個人年金保険
個人年金保険の税金を徹底解説|年金形式・一時金受け取りの違いと2025年最新ルール

さらに2025年分からは基礎控除額が段階的に変動する新制度が始まり、これまで以上に受け取り方の戦略が重要になりました。この記事では最新ルールに基づき、個人年金保険の受け取り時の税金とFP視点での受け取り戦略を解説し、最後に自分の控除額を判断できるフローチャートもご紹介します。
年金形式で受け取る場合の税金と源泉徴収

年金形式で受け取る場合、その収入は雑所得として扱われます。課税対象額は「年間受取額-年金原資(払込保険料の按分)」で求められ、この額を給与所得や事業所得などと合算して総合課税します。年間の雑所得が25万円を超えると、その超過分に10.21%(所得税+復興特別所得税)が源泉徴収されます。これは仮払いであり、確定申告で精算されます。
さらに、実際の課税額を決めるうえで重要なのが「基礎控除」です。基礎控除は、すべての納税者に一定額が認められる所得控除であり、その年の合計所得金額によって金額が変動します。2025年分からの所得税の基礎控除額は以下の通りです。
・合計所得金額 132万円以下:95万円
・132万円超〜655万円以下:88万円(2027年以降は58万円)
・655万円超〜2,350万円以下:58万円
※132万円超〜655万円以下の範囲では、所得金額に応じてさらに細かく段階的に控除額が決定されます。
住民税の基礎控除は従来通り43万円です。
したがって、現役時代に受け取ると給与所得と合算され税率が上がるリスクがあります。退職後や所得が少ない年に受け取りを開始する計画を立てれば、基礎控除の恩恵を最大限活かせます。
一時金で受け取る場合の一時所得と課税方法

一時金として一括受け取る場合は、一時所得として課税されます。計算は二段階です。
1.一時所得の金額=総収入金額-払込保険料総額-特別控除(最高50万円)
2.課税対象額=一時所得の金額×1/2を他の所得と合算(総合課税)
この「2分の1課税」により、同額を受け取る場合でも年金形式より税負担が軽くなることがあります。ただし、他の所得が多い年に受け取ると基礎控除額が下がり、税額が増える可能性があります。
参考:国税庁 No.1490 一時所得
一時金は大きな資金をすぐ使える反面、その年の総所得を大きく押し上げます。医療費控除や配偶者控除、さらには高齢者の医療費自己負担割合などにも影響する可能性があるため、受け取る年は慎重に選びましょう。
税金を抑えるための受け取り戦略

個人年金保険の税負担を抑えるには、受け取りの方法と時期を戦略的に選ぶことが重要です。退職後や収入の少ない年に受け取る、契約を複数に分けて満期をずらす、一時金と年金形式を組み合わせるなどの方法があります。
【受け取り戦略の一例】
・年単位で受け取り時期をコントロールするだけで数十万円の節税になるケースも
・契約を複数化して特別控除を複数年に分散活用する
・株式や不動産の売却時期と合わせて総合的に課税所得を調整する
標準ケースでの比較
想定条件:
・払込保険料総額:800万円
・年金形式:年間100万円を10年間
・一時金:1,100万円一括
・基礎控除:所得税58万円、住民税43万円
年金形式は基礎控除内で税額ゼロ、手取り1,000万円。一時金は税額約11万5,500円、手取り約1,088万4,500円。差は小さいですが、この条件では年金形式がやや有利です。
基礎控除額別の比較(2025年ルール)
パターン1(年間100万円×10年/一時金1,100万円)
年金形式は控除95万円・88万円・58万円すべてで税額ゼロ。一時金は控除95万円で税額約9万7,000円、58万円では約11万5,500円と控除差で手取りに違いが出ます。
パターン2(年間150万円×10年/一時金1,400万円)
年金形式は控除額にかかわらず税額約7万円。一時金は控除95万円で約17万2,000円、58万円で約19万500円の税額。控除差で約2万円の手取り差が生じます。年金形式では源泉徴収が年間約2万5,525円発生します。
パターン3(年間80万円×15年/一時金1,150万円)
年金形式は全控除額で税額ゼロ。一時金は控除95万円なら税額ゼロ、58万円では約7万8,000円の税負担。
あなたの基礎控除額はどれ?簡易フローチャート

1.その年の合計所得金額(給与・年金・事業・不動産など全て)を確認
2.132万円以下 → 基礎控除95万円
3.132万円超〜655万円以下 → 基礎控除88万円(2027年以降は58万円)※この範囲では所得金額に応じてさらに細かく段階的に控除額が決まります
4.655万円超〜2,350万円以下 → 基礎控除58万円
5.2,350万円超 → 基礎控除ゼロ(対象外)
まとめ|所得状況に合わせた戦略がカギ
基礎控除は所得額によって変動するため、低所得層では一時金の税負担が減り、高所得層では年金形式が有利になる傾向があります。
FPからの最終アドバイス
・受け取り年の他の所得を必ず確認し、基礎控除額を把握する
・退職後や収入が少ない年に集中して受け取ることで節税効果が高まる
・一時金と年金形式を組み合わせ、特別控除と基礎控除を同時に活用する
・他の資産取引のタイミングとも連動させ、総合的な税務計画を立てる
※本記事の試算は簡易計算です。実際の控除額や税額は、所得全体や他の控除状況によって変わります。正確なシミュレーションはFPや税理士に相談することをお勧めします。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。