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iDeCoの税制適格特約とは?iDeCoの保険商品で注意すべきこと

「『税制適格特約』って何?通常の保険と何が違うの?」
iDeCo(個人型確定拠出年金)の運用商品には、投資信託だけでなく、元本が確保される「定期預金」や「保険」も含まれています。特にiDeCoの商品ラインナップの中でも保険商品は、その仕組みが少し複雑で、通常の保険商品とは異なる「税制適格」という条件が設けられています。
この記事では、iDeCoにおけるiDeCoにおける保険商品の仕組みと「税制適格」の条件を詳しく解説します。元本確保型でありながら、一般的な保険商品とは異なる死亡保障などの特性、そして加入する際に理解しておくべきコストや柔軟性の観点から見た注意点まで、iDeCoで保険商品を選ぶ際の重要なポイントを提案します。
iDeCoにおける保険商品の仕組みと「税制適格」の条件

iDeCoの商品ラインナップのうち、保険商品は、主に「個人年金保険(変額年金保険を含む)」の一種ですが、iDeCo制度内で運用されるためには、一般的な個人年金保険とは異なる特別な「税制適格」という条件を満たす必要があります。
iDeCoにおける保険商品の仕組み
・元本確保型が多い: iDeCoで提供される保険商品は、多くの場合、元本が保証される「定額年金保険」です。毎月拠出した掛金が保険料となり、運用中に一定の予定利率で増え、将来、決まった年金額または一時金として受け取れるタイプが主流です。
・保険会社の特別勘定: 保険会社が、iDeCo制度のために特別に設定した勘定で資産を運用します。
・運用益が非課税: iDeCo口座内で運用されるため、投資信託と同様に、運用中に得た利益(利息、配当金など)は非課税になります。
「税制適格」とは?iDeCoに認められる条件
iDeCoの運用商品として保険が提供されるためには、以下の「税制適格」の条件を満たす必要があります。これは、保険がiDeCoの目的(老後資金形成)に合致していることを示す重要な条件です。
1.掛金が月払いであること: 掛金は原則として月払いでなければなりません。
2.保険料払込期間が10年以上であること: 保険料を支払う期間が10年以上である必要があります。
3.年金受取開始が60歳以降であること: 保険契約の年金受取開始が、iDeCoの受給開始年齢である原則60歳以降でなければなりません。
4.受け取り期間が10年以上であること: 年金として受け取る場合、受け取り期間が10年以上であること(終身年金を除く)。
5.終身年金または確定年金(有期年金)であること: 一括で受け取る養老保険のような形態は認められません。
これらの条件を満たすことで、その保険商品で運用したiDeCoの掛金が所得控除の対象となり、運用益も非課税になります。
元本確保型以外の特性(死亡保障など)に注意

iDeCoの保険商品は元本確保型が多いですが、一般的な生命保険のように手厚い死亡保障がメインではありません。
死亡保障は「おまけ」程度
・メインは年金形成:iDeCoの保険商品は、あくまで老後資金を積み立てるための年金商品であり、死亡保障は付随的なものです。
・保障額は積立金が基本: 万が一の場合の死亡保障額は、多くの場合、それまでに積み立てた掛金の合計額や運用益を加えた金額が上限となります。一般的な生命保険のように、高額な死亡保障を低保険料で得られるわけではありません。
・必要保障額とのずれ: 本格的な死亡保障が必要な場合は、別途、定期保険や終身保険といった「死亡保険」への加入を検討する必要があります。
定額年金型と変額年金型の違い
iDeCoの保険商品には、主に2種類あります。
・定額年金型(元本確保型): 運用期間中の予定利率が固定されており、将来受け取れる年金額が確定しています。元本保証があり、最もリスクが低いタイプです。
・変額年金型(元本変動型): 運用実績によって将来受け取れる年金額や解約返戻金が変動します。元本保証はありませんが、高いリターンを狙える可能性があります。iDeCoでは投資信託と同様に「元本変動型」に分類されます。
iDeCoで「元本確保型」として提供される保険は、ほとんどが定額年金型です。
コストや柔軟性の観点から見た注意点

iDeCoの保険商品は元本確保型という安心感がある一方で、コストや柔軟性の面でいくつかの注意点があります。
コスト(手数料)が割高な傾向
・運用コスト: 一般的に、定期預金型のiDeCo商品と比較して、iDeCoの保険商品は運用コスト(保険関係費用や口座管理費用など)が割高に設定されている傾向があります。
・リターンへの影響: コストが高いと、せっかくの運用益非課税のメリットが削られてしまいます。特にiDeCoのような長期運用では、わずかなコストの差でも最終的な資産額に大きな差が生じます。
運用中の柔軟性が低い場合も
・スイッチングの制限: 投資信託型iDeCoであれば自由に運用商品をスイッチングできますが、保険商品の場合、運用中に他の保険商品や投資信託へのスイッチングができない、あるいは制限がある場合があります。
・金利・予定利率の見直し: 定期預金型のiDeCoは満期ごとに金利が見直されますが、保険商品の予定利率は固定されることが多く、市場金利が上昇しても恩恵を受けられない場合があります。
インフレリスクへの対応が難しい
元本確保型であるため、インフレが進み物価が上昇しても、資産は増えません。これにより、将来受け取れる年金額の実質的な価値が目減りする「インフレリスク」があります。
まとめ:iDeCoの保険商品は「リスク回避」と「コスト」のバランスで選ぶ
iDeCoの保険商品は、元本割れリスクを避けたい方にとって魅力的な選択肢です。しかし、その「税制適格」の条件や、一般的な保険商品とは異なる特性、そして特にコストや柔軟性に関する注意点をしっかり理解しておくことが重要です。
・メリット: 元本確保による安心感、非課税運用益。
・デメリット: 運用コストが割高な傾向、リターンが低い、インフレリスク、運用中の柔軟性の制限。
・活用法: 老後が近くリスクを抑えたい場合、ポートフォリオの一部として安定性を高めたい場合などに検討できます。ただし、高額な死亡保障が必要な場合は、別途生命保険の加入を検討しましょう。
iDeCoで保険商品を選ぶ際は、ご自身の「リスク許容度」と「コスト」のバランスを慎重に検討し、他の運用商品(低コストのインデックスファンドなど)との比較も十分に行うことが、iDeCo運用を成功させるための鍵となるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています