相続
【公正証書遺言】法律の専門家が作成で無効リスクほぼゼロ!作成手順と費用を徹底解説

遺言書を作成したいけれど、「自分で書いて法的に有効な遺言書になるか不安」「形式不備で無効になったらどうしよう」という心配を抱えていませんか。そんな方におすすめなのが公正証書遺言です。民法第969条に定められた公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が作成するため、形式不備で無効になるリスクがほとんどなく、公証役場で厳重に保管されるため紛失や改ざんの心配もありません。
この記事では、公正証書遺言の作成要件から具体的な手続き、費用の目安まで、わかりやすく解説します。
公正証書遺言とは?最も確実で安全な遺言書の形式

公正証書遺言は、遺言者が公証人に遺言の内容を口頭で伝え、公証人がその内容を筆記して作成する遺言書であり、民法第969条によって定められています。
公証人とは、多年裁判官、検察官または弁護士の経験を有する法曹資格者や、法律事務に長く携わり法曹資格者に準ずる学識経験を有する者が任命される専門家です。法的知識と実務経験が豊富なため、複雑な内容でも法律的に整理された遺言書を作成できます。
出典:Q2.公正証書遺言には、どのようなメリットがありますか?|日本公証人連合会
民法969条が定める公正証書遺言の5つの要件

民法第969条は、公正証書遺言を作成するための方式として、以下の5つの要件を定めています。
要件1:証人2人以上の立会い
公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立会いが必要となります。証人は、遺言者の本人確認、精神状態の確認、遺言の真正な成立の証明、および公証人の職権濫用防止という役割を担っています。
要件2:遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授
遺言者は、遺言の内容を公証人に口頭で伝えます。これを「口授」といい、遺言者の真意を確認する重要な手続きとなっています。
なお、口がきけない方の場合は、2011年の民法改正により、通訳人の通訳による申述または自書によって口授に代えることができるようになりました(民法第969条の2)。
要件3:公証人による筆記と読み聞かせ
公証人は、遺言者の口述内容を筆記し、これを遺言者および証人に読み聞かせるか、閲覧させることが必要となります。筆記は遺言者の口述を一言一句そのまま書き写す必要はなく、その趣旨や精神に従って筆記すれば足りるとされています。
要件4:遺言者および証人による署名・押印
遺言者および証人は、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すことが必要です。ただし、遺言者が署名できない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができます。
要件5:公証人による方式適合の付記と署名・押印
公証人は、その証書が上記の方式に従って作成されたものである旨を付記して、これに署名し、印を押すことが必要です。
出典:Q2.公正証書遺言と自筆証書遺言には、どのような違いがありますか?|日本公証人連合会
公正証書遺言の6つのメリット

公正証書遺言には、自筆証書遺言にはない大きなメリットがあります。
メリット1:法的に有効な遺言書が確実に作成できる
最大のメリットは、法律の専門家である公証人が作成するため、形式不備で遺言が無効になるリスクがほとんどないことです。複雑な内容であっても、法律的に見てきちんと整理した内容の遺言書を作成できます。
自筆証書遺言の場合、「日付の記載漏れ」「訂正方法の誤り」などの形式不備で無効になることがありますが、公正証書遺言ではそのような心配がありません。
メリット2:公証役場で厳重に保管され紛失・改ざんのリスクがない
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるため、紛失、破棄、隠匿、改ざんされる心配が全くありません。自筆証書遺言を自宅で保管していた場合、発見されなかったり、相続人の誰かに破棄されたりするリスクがありますが、公正証書遺言ではそのような心配は不要です。
さらに、日本公証人連合会では、平成26年以降に作成された全国の遺言公正証書の原本について電磁的記録を作成し二重に保存しているため、震災等により原本が滅失した場合でも復元が可能となっています。
メリット3:検認手続きが不要でスムーズに相続手続きができる
自筆証書遺言の場合、遺言者の死亡後に家庭裁判所での検認手続きが必要となり、手続きに1ヶ月以上かかることもあります。しかし、公正証書遺言は検認手続きが不要なため、相続開始後すぐに遺言の内容を実行できます。
出典:遺言書の検認|裁判所
メリット4:字が書けなくても作成できる
自筆証書遺言は財産目録以外を全文手書きする必要がありますが、公正証書遺言は公証人が筆記するため、体力が弱り手書きが困難になった場合でも作成可能です。
さらに、病気などで署名すらできなくなった場合でも、公証人がその事由を付記して署名に代えることができます。
メリット5:全国の公証役場で遺言書の有無を検索できる
平成元年以降に作成された公正証書遺言については、相続開始後、相続人などの利害関係人が全国どこの公証役場からでも、被相続人が公正証書遺言を作成したかどうかを検索できます。遺言書の存在を知らずに相続手続きを進めてしまうリスクを防げます。
メリット6:公証人の出張も可能
高齢や病気などで公証役場に出向くことが困難な場合、公証人に自宅や病院、介護施設などへ出張してもらい、遺言書を作成することも可能です。
公正証書遺言の作成手順

公正証書遺言の作成は、以下のような流れで進みます。
ステップ1:遺言の内容を整理する
まず、誰にどの財産を相続させるかを整理しましょう。不動産、預貯金、株式などの財産をリストアップし、それぞれの相続先を決めます。この段階で弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に相談することもできます。
ステップ2:必要書類を準備する
公正証書遺言の作成には、以下のような書類が必要となります。
・遺言者の印鑑登録証明書
・遺言者と相続人の関係を示す戸籍謄本
・財産を相続人以外に渡す場合は、その人の住民票
・不動産がある場合は、登記事項証明書と固定資産評価証明書
・預貯金や株式がある場合は、通帳のコピーや残高証明書
ステップ3:公証役場に予約・相談する
最寄りの公証役場に連絡し、公正証書遺言作成の予約を取ります。この際、事前に遺言の内容を公証人に伝え、必要な書類や手数料について確認しましょう。公証人が事前に遺言書の原案を作成してくれます。
ステップ4:証人2人を手配する
証人として適任者が見つからない場合は、公証役場から紹介してもらうことも可能です。紹介を受けた場合は、証人1人あたり1万円前後の日当が必要となります。
ステップ5:公証役場で遺言書を作成する
予約した日時に、遺言者本人が公証役場に出向き、証人2人の立会いのもと、公証人に遺言の内容を口頭で伝えます。公証人が内容を筆記し、読み聞かせた後、遺言者と証人が署名・押印します。
ステップ6:正本・謄本を受け取る
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されますが、遺言者には正本(原本と同じ効力を持つ証書)と謄本(その写し)が交付されます。正本は遺言者が保管し、相続開始後の手続きに使用します。
公正証書遺言の作成費用

公正証書遺言の作成費用は、公証人手数料令という政令で法定されており、遺言により相続させまたは遺贈する財産の価額によって決まります。なお、2025年10月1日に公証人手数料令が改正され、手数料体系が一部変更されました。
基本手数料(財産を受け取る人1人あたり)
財産を受け取る人ごとに、以下の基準で手数料が計算されます。
・財産価額50万円以下:3,000円
・財産価額50万円超100万円以下:5,000円
・財産価額100万円超200万円以下:7,000円
・財産価額200万円超500万円以下:13,000円
・財産価額500万円超1,000万円以下:20,000円
・財産価額1,000万円超3,000万円以下:26,000円
・財産価額3,000万円超5,000万円以下:33,000円
・財産価額5,000万円超1億円以下:49,000円
出典:Q7.公正証書遺言の作成手数料は、どれくらいですか?|日本公証人連合会
遺言加算
遺言公正証書の目的価額の合計額が1億円以下の場合は、上記の基本手数料の合計額に1万3,000円が加算されます。これは「遺言加算」と呼ばれ、ほとんどのケースで必要となる費用です。
具体例:総額8,000万円の財産を配偶者1人に相続させる場合
・基本手数料:49,000円(財産価額5,000万円超1億円以下の手数料)
・遺言加算:13,000円
・合計:62,000円
このほか、原本の枚数が3枚を超える場合は用紙代(1枚につき300円)、正本・謄本の発行手数料(電子データの場合は各1通2,500円、書面の場合は1枚につき300円)が必要です。
公証人の出張を依頼する場合
病気などで公証役場に出向けず、公証人に出張を依頼する場合は、以下の費用が追加されます。
・病床執務加算:基本手数料の50%(遺言加算は除く)
・日当:4時間まで1万円、1日2万円
・交通費:実費
証人になれない人(欠格事由)

公正証書遺言の作成には証人2人の立会いが必要ですが、民法第974条により、以下の人は証人になることができません。
・未成年者
・推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者および直系血族
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人
推定相続人(遺言者が亡くなったときに相続人になる予定の人)や、遺言書で財産を受け取る人(受遺者)、およびこれらの人の配偶者や子・孫・親などは証人になれません。
適任者が見つからない場合は、公証役場から証人を紹介してもらうか、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に依頼することができます。
公正証書遺言のデメリット

公正証書遺言にも、以下のようなデメリットがあります。
デメリット1:費用がかかる
自筆証書遺言は基本的に費用がかかりませんが(法務局の保管制度を利用する場合は3,900円)、公正証書遺言は財産額に応じて数万円から十数万円の費用が必要となります。
デメリット2:証人に遺言の内容を知られる
証人2人の立会いが必要なため、遺言の内容を完全に秘密にすることはできません。公証人や証人には守秘義務がありますが、どうしても他人に内容を知られたくない場合は、公正証書遺言の利用はしにくいかもしれません。
デメリット3:手続きに時間と手間がかかる
自筆証書遺言はいつでも自分で書けますが、公正証書遺言は公証役場への予約、必要書類の準備、証人の手配など、作成までに一定の時間と手間がかかります。
デメリット4:内容変更のたびに費用がかかる
遺言書は財産状況や家族関係の変化に応じて書き直すことが望ましいですが、公正証書遺言を変更するには、再度公証役場で作成し直す必要があり、そのたびに費用がかかります。頻繁に内容を変更する可能性がある場合は、自筆証書遺言の方が適しているかもしれません。
まとめ:確実で安全な遺言書なら公正証書遺言
公正証書遺言について、以下のポイントを押さえておきましょう。
・公証人という法律の専門家が作成するため、形式不備で無効になるリスクがほとんどない
・公証役場で厳重に保管され、紛失・改ざんの心配がない
・検認手続きが不要なため、相続開始後すぐに手続きができる
・字が書けなくても作成できる
・費用は財産額に応じて数万円から十数万円程度
・証人2人の立会いが必要(推定相続人や受遺者は証人になれない)
・公証人の出張も可能(病気などで公証役場に行けない場合)
公正証書遺言は、費用や手間はかかりますが、「法的に確実で安全な遺言書を残したい」「複雑な内容の遺言書を作成したい」「字が書けなくなっても遺言書を作成したい」という方に最適な方法といえます。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
金子賢司へのライティング・監修依頼はこちらから。ポートフォリオもご確認ください。



