火災保険
火災保険の保険金は修理前に申請できる?注意点を解説

火災や自然災害で自宅が被害を受けたとき、多くの方が「修理を急ぐべきか」「保険金はちゃんと受け取れるのか」と不安を抱えます。実際には修理を始める前に保険金を申請することが大切です。なぜなら、証拠を残さないまま修理してしまうと補償額が減ってしまう可能性があるからです。
本記事では、修理前に申請すべき理由や、修理を先行するリスク、申請に必要な準備、さらに近年導入が進む復旧義務のルールまで、最新情報を整理してわかりやすく解説します。
損害発生後、すぐに修理せず申請すべき理由

被害直後は、まず保険会社へ連絡し状況を伝えることが大切です。損害の証拠が残らなければ正確な査定ができず、補償額が減る可能性があるからです。また損害調査の前に修理や片付けを行うと、実際の被害が証明できなくなります。応急処置を行う場合も、作業前後の写真を残すことが欠かせません。
申請前に修理を進めてしまうリスク

修理を急ぐと、証拠不足や予期せぬ費用負担のリスクが高まります。
例えば、台風で屋根が破損したAさんは雨漏りを防ぐためにすぐ修理を依頼しましたが、写真を残していなかったため保険会社に被害を証明できず、想定より少ない補償しか受け取れませんでした。
さらに時価評価額(経年劣化を考慮した現在の価値での評価)で算出される場合、修理費全額が支払われないことがあります。加えて契約に定められた免責金額(自己負担分)は必ず差し引かれます。
近年、時価評価額の火災保険はほとんどありませんが、長期契約をしている場合は可能性はゼロとは言えないので、これを機会に、お手元の火災保険の補償内容をご確認ください。
修理後に申請する場合も可能ですが、その際には修理業者の見積書・請求書・領収書、そして修理前後の写真が特に重要になります。
申請のために必要な「事前の準備」とは

火災保険の申請をスムーズに行うには、被害直後に証拠と書類を整えることが欠かせません。特に写真やメモはやり直しがきかないため、被害直後に確実に残しておくことが大切です。
準備しておきたいものは以下の通りです。
・被害箇所を広角・中景・近接※と多角度で撮影した写真
・被害発生日時や原因、範囲を整理したメモ
・数量や工法まで記載された修理業者の見積書
・災害時に自治体で発行される罹災証明書
・応急処置の前後写真
※
・広角:現場全体がわかる写真(建物や道路全体など)
・中景:被害箇所が中心になる写真(屋根の一部や壁の一部など)
・近接:壊れた部分のアップ写真(ひび割れ、破損箇所など)
なお、大規模災害の場合は例外的に3年を超えて請求が認められるケースもあります。過去の大災害では保険会社が特別措置を取った事例もあるため、該当する可能性がある場合は直接保険会社に相談して確認すると安心です。
また、罹災証明書は必要がない場合がほとんどです。
準備が整ったら①保険会社へ事故連絡 → ②必要書類の案内受領 → ③資料提出 → ④損害調査対応 → ⑤支払可否と金額確定、という流れで進みます。
知っておくべき火災保険の最新ルール

火災保険は制度改正が続いており、契約時期によって条件が異なります。特に近年は建物の復旧に関する特約が広く導入されており、契約内容によっては実際に修理・復旧を行わなければ保険金が支払われない場合があります。
この特約では、損害発生日の翌日から一定期間(多くの場合3年以内)に「事故発生直前の状態(構造・質・用途・規模・型・能力などが同等以上)」に復旧した場合に限り保険金が支払われます。ただし例外として、やむを得ない事情がある場合や、復旧を確約して保険会社の承認を得た場合には復旧前でも支払いが認められることがあります。また、全損や法令上復旧できない場合には、復旧の事実がなくても保険金が支払われるケースがあります。
さらに契約期間は最長10年から5年に短縮され、免責事由も明確化されました。経年劣化や機能に影響のない軽微な損害(屋根材の釘浮き、外壁の小さなへこみなど)は対象外とされることがあります。加えて近年は火災保険を悪用する悪質業者も存在し、高額な修理契約を迫る事例も報告されているため、必ず信頼できる業者を選ぶようにしましょう。
まとめ:被害が出たらまず保険会社に相談しよう
火災や自然災害で住宅に被害が出たとき、火災保険で修理費用を補償できます。ただし保険金請求は修理より前に申請することが推奨されます。修理を急ぐと証拠が不足し、補償額が下がる恐れがあるため注意が必要です。
なるべくたくさんの証拠を残し必要書類を整え、さらに契約条件や最新ルールを確認することで、補償を確実に受けられるようにしましょう。まずは、保険会社に相談して正確なアドバイスを受けることが大切です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。