個人年金保険
個人年金保険のデメリットを検証!元本割れリスク、インフレリスク

ここでは、FPの視点から主なデメリットを数値で検証し、契約前に押さえておくべきリスクと対策を解説します。
低金利時代における返戻率の低下

個人年金保険の返戻率は、受取総額 ÷ 払込総額 × 100で計算できます。
例えば、30歳で月2万円を30年間払い込み(総額720万円)、65歳から10年間にわたり毎年80万円(総額800万円)を受け取る契約の場合、返戻率は以下の通りです。
【例】
・払込総額:720万円
・受取総額:800万円
・返戻率:800 ÷ 720 × 100 = 約111%
一見お得に見えますが、これは年率換算で約0.6%程度の利回りにしかなりません。もし同じ期間、積立NISAで年3%の複利運用をした場合、約1,170万円(税引前)になり、差は370万円以上にもなります。
【FPとしての提案】
・低金利契約では、返戻率と年利換算を必ず確認する
・積立NISAやiDeCoなど非課税運用との比較を行い、資産全体のバランスを決める
途中解約による元本割れリスク

個人年金保険は、契約初期に手数料や経費が差し引かれるため、途中解約時の返戻金は大幅に減額されます。
【例】
月2万円を5年間(総額120万円)払い込み、5年目に解約した場合
解約返戻金:約80万円(返戻率 約67%)
このように、解約のタイミングによっては数十万円単位の損失になることも珍しくありません。
特にライフイベントや収入減少で支払いが困難になる可能性がある方は要注意です。
【FPとしての提案】
・契約前に解約返戻金の一覧表を確認する
・緊急時に使える流動性資産(預金や短期運用資金)を別に確保しておく
・ライフプランに沿った無理のない保険料設定を行う
インフレリスクと他の金融商品との比較

個人年金保険の受取額は基本的に固定です。物価が上昇すると、将来の受取金の購買力が大きく低下します。
【例】
契約時点で200万円の受取予定(20年後)
インフレ率2%が20年間続く場合、200万円の価値は以下に目減りします。
実質価値:200万円 ÷ (1.02)^20 ≈ 約134万円相当(現時点の購買力)
つまり、表面上は200万円を受け取っても、実質的には約66万円の価値を失うことになります。
株式やREITなどはインフレ時に資産価値が上昇する可能性がありますが、元本保証はありません。逆に個人年金保険は元本保証に近い安全性がある代わりに、インフレ耐性が低いという構造です。
【FPとしての提案】
・資産の一部はインフレ対応資産(株式、REIT、インフレ連動債)へ分散
・年金保険は安全資産枠として利用し、全体の20〜30%程度に留める
・将来のインフレシナリオを複数想定し、受取額の実質価値を試算する
まとめ
個人年金保険のデメリットは、数字で確認するとより明確になります。
・低金利契約では年利0.6%前後にとどまるケースが多い
・途中解約では返戻率が60〜70%程度に落ち込む場合も
・インフレ2%が続くと20年後には実質価値が3割以上目減りする
契約前には、返戻率の年利換算、解約時の返戻金、インフレ影響のシミュレーションを行い、他の金融商品との組み合わせによる分散戦略を検討することが、老後資金を守るための鍵となります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。