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その金融記事、出典は確認しましたか?誤情報リスクを防ぐ情報源の選び方

「この記事に書かれている数字、本当に正しいのだろうか」「公開後に間違いが発覚したらどうしよう」——金融や保険に関するコンテンツを発信する企業担当者にとって、誤情報リスクは常に頭を悩ませる問題です。
年金制度の改正内容、保険料の計算方法、NISAの利用状況など、金融分野の情報は制度変更が頻繁に起こるうえ、数字の誤りが読者の経済的判断に直結します。一度公開した誤情報は企業の信用を損ない、場合によっては法的リスクにも発展しかねません。
本記事では、金融記事の発注や監修を担当する方に向けて、信頼できる情報源の選び方と、記事の品質を見極めるポイントを解説します。
金融記事で誤情報が生まれる原因

金融・保険分野の記事で誤情報が発生する背景には、共通したパターンが存在します。発注側がこれを理解しておくことで、リスクを未然に防ぐことが可能になります。
原因1:古い情報のまま更新されていない
年金制度や税制は毎年のように改正されています。たとえば在職老齢年金の支給停止調整額は、2024年4月に48万円から50万円へ変更されました。過去の記事をそのまま引用したり、更新を怠ったりすると、現行制度と異なる情報を発信してしまう恐れがあります。
原因2:二次情報や個人ブログを鵜呑みにしている
検索上位に表示される記事が必ずしも正確とは限りません。民間メディアや個人ブログの情報は、元の公的資料を誤解していたり、特定の商品・サービスへの誘導を目的としていたりするケースも散見されます。
原因3:出典が明記されていない
「〇〇万円」「〇〇%」といった数字が記事中に登場しても、その出典が示されていなければ検証のしようがありません。出典のない記事は、正確性の担保が困難なうえ、制度改正時に更新すべき箇所の特定も難しくなります。
原因4:AI生成コンテンツの検証不足
近年ではChatGPTなどのAIによる記事生成も普及していますが、AIは最新の制度改正を反映しきれなかったり、存在しない統計データを生成したりするリスクがあります。いわゆる「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる現象で、一見もっともらしい数字や出典が実際には存在しないというケースが報告されています。
AIの利便性が高まる一方で、最終的な「情報の裏取り(ファクトチェック)」を公的資料に照らして行える専門家の役割は、これまで以上に重要になっています。特に金融分野では、誤った数字が読者の資産形成に影響を与える可能性があるため、人間による検証プロセスは欠かせません。
監修の現場では、ライターへの依頼をせず自社でAIを使って初稿を作成し、監修者に直接ファクトチェックを依頼するという案件が増えていると感じます。AIによる効率化と、専門家による品質担保を組み合わせる流れは今後も続くでしょう。
避けるべき情報源の特徴

金融記事の作成・発注において、注意が必要な情報源には共通点があります。
調査元が不明な統計データ
「調査によると」「統計では」といった表現で数字が紹介されているものの、調査主体や調査時期が明記されていない情報は要注意です。誰が、いつ、どのような方法で調べたのかが分からなければ、その数字の信頼性は判断できません。
更新日が古い、または記載がない記事
金融分野では制度改正が頻繁に行われるため、情報の鮮度は重要な判断材料となります。記事の公開日・更新日が確認できない場合や、明らかに古い情報のまま放置されている記事を参考にするのはリスクが伴います。
特定の商品・サービスへの誘導が目的の記事
アフィリエイト収益を主目的とした記事では、商品を魅力的に見せるために都合の良い情報だけを抜き出していることがあります。中立的な立場からの情報提供になっているか、注意深く確認する必要があります。
信頼できる公的機関と主要データソース

金融・保険分野で優先的に参照すべきは、公的機関が公表する一次資料です。調査方法や集計プロセスが明確であり、著作権の問題も生じにくいという利点があります。
厚生労働省
年金、医療、介護など社会保障全般の情報を網羅しています。
・厚生労働統計一覧:人口動態、医療費、賃金構造など幅広い統計を公開
・財政検証:5年ごとに実施される年金財政の将来見通し
・国民生活基礎調査:世帯の所得や健康状況を調査した基礎データ
令和5年度の厚生年金保険・国民年金事業の概況では、公的年金被保険者数が6,745万人、受給者の年金総額が56兆8,281億円と報告されています。
金融庁
投資制度や金融商品に関する情報は金融庁の公表資料が基本です。
・NISA利用状況調査:口座数や買付額の推移を定期公表
・金融行政方針:金融庁の政策方針と進捗状況
・各種ガイドライン:金融商品取引に関する規制や指針
その他の重要機関
テーマに応じて、以下の機関も信頼できる情報源となります。
・日本年金機構:年金の届出手続きや計算方法の詳細
・国税庁:所得税、相続税、贈与税の税率や申告手続き
・年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF):公的年金積立金の運用実績
・政府統計の総合窓口(e-Stat):各府省の統計データを横断検索
記事の品質を見極める5つのチェックポイント

外部ライターへの発注や監修依頼を行う際、記事の品質を判断するための具体的なチェックポイントを紹介します。AI生成コンテンツの検証にも活用できる視点です。
チェック1:数字に出典が明記されているか
記事中に登場する金額、割合、人数などの数値には、必ず出典が付されているべきです。「厚生労働省の調査によると」といった曖昧な表現ではなく、具体的な資料名やURLが示されているかを確認しましょう。
チェック2:公的機関の一次資料を参照しているか
年金額や税率といった制度に関する情報は、公的機関の公式発表を直接参照しているかどうかが重要です。民間メディアの記事を孫引きしている場合、途中で誤りが混入している可能性があります。
チェック3:情報の鮮度は適切か
参照している統計や制度情報が最新版かどうかを確認します。特に年度をまたぐ時期は、前年度のデータが残っていることがあるため注意が必要です。
チェック4:用語の定義を正確に理解しているか
たとえば年金の「受給者数」にも、延べ人数と実人数の違いがあります。統計データの定義を正確に把握したうえで記事が作成されているか、確認することが望ましいといえます。
チェック5:出典URLは実在するか
AI生成コンテンツでは、実在しないURLや資料名が記載されていることがあります。記載された出典リンクが実際にアクセス可能か、リンク先の内容が記事の記述と一致しているかを必ず検証してください。
まとめ
金融・保険分野の記事では、情報の正確性が企業の信用に直結します。誤情報リスクを防ぐためには、出典が明確で、公的機関の一次資料に基づいた記事を発信することが欠かせません。
AI活用が進む現在、記事の初稿作成は効率化できても、ファクトチェックの重要性はむしろ高まっています。厚生労働省、金融庁、日本年金機構といった公的機関のデータを読み解き、正確性を担保できる専門家の存在が、信頼できるコンテンツづくりの鍵となります。
記事の発注や監修依頼を行う際は、本記事で紹介したチェックポイントを活用し、数字の出典、情報の鮮度、用語の正確性などを確認することをおすすめします。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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