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iDeCoの投資信託選びで失敗しない!「低コスト」の重要性をFPが解説

「インデックスファンドがいいって聞くけど、結局何を見て選べばいいの?」
iDeCo(個人型確定拠出年金)で老後資金を準備する際、運用商品の中心となるのが投資信託です。しかし、多くの投資信託の中から、将来の資産を効率的に増やす「良いファンド」を見つけるのは簡単ではありません。特に、iDeCoのような長期運用では、「コスト」が運用成果に与える影響は計り知れないほど大きくなります。
この記事では、iDeCoの投資信託選びで失敗しないために、「低コスト」の重要性をFPが徹底解説します。信託報酬が長期リターンに与える影響の具体例、見落としがちな隠れたコストの確認方法、そしてコストを重視したファンド選びの具体的なポイントまで、あなたのiDeCo運用を成功に導くためのヒントを提供します。
なぜiDeCoの投資信託選びで「低コスト」が重要なのか?

iDeCoは原則60歳まで引き出せない長期運用が前提です。この長期運用において、運用コストが低いことには2つの大きな意味があります。
リターンを確実に削り取る「コスト」
どんなに運用成績が良くても、コストがかかればその分、あなたの手元に残る利益は減ってしまいます。手数料は確実に毎日、あるいは毎年、あなたの資産から差し引かれる「目に見えない税金」のようなものです。
長期運用で「複利効果」を最大限に活かす
・複利効果: 利益が利益を生むことで資産が雪だるま式に増える効果。
・コストの影響: コストが低ければ、より多くの利益が再投資に回り、複利効果が加速します。逆にコストが高ければ、複利の恩恵が削がれてしまい、本来得られたはずの将来の資産が大きく目減りしてしまいます。
具体例で見る!信託報酬が長期リターンに与える影響
【毎月2万円を30年間積立、年率5%で運用できた場合】
・信託報酬0.1%のファンド: 最終資産額 約1,644万円
・信託報酬1.0%のファンド: 最終資産額 約1,489万円
・信託報酬2.0%のファンド: 最終資産額 約1,353万円
※ 将来価値(Future Value)を計算する「積立投資の複利計算式」を用いて筆者作成
信託報酬がたった数%違うだけで、30年後には約150万円〜300万円以上もの差が生まれてしまう可能性があります。これは、老後資金の額に直結するため、低コストであることはiDeCoの投資信託選びにおいて最も重要なのです。
※これらのシミュレーションは年率5%の運用を想定したものであり、将来の運用成果を保証するものではありません。
見落としがちな「隠れたコスト」の確認

信託報酬以外にも、投資信託には見落としがちな隠れたコストが存在します。これらも確認し、全体としてコストの低いファンドを選びましょう。
1.売買手数料(購入時手数料・換金時手数料)
・確認ポイント: 投資信託を購入する際にかかる手数料です。iDeCoで提供される投資信託のほとんどは購入時手数料が無料(ノーロード)ですが、念のため確認しましょう。
・注意点: 換金時(売却時)に「信託財産留保額」という手数料がかかるファンドもあります。これは売却代金から差し引かれます。
2.信託財産留保額
・確認ポイント: 投資信託を換金(売却)する際にかかる手数料です。投資家間の公平性を保つために徴収される費用で、通常は売却代金から差し引かれます。
・注意点: スイッチング(運用商品の変更)を行う際にも発生します。これも低い、または無料のファンドを選びましょう。
3.隠れた費用(その他費用)
・確認ポイント: 投資信託の「交付目論見書(こうふもくろみしょ)」や「運用報告書」に記載されている監査費用、有価証券売買手数料など、信託報酬以外にかかる費用です。
・注意点: これらは毎年変動し、信託報酬とは別に発生する実質的なコストです。過去の運用報告書で実質コストがどの程度だったか確認すると良いでしょう。
コスト重視のファンド選びのポイント(初心者向け)

iDeCoの運用商品は、長期運用に適した低コストのファンドを選ぶことが基本です。具体的には、以下のポイントを重視して選びましょう。
インデックスファンドを選ぶ
・なぜおすすめ?: 特定の指数(S&P500、全世界株式など)に連動した運用成果を目指すファンドです。銘柄選定や売買の頻度が少ないため、信託報酬が非常に低い傾向にあります。
・アクティブファンドとの比較: アクティブファンドは市場平均を超えるリターンを目指しますが、信託報酬が高く、長期的にインデックスファンドのパフォーマンスを上回ることが難しいというデータも多くあります。初心者には、まずは低コストのインデックスファンドから始めるのが堅実です。
主要なインデックスファンドの中から選ぶ
iDeCoで提供されているインデックスファンドの中でも、特に人気の高い主要なファンドの中から選びましょう。
・全世界株式インデックスファンド:
特徴: 日本を含む先進国から新興国まで、世界中の株式に幅広く分散投資します。これ1本で地域分散が完結するため、迷ったらこのタイプがおすすめです。信託報酬も非常に低いです。
・S&P500インデックスファンド:
特徴: 米国株式市場の主要500社に投資します。過去の高い成長実績に魅力を感じる方におすすめですが、米国に集中するリスクは理解しておきましょう。信託報酬も非常に低いです。
運営管理機関(金融機関)の「ラインナップ」を確認する
iDeCo口座を開設する金融機関によって、選べる運用商品のラインナップが異なります。
確認ポイント: 口座管理手数料が無料であることは大前提として、その上で上記のような低コストの主要なインデックスファンドが豊富に揃っているかを確認しましょう。金融機関によっては、特定のファンドシリーズに特化している場合もあります。
元本確保型とのバランスも考慮(リスク許容度に応じて)
元本割れリスクを極力避けたい場合や、退職が近い場合は、定期預金などの元本確保型商品をポートフォリオの一部に組み入れることも検討できます。ただし、その分、期待リターンは低くなります。
確認ポイント: 元本確保型も利用したい場合、その金利や手数料(保険型の場合)も比較しましょう。
まとめ:iDeCoの運用成果は「低コスト」が未来を決める
iDeCoの投資信託選びで失敗しないための最も重要なポイントは、徹底的にコストを意識することです。
・信託報酬: 長期リターンに最も大きな影響を与えるため、業界最低水準のファンドを選びましょう。
・隠れたコスト: 信託財産留保額など、見落としがちな費用も確認しましょう。
・ファンドの種類: 初心者には、低コストで分散効果の高い「インデックスファンド」が最適です。
これらのポイントを抑え、コスト重視で運用商品を選ぶことで、iDeCoの強力な税制メリットと複利効果を最大限に享受し、あなたの老後資金を効率的に増やしていけるはずです。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています