時事ネタ
【2026年度】分娩費用が「実質無償化」へ!FPが解説する制度変更のポイント
厚生労働省は、出産にかかる分娩費用について、妊婦の自己負担をゼロにする方針を固めました。
これまでの「出産育児一時金」による支給から、公的医療保険による「現物給付(窓口負担なし)」への転換を目指す、非常に大きな制度変更です。
2024年12月4日の社会保障審議会・医療保険部会で提起され、2026年の通常国会での法改正、同年度中の開始を目指しています。
今回の報道に基づき、制度の変更点と、家計への影響について解説します。
制度変更の概要:現金給付から「保険適用」へ
今回の最大の変更点は、現行の現金給付(出産育児一時金)から、保険適用による全国一律価格設定への移行です。
現行制度(〜2025年度まで想定)
・仕組み: 自由診療(医療機関が自由に価格を設定)。
・支給: 子ども1人につき50万円の「出産育児一時金」を支給。
・負担: 費用が50万円を超えた分は、妊婦の自己負担となる。
新制度案(2026年度〜めど)
・仕組み: 正常分娩の費用を「公的医療保険」の適用対象とする。
・価格: 全国一律の単価(公定価格)を設定。
・負担: 窓口での自己負担をゼロにする方向で調整。
これまでは、病院によって費用が異なり、一時金(50万円)では足りずに持ち出しが発生するケースが多くありました。新制度では「保険適用」かつ「自己負担ゼロ」とすることで、安心して出産できる環境を整える狙いがあります。
「無償化」の対象と例外
すべての費用が無料になるわけではなく、サービス内容によって明確に区分けされる見通しです。
1. 無償化(保険適用)となるもの
・基本的な分娩費用(正常分娩)
・全国一律で設定された標準的な医療サービス
2. 自己負担となるもの
・付加サービス: いわゆる「お祝い膳」や個室代、エステ、アロマなど。
報道によると、これらは保険適用外のサービスとして扱われ、希望者が追加費用を全額自己負担する方向で調整されています。
3. 帝王切開などの扱い
・すでに保険適用されている異常分娩(帝王切開など)については、現行通り「3割負担」を維持する方向です(高額療養費制度の対象となります)。
・※ただし、正常分娩が無料になる中で、帝王切開の方だけ負担が残る不公平感をどう解消するかは、今後の調整課題となります。
制度変更の背景
政府がこの制度変更を急ぐ背景には、物価高騰と地域格差の拡大という2つの大きな要因があります。
分娩費用の高騰
インフレや医療従事者の賃上げを背景に、分娩費用は年々上昇しています。
2024年度の正常分娩の平均費用は51万9,805円で、10年間で約2割も上昇しました。現行の50万円の一時金では賄いきれないケースが増加しており、制度の限界が指摘されていました。
地域間・施設間の格差
・地域差: 2024年度の費用は、東京都が最高で約65万円、熊本県が最低で約40万円と、約25万円もの開きがあります。
・不透明さ: 食事代などのサービス料が基本料金に含まれており、妊婦側が「安く済ませたい」と思っても選択できない(費用構造が見えにくい)施設が多いことも課題視されていました。
今後のスケジュール
今後の法改正までの流れは以下の通りです。
・2024年内: 社会保障審議会にて方向性をとりまとめ。
・2025年明け: 全国一律となる「基本単価」の金額について議論を開始。
・2026年(通常国会): 関連法の改正案を提出。
・2026年度中: 新制度の開始を目指す。
まとめ
2026年度を目処に進められるこの改革は、これから出産を考える世帯にとって非常に大きなメリットとなります。一方で、「個室代」や「豪華な食事」などは実費負担となるため、病院選びの基準が「費用の安さ」から「付加価値の有無」へとシフトしていく可能性があります。
制度の詳細や単価設定については2025年に議論が本格化しますので、引き続き注視が必要です。



