医療保険
パート・非正規雇用者に民間医療保険は必要?公的保障の違いを踏まえた判断基準

パートや非正規雇用で働く場合、民間の医療保険が必要かどうかは加入している公的医療保険の種類によって判断が変わります。配偶者の扶養に入っている場合と、勤務先の社会保険に加入している場合では、利用できる公的保障の内容に違いがあるためです。特に傷病手当金の有無は、民間医療保険の必要性を左右する重要なポイントとなります。この記事では、公的医療保険の仕組みを整理したうえで、民間医療保険が必要なケースと不要なケースの判断基準を解説します。
働き方で変わる公的医療保険の種類

民間医療保険の要否を判断する前に、自分がどの公的医療保険に加入しているかを正確に把握しておく必要があります。
配偶者の健康保険の扶養に入っている場合
年間収入が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円未満)で、配偶者の健康保険の扶養に入っている場合、自分で健康保険料を支払う必要はありません。医療費の自己負担割合は原則3割で、高額療養費制度も利用可能です。
ただし、扶養に入っている場合は傷病手当金を受け取ることができません。傷病手当金は健康保険の「被保険者」に対する給付であり、「被扶養者」は対象外です。病気やケガで働けなくなった場合の収入保障がない点は、民間保険の要否を判断するうえで重要なポイントとなります。
勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している場合
パートでも一定の条件を満たすと、勤務先の社会保険に加入します。この場合、傷病手当金(給与の約3分の2、最長1年6か月)を受け取る権利が発生するため、病気やケガで働けない期間の収入減にも一定の備えがある状態です。
出典:全国健康保険協会「傷病手当金」
国民健康保険に加入している場合
配偶者の扶養から外れ、かつ勤務先の社会保険にも加入していない場合は、国民健康保険に加入します。国民健康保険には傷病手当金の制度がありません(コロナ特例を除く)。高額療養費制度は利用可能ですが、就業不能時の収入保障がない点は扶養の場合と同様です。
高額療養費制度で医療費の自己負担には上限がある

民間医療保険の要否を判断するうえで最も重要なのは、高額療養費制度の仕組みを正確に把握することです。どの公的医療保険に加入していても、この制度を利用できます。
月の自己負担限度額
69歳以下で年収約370万円以下の区分(パート収入の場合はこの区分に該当するケースが多い)の場合、ひと月の自己負担限度額は57,600円です。さらに直近12か月で3回以上制度を利用した場合は「多数回該当」となり、4回目以降の上限は44,400円に引き下げられます。
出典:厚生労働省「高額療養費制度について」(PDF)
制度の対象外となる費用
高額療養費制度の対象は保険適用の診療費のみです。以下の費用は対象外となります。
・差額ベッド代(個室料)
・入院中の食費
・先進医療にかかる技術料
・通院時の交通費
民間医療保険で備えるべきは、医療費全体ではなく、高額療養費制度でカバーされない自己負担部分と対象外費用に限られます。月57,600円+対象外費用を預貯金でカバーできるかどうかが判断の分かれ目です。
民間医療保険が必要なケースと不要なケース

公的保障の内容を踏まえたうえで、民間医療保険の要否を判断しましょう。
民間医療保険の優先度が高いケース
・扶養内で傷病手当金がなく、預貯金も十分でない場合:病気やケガで収入が途絶え、かつ医療費の自己負担を預貯金でカバーできない状況では、入院給付金や就業不能保障の必要性が高まる
・国民健康保険に加入しており、傷病手当金がない場合:扶養の場合と同様に就業不能時の収入保障がないため、民間保険での備えを検討する価値がある
・世帯の収入を自分のパート収入に大きく依存している場合:自分が働けなくなった場合の家計への影響が大きい
民間医療保険の優先度が低いケース
・勤務先の社会保険に加入しており、傷病手当金が受けられる:給与の約3分の2が最長1年6か月支給されるため、就業不能時の収入減は一定程度カバーされる
・高額療養費制度の自己負担上限(月57,600円)と対象外費用を預貯金で対応できる
・配偶者の収入で家計が維持できるため、自分が一時的に働けなくなっても生活に支障がない
保険料を抑えるための具体的な方法

民間医療保険に加入する場合でも、限られた収入の中で保険料を抑える工夫が重要です。
保障内容を「公的保障でカバーできない部分」に絞る
・入院給付金日額を3,000〜5,000円程度に設定し、高額療養費制度の対象外費用(差額ベッド代・食費等)をカバーする範囲に抑える
・先進医療特約は月々数百円で付加でき、高額療養費の対象外となる先進医療費に備えられるため費用対効果が高い
・入院給付金・通院給付金・手術給付金をすべてつけるのではなく、預貯金でカバーできる部分は外す
不要な特約を外す
「あれば安心」で付加した特約が、高額療養費制度と重複していないか見直しましょう。公的保障でカバーされる範囲の医療費に対して、さらに民間保険で備える必要があるかどうかが判断基準です。
まとめ|「扶養内か社保加入か」で判断基準が変わる
パート・非正規雇用者の民間医療保険の要否は、加入している公的医療保険の種類と、家計の状況によって異なります。
・配偶者の扶養に入っている場合と国民健康保険加入の場合は傷病手当金がない。就業不能時の備えを民間保険で検討する余地がある
・勤務先の社会保険に加入していれば傷病手当金(給与の約2/3、最長1年6か月)が受けられる
・高額療養費制度により医療費の月あたりの自己負担には上限がある(年収約370万円以下の区分で月57,600円)
・民間医療保険で備えるべきは高額療養費の対象外費用(差額ベッド代・先進医療費等)に絞る
・先進医療特約は月々数百円で付加でき費用対効果が高い
・保障内容は「公的保障で足りない部分」に絞り、無理のない保険料設定を心がける
まずは自分がどの公的医療保険に加入しているかを確認し、傷病手当金の有無と預貯金の状況を踏まえて、民間医療保険の要否を判断しましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した記事です。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



