自動車保険
もらい事故でも自分の保険を使うべき?過失ゼロでも等級が下がらない仕組みを解説

交通事故の中でも自分に過失がゼロである「もらい事故」は、被害者にとって判断が難しい場面です。「相手が全面的に悪いのだから自分の保険は使わない方がよいのでは?」と考えがちですが、実務上は保険会社への連絡や特約の活用、そして自分の補償の請求を先んじて進めることで早期解決につながります。
本記事では、法制度上の制約(示談代行は不可)を押さえつつ、もらい事故で自分の保険をどう使うべきかを整理します。
「もらい事故」でも自分の保険を使う3つの理由

この章では、過失割合が0でも保険会社へ連絡し、サービスや特約を活用すべき理由を解説します(示談交渉の代行は不可)。
・理由1:初動対応の助言・手続き案内を受ける(示談代行ではない)
過失ゼロの場合、保険会社は相手方への示談交渉の代行はできません。一方で、事故受付、必要書類の案内、相手保険会社との連絡窓口の整理、記録化のポイントなど、相談・助言は受けられます。法制度(弁護士法72条)上の制約を理解したうえで、迷ったらまず自社のカスタマー窓口に相談しましょう。
・理由2:弁護士費用特約を発動し、交渉は弁護士に任せる
過失ゼロでも相手方との賠償協議がこじれることは珍しくありません。弁護士費用特約に加入していれば、弁護士が示談交渉を担います(保険会社は代行不可)。費用負担の心配を抑えつつ、法的に適切な解決が期待できます。
・理由3:自身のケガの治療費などを自分の補償で迅速にカバー
人身傷害保険に加入していれば、過失割合に関係なく治療費・休業損害・後遺障害等(契約条件内)を請求できます。相手方の賠償が遅れても、自分の補償でスピード感ある支払いを受け、後日保険会社間で精算されるのが一般的です。さらに、相手の自賠責保険への「被害者請求」という公的な請求ルートもあります(後掲「出典」参照)。
過失ゼロでも等級は下がる?「ノーカウント事故」の仕組み

この章では、保険料への影響を最小化する考え方を解説します。
ノーカウント事故とは、もらい事故のように過失割合が0のケースで、所定の条件下では保険を使っても翌年の等級が下がらない取り扱いを指す、業界で一般的な考え方です。契約内容により判定や対象範囲は異なるため、ご自身の契約条件(対象となる事故の範囲・申請手順など)を事前に確認しておきましょう。
・ポイント:
事故受付や人身傷害の支払いがあっても、一定条件を満たすノーカウント事故に該当すれば、翌年の等級・保険料に影響しない取り扱いがなされます(詳細は各社の約款・パンフレットで確認)。
もらい事故の際にやってはいけない3つのこと

事故直後は判断を誤りがちです。次のNG行動を避けて、証拠の保全と冷静な手続きを意識しましょう。
・NG1:その場での口頭示談はしない
感情的・不十分な情報のまま合意すると不利になります。必ず警察に通報・事故証明を取得し、書面と証拠(写真・ドライブレコーダー・診断書)を残しましょう。
・NG2:虚偽・推測で報告しない
事実と異なる申告は後日のトラブルや保険金支払いの支障に直結します。分からない点は「不明」とし、追って資料で補強しましょう。
・NG3:安易に謝罪しない
一般的な謝意の表明が過失の自認と受け取られるおそれがあります。現場では事実確認と安全確保を優先し、やり取りは記録に残すことを徹底します。
まとめ|もらい事故でも自分の保険を活用するメリット
結論:過失ゼロの「もらい事故」では、保険会社に相談し、弁護士費用特約で交渉は弁護士へ、人身傷害保険で自分の損害を先にカバーするのが、早く確実な解決の近道です。ノーカウント事故の取り扱いに該当すれば、翌年の等級が下がらず保険料への影響も抑えられます。相手の支払いが滞る場合には、公的制度である自賠責の被害者請求も併用しましょう。
出典
・弁護士法(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止:第72条)
e-Gov法令検索
・自賠責保険「被害者請求」の手続(請求ルート・流れ)
国土交通省(自賠責)
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。