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フラット35の融資限度額引き上げ解説|2025年最新情報と利用条件を解説

住宅価格の高騰が続く中、国土交通省が長期固定型の住宅ローン「フラット35」の融資限度額を引き上げる検討に入りました。現在の限度額8000万円は2005年から変わっておらず、実に20年ぶりの見直しとなる可能性が出てきています。本記事では、融資限度額引き上げの背景と最新動向、フラット35の基本情報から利用条件まで、住宅購入を検討している方に必要な情報を網羅的に解説していきます。
フラット35の融資限度額引き上げが検討される背景

20年ぶりの大幅見直しへ
2025年11月6日、国土交通省は住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利型の住宅ローン「フラット35」について、融資限度額の引き上げ検討に入りました。現在の融資限度額である8000万円は2005年から据え置かれており、この間に住宅価格は大きく変動してきたのです。
引き上げ額については財務省などと協議を進めており、政府が今秋にとりまとめる経済対策に盛り込む方向で調整が進められています。実現すれば、実に20年ぶりの融資限度額引き上げとなるでしょう。
住宅価格高騰への対応が急務に
融資限度額引き上げの検討背景には、深刻な住宅価格の高騰があります。不動産経済研究所のデータによると、2024年の東京23区における新築マンション1戸あたりの平均販売価格は1億1181万円に達しました。建築費の高騰や適地不足が続く中、特に都心部のマンション価格は上昇を続けている状況です。
このような市場環境において、現行の8000万円という融資限度額では、購入希望者の資金ニーズに応えきれないケースが増えてきたのが実情といえます。
金利上昇でフラット35への関心が高まる
日本銀行が2024年3月にマイナス金利政策を解除し、利上げに転じたことで、住宅ローン市場にも変化が訪れました。変動金利型の住宅ローンの金利が上昇する中、全期間固定金利のフラット35に対する注目度が高まっています。
実際、2025年7月から9月のフラット35申請戸数は1万4223戸となり、前年同期と比較して約5割増加しました。金利上昇リスクを避けたい住宅購入者が、返済額が確定する固定金利型への切り替えを検討しているのです。
フラット35の2025年11月最新金利情報

現在の借入金利水準
2025年11月時点におけるフラット35の最新金利は以下の通りです。借入期間21年以上35年以下の場合、融資率9割以下で年1.90%、融資率9割超で年2.01%となっています。借入期間20年以下のフラット20では、融資率9割以下で年1.51%、融資率9割超で年1.62%の金利が適用されます。
前月と比較すると、いずれも0.01ポイント上昇しており、2カ月ぶりの金利上昇となりました。長期金利の動向を反映し、今後も緩やかな上昇傾向が続く可能性があるでしょう。
全期間固定金利のメリット
フラット35の最大の特徴は、借入時から返済終了まで金利が一切変動しない全期間固定金利であることです。変動金利型では将来の金利上昇リスクを借入者が負うことになりますが、固定金利型なら返済計画が立てやすく、安心して住宅ローンを組めます。
特に金利上昇局面においては、早期に固定金利で借り入れることで、将来の金利上昇による返済額増加を回避できる点が評価されています。
フラット35とは?基本的な仕組みを解説

民間金融機関と住宅金融支援機構の連携
フラット35は、住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供する住宅ローンです。利用者が民間金融機関から借り入れた住宅ローンを住宅金融支援機構が買い取り、それを証券化することで、長期固定金利の住宅ローンを実現しています。
この仕組みにより、民間金融機関単独では提供が難しい最長35年の全期間固定金利ローンが可能となっているのです。フラット35の申し込みは全国300以上の金融機関で受け付けており、都市銀行、地方銀行、信用金庫など幅広い窓口から利用できます。
フラット35の特徴的なポイント
フラット35には、民間の住宅ローンと異なる特徴がいくつか存在します。まず、保証料が不要であることが挙げられます。多くの民間住宅ローンでは保証会社への保証料が必要ですが、フラット35ではその負担がありません。
また、繰上返済手数料も無料となっており、余裕資金ができた際に気軽に繰上返済が可能です。さらに、団体信用生命保険への加入は任意となっており、健康上の理由で団信に加入できない方でも利用できる柔軟性があるでしょう。
フラット35の利用条件を詳しく解説

申込人に関する条件
フラット35を利用するには、まず申込時の年齢が満70歳未満である必要があります。完済時年齢は80歳未満となっており、借入期間は15年以上35年以下が基本です。ただし、申込人または連帯債務者の年齢が満60歳以上の場合は、10年以上から借入可能となっています。
日本国籍を有する方のほか、外国籍の方でも「永住者」または「特別永住者」の資格があれば申し込みが可能です。親子リレー返済を利用する場合は、申込人の年齢要件がなくなり、後継者の年齢を基準とすることができます。
年収と返済負担率の基準
フラット35では、年収に占める年間返済額の割合に明確な基準が設けられています。年収400万円未満の方は返済負担率30%以下、年収400万円以上の方は35%以下が条件となるのです。
この年間返済額には、フラット35だけでなく、自動車ローン、カードローン、教育ローンなどすべての借入の返済額が含まれます。そのため、他にローンがある場合は、それらを含めた総返済負担率が基準内に収まるよう注意が必要でしょう。
対象となる住宅の技術基準
フラット35で融資対象となる住宅には、住宅金融支援機構が定める技術基準への適合が求められます。住宅の床面積は、一戸建て住宅で70㎡以上、マンションなどの共同住宅で30㎡以上が必要です。
また、耐震性や省エネルギー性など、一定の性能基準を満たす必要があり、第三者機関による物件検査を受けて適合証明書を取得しなければなりません。2023年度以降、すべての新築住宅は省エネ基準への適合が必須となっています。
フラット35Sで金利優遇を受ける方法

省エネ性能・耐震性に優れた住宅への優遇
フラット35Sは、省エネルギー性や耐震性などに優れた質の高い住宅を取得する場合に、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。金利Aプランでは当初10年間、金利Bプランでは当初5年間、年0.25%の金利引き下げが受けられます。
長期優良住宅や低炭素住宅などの認定を受けた住宅は金利Aプランの対象となり、総返済額を大幅に軽減できるでしょう。ただし、フラット35Sには予算金額があり、予算に達すると受付が終了する点に注意が必要です。
フラット35子育てプラスの活用
2024年2月から開始された「フラット35子育てプラス」は、子育て世帯や若年夫婦世帯を対象とした金利引き下げ制度です。子どもの人数に応じて、当初5年間または10年間、年0.25%から最大年1.0%の金利引き下げが受けられます。
借入申込時に18歳未満の子どもを有する世帯、または夫婦のいずれかが40歳未満の若年夫婦世帯が対象となり、子どもの人数が多いほど金利引き下げ幅も大きくなる仕組みです。
フラット35のメリットとデメリット

安心の全期間固定金利がもたらすメリット
フラット35の最大のメリットは、やはり返済終了まで金利が変わらない安心感にあります。借入時に総返済額が確定するため、長期的な資金計画が立てやすく、将来の金利上昇リスクを心配する必要がありません。
また、保証料不要、繰上返済手数料無料という点も大きな利点です。頭金が少なくても借入可能で、融資率9割以下なら比較的低い金利が適用されます。団信への加入が任意となっている点も、健康上の理由で加入が難しい方にとっては重要なメリットといえるでしょう。
考慮すべきデメリット
一方で、フラット35にもいくつかのデメリットが存在します。まず、変動金利型と比較すると金利水準が高めに設定されている点です。金利が低下局面では、変動金利型の方が総返済額を抑えられる可能性があります。
また、融資実行時の金利が適用されるため、申込から融資実行までの間に金利が上昇するリスクがあるでしょう。物件検査の費用が別途必要となることや、借入額が建設費または購入価額の9割を超えると金利が高くなる点にも注意が必要です。
フラット35の申込手続きと必要書類

申込から融資実行までの流れ
フラット35の利用を検討する際は、まず取扱金融機関を選定することから始まります。金利や融資手数料は金融機関によって異なるため、複数の金融機関を比較検討することをおすすめします。
事前審査では、年収や他の借入状況、購入予定物件の情報などを基に融資可能性を判定します。事前審査通過後、正式な借入申込を行い、本審査へと進みます。本審査では詳細な書類審査が実施され、承認されれば融資実行となるのです。
主な必要書類
申込時に必要となる主な書類として、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)、収入証明書類(源泉徴収票や確定申告書など)、物件関連書類(売買契約書、重要事項説明書など)が挙げられます。
また、住宅金融支援機構の技術基準に適合していることを証明する適合証明書の取得も必要です。マイナポータル連携により、収入情報をインターネット経由で取得できるサービスも利用可能となっています。
フラット35と民間住宅ローンの比較

金利タイプによる選択のポイント
フラット35と民間住宅ローンの最も大きな違いは、金利タイプにあります。フラット35は全期間固定金利型のみですが、民間住宅ローンでは変動金利型、固定金利期間選択型など、複数の選択肢が用意されているのです。
変動金利型は当初の金利が低い反面、将来の金利上昇リスクを負うことになります。一方、フラット35のような全期間固定金利型は、金利変動リスクがない代わりに、当初の金利水準は高めに設定されるのが一般的でしょう。
審査基準の違い
フラット35と民間住宅ローンでは、審査基準にも違いがあります。民間住宅ローンでは勤続年数が重視されることが多いですが、フラット35には勤続年数の条件がありません。自営業者や転職したばかりの方にとっては、フラット35の方が利用しやすいケースがあります。
また、フラット35は返済負担率の基準が明確で、年収に応じた基準を満たせば審査に通りやすい傾向があるでしょう。ただし、物件の技術基準が厳格に定められている点は、民間住宅ローンとの大きな違いといえます。
住宅ローン選びで失敗しないためのポイント
ライフプランに合わせた選択を
住宅ローンを選ぶ際は、自身のライフプランや収入の見通しを十分に考慮することが重要です。収入が安定しており、金利上昇リスクを避けたい方にはフラット35が適しています。一方、当面の返済額を抑えたい方や、将来的に収入増加が見込める方は変動金利型も選択肢となるでしょう。
また、子育て世帯の場合は、フラット35子育てプラスなどの金利優遇制度を活用することで、より有利な条件で借り入れができる可能性があります。
総返済額のシミュレーションが不可欠
住宅ローンを選ぶ際は、必ず複数のパターンで総返済額をシミュレーションしてみましょう。フラット35の公式サイトや各金融機関のウェブサイトでは、借入金額や返済期間を入力することで、簡単に返済額のシミュレーションができます。
金利が0.5%や1.0%上昇した場合の返済額も試算し、家計に無理のない範囲で借入額を設定することが大切です。頭金を多めに用意できれば、借入額を抑えられ、融資率9割以下の低い金利も適用されます。
まとめ
フラット35の融資限度額引き上げ検討は、住宅価格高騰への対応として注目されています。現行の8000万円から引き上げられれば、購入希望者にとって選択肢が広がることになるでしょう。
全期間固定金利という安心感と、保証料不要などのメリットを持つフラット35は、金利上昇局面において特に魅力的な選択肢となります。ただし、金利水準の比較や、ご自身のライフプランに合わせた慎重な検討が必要です。
住宅購入は人生における大きな決断であり、住宅ローン選びは非常に重要なプロセスとなります。フラット35の特徴を十分に理解し、複数の金融機関を比較検討しながら、最適な住宅ローンを選択していただければと思います。
※本記事の情報は2025年11月7日時点のものです。最新の金利情報や制度内容については、住宅金融支援機構の公式サイトでご確認ください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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