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iDeCoで海外ETF投資は可能?間接的に世界に投資する方法

「世界全体に分散投資したいけど、iDeCoでそれが実現できるの?」
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を効率的に準備できる強力な制度です。世界経済の成長を取り込むために、海外の株式市場、特に米国市場への投資に興味を持つ方も多いでしょう。その手段として、海外ETF(上場投資信託)が挙げられますが、iDeCoで直接海外ETFに投資できるのか、疑問に思うかもしれません。
この記事では、iDeCoでは直接海外ETFを購入できないことを明確にした上で、間接的に海外ETFに投資する方法を解説します。さらに、その際に重要となる為替リスクの考え方と対策まで、あなたのiDeCoで世界へ投資するための賢い戦略を提案します。
iDeCoでは海外ETFに直接投資できない!

結論から言うと、iDeCoの運用商品として、海外の個別株や海外ETF(上場投資信託)を直接購入することはできません。
iDeCoで選べる運用商品は、各運営管理機関(金融機関)がラインナップしている投資信託(国内籍)や定期預金、保険といった商品に限られています。これは、iDeCoが国の制度であり、特定の基準を満たした国内籍の金融商品しか提供できないという制約があるためです。
そのため、「米国の特定のETFに直接投資したい」「自分の好きな米国企業の株を買いたい」といったニーズには、iDeCoは直接応えることができません。
間接的に世界へ投資!海外ETFを組み込んだ投資信託の活用

iDeCoで直接海外ETFを購入することはできませんが、海外ETFを投資対象として組み入れている国内籍の投資信託を選ぶことで、間接的に世界中の株式やETFに投資することが可能です。これが、iDeCoで世界へ投資する現実的な方法です。
「海外ETF」を投資対象とする国内籍投資信託とは?
仕組み: 証券会社が提供する一部の国内籍投資信託は、運用会社が投資家から集めた資金で、海外市場に上場しているETF(例:バンガードETFなど)を買い付け、それを基に運用を行います。
メリット:
・手軽に国際分散投資: 投資家は円建てで投資信託を購入するだけで、その裏側で世界中の株式や債券、海外ETFなどへの分散投資が実現します。
・自動リバランス: ファンド(投資信託)が自動でポートフォリオを管理してくれるため、個別の海外ETFを自分で選んだり、リバランスしたりする手間が省けます。
・低コスト: 特にインデックスファンドの場合、信託報酬が非常に低いものが多く、長期運用に適しています。
NISAでも人気のファンドがiDeCoにも
NISAのつみたて投資枠で人気の高い、以下のような投資信託は、iDeCoの運用商品としても多くの金融機関で提供されており、これらが間接的に世界中の株式や特定の海外ETFに投資しています。
全世界株式インデックスファンド:
・特徴: 日本を含む先進国から新興国まで、世界中の数千もの企業に幅広く分散投資します。これ1本で究極の国際分散投資が可能です。
・間接的な投資対象: MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスなどの指数に連動するため、その指数に含まれる世界中の株式(多くは米国や欧州の株式)に投資します。一部のファンドは、海外ETFを通じてこれらの指数への連動を目指します。
S&P500インデックスファンド:
・特徴: 米国株式市場の主要500社に幅広く分散投資します。高い成長性が魅力で、米国経済の成長を取り込みたい場合に選ばれます。
・間接的な投資対象: S&P500指数に連動するため、その指数に含まれる米国の主要企業に投資します。これも、一部のファンドは米国に上場するS&P500ETFなどを活用して運用されます。
これらのファンドを選ぶことで、あなたはiDeCo口座内で「間接的に」海外ETFや世界中の株式に投資し、非課税メリットを享受しながら資産形成を進めることができます。
為替リスクの考え方と対策

iDeCoで海外の資産に投資する投資信託を選ぶ場合、たとえ円建てで商品を購入しても、その投資信託が海外の資産に投資している限り、為替リスクは発生します。
為替リスクとは
日本円を米ドルなどの外貨に換えて海外の資産を購入するため、為替レートの変動が投資成果に影響を与えるリスクのことです。
円高リスク:
海外資産を売却する際や配当金を受け取る際に、購入時よりも円高が進んでいると、外貨建ての価値が変わらなくても、円に換算した際の評価額や受取額が目減りします。
円安メリット:
逆に、購入時よりも円安が進めば、円に換算した際の評価額が上がり、為替差益を得られます。
為替リスクへの対策
為替リスクは海外投資に付随するものですが、その影響を管理し、リスクを抑える方法はいくつかあります。
1.時間の分散(積立投資):
iDeCoは毎月一定額を拠出し続ける積立投資が基本です。これにより、円高の時も円安の時も定期的に購入することになるため、平均的な購入為替レートが平準化され、為替リスクを分散する効果が期待できます。
2.国際分散投資:
特定の国の通貨(例:米ドル)に集中するのではなく、世界中の複数の通貨圏の資産に分散投資することで、為替リスク全体を分散させる効果があります。全世界株式インデックスファンドは、この点で優れています。
3.為替ヘッジ型の商品を検討する(限定的):
一部の投資信託には「為替ヘッジあり」というタイプの商品があります。これは、為替変動による影響を抑えることを目的としたもので、円安・円高の影響を受けにくくする効果があります。
注意点: 為替ヘッジにはコスト(ヘッジコスト)がかかるため、その分リターンが目減りする可能性があります。iDeCoのラインナップでは、為替ヘッジ型ファンドの選択肢は限られることが多いです。
4.長期的な視点を持つ:
短期的な為替の変動に一喜一憂せず、長期的な視点を持つことが重要です。為替レートは短期的に大きく動くことがありますが、長期的に見れば円高と円安を繰り返す傾向があるため、その影響が平準化される可能性があります。
まとめ:iDeCoで世界へ投資するなら「投資信託」が王道
iDeCoで海外ETFや世界中の株式に直接投資することはできませんが、海外ETFを投資対象とする国内籍の投資信託を選ぶことで、間接的に世界へ投資することが可能です。これが、iDeCoの非課税メリットを活かしつつ、国際分散投資を行うための王道戦略となります。
・選ぶべきファンド: 全世界株式インデックスファンドやS&P500インデックスファンドなど、低コストで広範囲に分散されたものがおすすめです。
・為替リスクへの理解と対策: 時間の分散(積立投資)や国際分散投資によって、為替リスクの影響を抑えましょう。
・長期的な視点: iDeCoは長期運用が前提です。一時的な市場や為替の変動に惑わされず、着実に積立を続けることが、老後資金形成を成功させる鍵となります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています