自動車保険
もらい事故の修理費は相手の保険で全額出る?時価額の壁と特約の有無に注意

交通事故で自分の車が壊れてしまったとき、「相手の保険で全額直せるのか?」という疑問を持つ方は少なくありません。特に被害者の立場では、修理費の自己負担を避けたいと考えるのは自然なことです。しかし、実際の補償には「時価額の限度」や「特約の有無」といった重要な制約が存在します。本記事では、その仕組みと注意点を詳しく解説します。
相手の対物賠償保険で自分の車を修理できる範囲

相手が加入している対物賠償保険は、交通事故で相手が法律上の賠償責任を負う場合に利用されます。被害者の車の修理も対象ですが、注意すべきは「補償の上限が時価額である」という点です。
時価額と修理費の関係

時価額とは、同じ車種・年式・走行距離の中古車が市場で取引される価格を意味します。法律上の賠償責任はこの時価額までであり、修理費が時価額を超える場合には「経済的全損」となり、超過分は請求できません。
例えば、10年落ちの軽自動車で時価額が20万円の場合、修理費が50万円かかったとしても補償されるのは20万円までです。これが「時価額限度の原則」です。
対物差額修理費補償特約について

加害者が「対物差額修理費補償特約(対物超過修理費用特約、対物全損時修理差額費用特約)」を付帯している場合には、時価額を超える修理費用についても、50万円を上限に補償される可能性があります。ただし以下の制約があります。
・事故日の翌日から6ヶ月以内に実際に修理を行った場合に限る
・加害者側がこの特約に加入している場合のみ適用
・特約を利用するかどうかは加害者側の判断に委ねられる
この特約の適用や制約については、日弁連交通事故相談センターでも相談可能な内容です。
過失割合がある場合の補償

相手が100%悪い場合は相手の保険での補償が基本ですが、過失割合がある場合には自分の車両保険を使う必要があります。例えば過失割合が8:2で自分にも2割の責任がある場合、相手の保険では8割分しか補償されず、残りは自分で負担するか車両保険でカバーします。
無保険車の場合の対応

加害者が任意保険に入っていない場合、相手からの直接賠償が期待できないケースもあります。その際には自分の車両保険や、弁護士費用特約を活用することが重要です。
公的機関・専門機関の相談窓口

自分では判断が難しい場合、公的な相談窓口を活用するのも有効です。
・交通事故紛争処理センター
・日弁連交通事故相談センター
・各都道府県の消費生活センター
これらは中立的な立場での相談が可能で、保険会社任せにせず第三者の意見を得られる点で安心できます。
まとめ
相手の保険で自分の車を修理できるのは「修理費が時価額以下」の場合に限られます。全損扱いになると時価額までしか補償されず、修理費が超える分は基本的に自己負担です。加害者が対物差額修理費補償特約に加入していれば一部カバーされる可能性がありますが、条件や加害者の判断による制約もあります。万が一に備えて自分の車両保険の内容を確認し、必要に応じて弁護士費用特約なども検討しておくことが安心につながります。
参考情報
・法務省「民法(債権関係)の改正に関する情報」
・日弁連交通事故相談センター
・交通事故紛争処理センター
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。