仮想通貨
米国で仮想通貨規制が歴史的進展:下院が3つの重要法案を可決
2025年7月17日(米国時間)、米下院は暗号資産(仮想通貨)業界の包括的な規制枠組みを構築する3つの重要法案を可決しました。これは、長年規制整備を求めてきたデジタル資産業界にとって、大きな転換点となります。
可決された主要3法案
今回可決されたのは以下の3法案です。
・ステーブルコイン国家革新指導確立法案(GENIUS法案)
・デジタル資産市場明確化法案(CLARITY法案)
・反CBDC監視国家法案
これらの法案は、今後の米国における仮想通貨規制の基盤となる重要な立法措置として注目されています。
GENIUS法案:ステーブルコイン規制の明確化
「GENIUS法」と呼ばれるステーブルコイン規制法案は、超党派の支持を得て賛成308対反対122で可決されました。この法案は既に上院を通過しており、トランプ大統領の署名を経て成立する見込みです。
主な内容:
・裏付け資産の義務化: ステーブルコインの発行体は、トークンの裏付けとしてドルや財務省短期証券(Tビル)などの流動性資産を保有することが義務付けられます。
・準備金の月次開示: 発行体は、準備金の構成を毎月開示する必要があります。
・年次監査の義務化: 時価総額500億ドル超の発行者には年次監査が義務付けられ、外国発行に関するガイドラインも確立されます。
・連邦または州による監督: 連邦ないし州によるステーブルコインの監督が義務づけられます。
この法案の成立により、ステーブルコインはより安全で信頼性の高いデジタル資産となり、決済の高速化や低コスト化、そして日常的な金融取引への活用が広がる可能性が指摘されています。シティグループは、2030年までにステーブルコイン市場が3兆7000億ドル規模に拡大する可能性があると予測しています。
CLARITY法案:仮想通貨の法的定義を明確化
「CLARITY法」と呼ばれる暗号資産の規制枠組みに関する法案は、賛成294対反対134で可決されました。この法案は今後、上院で審議される予定です。
主な内容:
・証券・商品の定義: 特定の暗号資産が証券であるか、もしくは商品であるかを定義し、業界に対する米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の管轄権を明確にします。
・曖昧さの軽減: 仮想通貨が証券として扱われるか商品として扱われるかを区別することで、執行における曖昧さの軽減を目的としています。
反CBDC監視国家法案:中央銀行デジタル通貨の発行を阻止
反CBDC監視国家法案は、賛成219対反対210で可決されました。この法案も今後、上院で審議される予定です。
主な内容:
- CBDCの個人向け発行禁止: 連邦準備制度による中央銀行デジタル通貨(CBDC)の個人向け発行を阻止する内容です。
業界とホワイトハウスからの評価
ホワイトハウスの仮想通貨特命官であるデービッド・サックス氏は、今回の下院での可決を「仮想通貨業界の大勝利」と評価し、明確な規制ルールによる消費者保護と技術革新促進の両立を歓迎しています。Bitwiseの最高投資責任者も「米国の法整備で仮想通貨は主流化する」と分析しており、今回の法案可決は、約3年前に起きた仮想通貨交換業者FTXの経営破綻によって失われた業界の信頼を回復し、政治的な認知を得る象徴的な転機と位置付けられています。
大手銀行への影響と今後の展望
今回の法案成立は、米大手銀行にも影響を与え始めています。JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループの各CEOは、ステーブルコインが決済における銀行業界の支配的地位を脅かす可能性を指摘しており、対応を準備していることを示唆しました。銀行預金の減少や、銀行やカード会社、テック企業が独自のステーブルコイン発行に動く可能性も考えられます。
ブルッキングズ研究所のエスワール・プラサド上級研究員は、今回の法案について「ステーブルコイン業界が長らく求めてきた正当性をもたらすものであり、規制内容が比較的穏やかという点も評価できる」と述べています。
今回の米下院による歴史的な法案可決は、米国がデジタル資産の未来を形作る上で重要な一歩を踏み出したことを示しています。今後、上院での審議や大統領署名を経て、これらの法案がどのように具体的な規制として施行され、仮想通貨業界にどのような影響を与えるのかが注目されます。