024年12月以降は、iDeCoの掛金と年金払い退職給付等の掛金相当額(公務員は約8,000円)を合算して月額5万5,000円が上限となります。公務員の場合は、上限の2万円まで拠出可能となるケースがほとんどです。
出典:政府広報オンライン「iDeCoがより活用しやすく!2024年12月法改正のポイント」
【財形貯蓄制度】
公務員向けの財形貯蓄制度として、以下の種類があります。
・一般財形貯蓄:使途自由、税制優遇なし
・財形住宅貯蓄:住宅取得目的、元利合計550万円まで利子非課税(財形年金と合算)
・財形年金貯蓄:老後資金目的、元利合計550万円まで利子非課税(財形住宅と合算)
給与天引きで確実に積み立てができるため、計画的な資産形成に適しています。
【その他の資産形成手段】
・NISA(少額投資非課税制度):2024年から制度が拡充され、年間投資枠は最大360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、非課税保有限度額は1,800万円となっています。iDeCoと併用することで、より効率的な資産形成が可能です。
・個人年金保険:生命保険料控除の対象となり、節税しながら老後資金を準備できます。
まとめ:一元化後の年金制度を理解し、将来に備える
共済年金と厚生年金の一元化から約10年が経過しました。制度変更のポイントを改めて整理します。
・2015年10月1日に共済年金が厚生年金に統合され、公務員も厚生年金の被保険者となった
・職域加算は廃止され、新たに「年金払い退職給付」が創設された
・一元化前の加入期間については「経過的職域加算額」として既得権が保護されている
・保険料率や各種制度は厚生年金に統一される方向で調整が進められている
・iDeCoの拠出限度額引き上げなど、自助努力による資産形成の環境は整備されつつある
公務員の年金制度は民間との公平性確保の観点から見直しが進められてきました。年金制度の変化を正しく理解し、iDeCoやNISAなどの制度も活用しながら、計画的に老後資金を準備することが重要になっています。
ご自身の年金見込額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。また、年金払い退職給付の試算については、各共済組合に問い合わせることで確認が可能です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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