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iDeCoの掛金変更・停止・再開の手続き:ライフプランに合わせた見直し方(2024年12月・2025年改正反映版)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、長期的な資産形成を目的とした制度ですが、人生には予期せぬ出来事やライフステージの変化がつきものです。収入の変動、出産、住宅購入など、家計の状況は常に変わりますよね。そんな時、「iDeCoの掛金はどうすればいいんだろう?」と悩む方もいるかもしれません。
ご安心ください。iDeCoの掛金は、一度設定したら終わりではありません。あなたのライフプランに合わせて、掛金の金額を変更したり、一時的に停止したり、あるいは再開したりすることが可能です。
この記事では、iDeCoの掛金に関する柔軟な見直し方について、具体的な手続きと注意点を徹底解説します。掛金変更のタイミングと回数制限、停止や再開の手続き、そしてライフステージに応じた掛金の見直し方まで、iDeCoをあなたの人生に寄り添う制度として活用するためのヒントをご紹介します。
iDeCo掛金変更のタイミングと回数制限

iDeCoの掛金は、あなたの家計状況に合わせて見直すことができます。
掛金変更のルール
掛金変更の手続きは、年に1回まで行うことができます。例えば、1月に掛金を変更したら、次に変更できるのは翌年の1月以降となります。この「年に1回」という制限は、掛金の引き落としサイクルや事務処理の都合によるものです。変更手続きは、運用管理機関(iDeCo口座を開設している金融機関)に所定の書類を提出することで行います。
掛金変更の考え方
掛金は、月額5,000円から、ご自身の加入者区分の上限額まで、1,000円単位で設定できます。
【増額するケース】
・収入が増えて、iDeCoに回せる資金に余裕ができた時
・税制メリットを最大限に活用したいと考えた時
・老後資金の目標額に向けて、積立ペースを上げたい時
【減額するケース】
・出産や育児、住宅購入など、一時的に大きな支出が増えた時
・収入が減少したり、失業したりして、家計が厳しくなった時
・教育費など、他の優先すべき支出が増えた時
掛金停止や再開の手続き方法と注意点

掛金の変更だけでなく、一時的に掛金の拠出を停止したり、再度拠出を再開したりすることも可能です。
掛金停止の手続きと注意点
・手続き方法: 運用管理機関に「加入者掛金変更届」などの書類を提出し、掛金を「0円」に設定することで停止できます。
・停止中の費用: 掛金を停止しても、iDeCoの口座は維持されます。そのため、国民年金基金連合会手数料や事務委託先金融機関手数料(合計月額171円、2025年7月現在)は引き続き発生します。また、運用中の投資信託には信託報酬もかかります。
・停止のメリット: 家計が一時的に苦しい時期を乗り切るために有効な手段です。無理に掛金を拠出し続けることで、生活が破綻するリスクを避けることができます。
・停止のデメリット:
税制メリットの停止: 掛金を拠出しない期間は、所得控除のメリットを受けられなくなります。
資産形成のペースダウン: 拠出が止まるため、老後資金の積み立てペースが落ちます。
・手数料負担: 掛金を拠出しなくても、口座維持手数料は発生し続けるため、運用益が得られない期間は、手数料が純粋なコストとして重くのしかかります。
掛金再開の手続きと注意点

・手続き方法: 再び運用管理機関に「加入者掛金変更届」などの書類を提出し、掛金を設定することで再開できます。
・再開のメリット: 家計に余裕ができた際に、再び税制メリットを享受しながら老後資金の形成を再開できます。
・注意点: 再開時にも審査が必要となる場合があります。また、掛金停止期間が長くなると、その分老後資金の準備が遅れることになります。
ライフステージに応じた掛金の見直し方(2025年改正予定も含む)

iDeCoの掛金は、人生の様々なライフステージに合わせて柔軟に見直すことで、より効果的に活用できます。
独身・若年期(20代〜30代前半)
・見直し方: 収入が比較的安定している時期であれば、積極的に掛金を拠出することを検討しましょう。若いうちから始めることで、複利効果を最大限に活かせます。
・ポイント: 最初から上限額を目指すのではなく、月5,000円から始めて、徐々に増額していくのがおすすめです。
結婚・出産期(20代後半〜40代前半)
・見直し方: 出産や育児、住宅購入など、大きな支出が増える時期です。家計の状況に応じて、一時的に掛金を減額したり、停止したりすることも検討しましょう。
・ポイント: 無理のない範囲で継続することが重要ですし、完全に停止するのではなく、最低額の5,000円に減額するなど、細く長く続ける工夫も有効です。
子育て・教育費負担期(30代後半〜50代前半)
・見直し方: 子どもの教育費がピークを迎える時期です。家計の状況によっては、iDeCoの掛金を抑え、教育資金の確保を優先する必要があるかもしれません。
・ポイント: 教育費の目処が立ち、家計に余裕ができた段階で、再度掛金の増額を検討しましょう。
収入安定・老後が見えてくる時期(50代後半〜60代)
・見直し方: 子どもの独立などで教育費の負担が減り、収入が安定している(またはピークを迎える)時期であれば、積極的に掛金を増額し、ラストスパートをかけるチャンスです。
・ポイント: 60歳まで拠出できる期間が残り少ないため、税制メリットを最大限に活用し、老後資金を積み増すことを検討しましょう。
60歳以降も働く場合(2025年改正予定)
・見直し方: 現行制度では65歳未満まで掛金を拠出できますが、2025年度税制改正で70歳未満まで加入年齢が拡大される予定です。60歳以降も働く場合は、引き続き掛金を拠出し、資産形成を継続することを検討できます。
・ポイント: 働く期間が延びることで、所得控除の恩恵も長く受けられますし、運用期間も延びるため、資産寿命の延長にもつながります。
最新情報:iDeCo掛金上限額の変更(2024年12月・2025年改正予定)

iDeCoの掛金上限額は、働き方や企業年金の有無によって異なりますが、制度改正によって見直しが進んでいます。
2024年12月の変更点
- 第2号被保険者(企業年金あり)の掛金上限の引き上げ: 公務員や、勤務先で確定給付企業年金(DB)などに加入している会社員の場合、これまでのiDeCo掛金上限は月額1.2万円でしたが、2024年12月からは月額2万円に引き上げられました。これにより、より多くの掛金をiDeCoに拠出できるようになりました。
2025年度税制改正での変更予定(※現時点では予定)
・会社員(企業年金なし)の掛金上限の大幅引き上げ: 勤務先に企業年金がない会社員の場合、現在の月額2.3万円から月額6.2万円に大幅に引き上げられる予定です。これが実現すれば、より多くの所得控除メリットを享受し、効率的に老後資金を準備できるようになります。
・自営業者・フリーランス(第1号被保険者)の掛金上限の引き上げ: 国民年金基金と合算で、現在の月額6.8万円から月額7.5万円に引き上げられる予定です。
これらの変更は、今後iDeCoを始める方や、既に加入している方にとって非常に重要な情報です。正確な施行時期や詳細については、今後の政府の発表や金融機関からの情報にご注意ください。
まとめ:iDeCoは「続けること」が最も大切
iDeCoの掛金は、年に1回まで変更が可能であり、一時的な停止や再開もできます。これは、iDeCoがあなたの人生の様々な変化に対応できるよう設計されている証拠です。
・無理のない掛金設定: まずは継続できる金額から始めましょう。
・ライフプランに合わせた見直し: 収入や支出の変化に応じて、柔軟に掛金を見直しましょう。
・手数料の確認: 掛金を停止しても手数料は発生するため、その点を理解しておきましょう。
iDeCoで最も大切なのは、「続けること」です。家計の状況に合わせて無理なく掛金を調整し、最新の制度変更も考慮しながら、長期的な視点で老後資金の形成を着実に進めていきましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています